地震研究所では、使用されなくなった古い地震計の一部を2号館の「地震計博物館」で展示しており、一般公開の際などに見学していただいています。
そこに展示している中にフィルム記録型の「萩原式電磁地震計(HES)・記録装置」があります。開発後、南極での観測にも使われたこの地震計は、波形がフィルムに記録されるようになっています。
それを見たドイツの現代アーティスト:Marianna Christofides とBernd Braunlichが興味を持ち、「この地震計を動かすことは出来ないだろうか?」という相談がありました。技術部総合観測室の宮川幸治技術専門職員に問いあわせたところ、取扱説明書もなく、足りない部品もある状態だと分かりました。ですが、この地震計の開発に携わっていたというOBの唐鎌郁夫氏などに連絡を取ったところ、取扱説明書を入手することができ、また足りない部品も代替品を用意することができたので、試行錯誤しつつも修復を試みたところ、完全ではないけれども、動かすことが出来るようになりました。
フィルム記録型なので、地震を記録するにはフィルムが必要です。Mariannaが持参した白黒フィルムを2本セットして一晩観測し、翌日フィルムを取り外してラボにて現像しました。そのフィルムをライトボックスで見てみたところ、2本ともに地面の脈動と思われる波形が録れていました。
翌日帰国だったため、そのままベルリンに持ち帰りスキャンするためにスタジオに持ち込んだとの連絡がありました。
今後の展開が待たれます。
【萩原式電磁地震計(HES)および記録装置について】
1956年に開発され、1959年からは南極での地震観測にも使用されていた。写真右にある2台が、地面の揺れを電気信号に変換する萩原式電磁地震計(HES)、写真左にある装置が、電気信号をフィルムに記録する記録装置(HES-RB)、写真真中にある波形が、フィルムに記録された1980年6月29日の地震記録となる。
フィルム記録型は、高倍率で記録できる特徴がある。