ページ立ち上げ:2025年6月27日
霧島新燃岳では6月22日の水蒸気噴火を皮切りに、活動が活発化しています。
23日には火山噴火予知研究センターの前野准教授および川口助教が、現地調査を行いましたので、その結果の概要を下記に更新してまいります。
2025年6月27日
東京大学地震研究所
・降灰状況
霧島火山群新燃岳で6月22日午後に噴火が発生し、東〜北東に位置する宮崎県高原町や小林市など広い地域で降灰が確認された。東京大学地震研究所では、この噴火による噴出物調査を6月23日に実施した(図1)。ただし、6月23日早朝からの雨により、降り積もった火山灰の多くは水により再移動し、調査時に元の堆積状態を保っていたと考えられる堆積物はわずかであった。
調査地域の中でも、夷守台や矢岳および大幡前山に続く道路、林道沿いでは比較的厚い堆積物が認められた。皇子原公園から大幡沢登山口の間の林道においては西進するにつれて火山灰量は増加し、大幡沢登山口付近(新燃岳火口縁から3.3 km)では層厚数mm、786 g/m2(乾燥重量)程度の降灰量であった(図2)。一方、夷守台から北方向へはしだいに減少していく特徴を示した(図3)。高原IC付近では、聞き取り調査により、22日夕方に比較的多量の降灰があり、吸い込まないように注意していたとの証言も得た。降灰の分布軸は新燃岳から東北東方向であり、気象庁等がまとめた降灰分布図と整合的である。
調査中、しばしば激しい雨を伴う天候であり、新燃岳火口からの噴煙の有無や様子を確認することはできなかったが、23日午後3時過ぎからの1時間には、夷守台で火山灰混じりの降雨や火山ガス臭を確認した(図4)。そのため、23日のこの時間の直前頃にも火山灰噴出があったと考えられる。




・火山灰の鏡下での特徴
皇子原公園から大幡沢登山口の間の林道において葉上から採取した火山灰(6/23 12:40, No. 2025062302B、図4、火口縁から3.8 km)と、夷守台での調査中に雨とともに直接採取した火山灰(6/23 15:30頃, No. 2025062304、図5、火口縁から4.9 km)の構成物を実体顕微鏡で観察した。なお、湿った火山灰は一旦乾燥し、乾燥重量を計測後、水洗し、篩がけにより125-250 μmの粒子を抽出して検鏡を行った。
どちらの試料の構成物の特徴も、他の大学・研究機関がすでに報告している特徴とほぼ同様であり、破断面に光沢のない灰色石質岩片、破断面に光沢を有する岩片、赤色酸化岩片、白色珪化変質物(黄鉄鉱が付着する場合がある)、斑晶鉱物由来の結晶片が含まれていた(図6)。ただし、23日に採取したNo. 2025062304の試料の方は白色岩片量がやや少ない、全体的に光沢を有する破断面を持つ岩片が多い、また、濃褐色のガラス質粒子がごく微量含まれるなどの特徴を有していた。

火山灰構成物の特徴は、既存の溶岩ドームや熱水系を破壊することにより生産された火山灰であることを示唆しており、これまでの新燃岳における水蒸気噴火による火山灰の特徴ともよく似ている。6月22日および23日の噴火は水蒸気噴火と判断できる一方、23日の火山灰構成物は22日に比べて若干の違いがあるようにも見える。
火山灰構成物の変化は、噴火発生場(火道の拡大やマグマの寄与の程度など)の変化を反映している可能性があり、今後の活動においても、構成物の種類や量比に着目した分析を継続していく必要がある。
火山噴火予知研究センター 前野 深准教授
川口 允孝助教