所長挨拶
所長 佐竹健治
所長 佐竹 健治

 地震研究所は,1923 年の関東大震災を契機として 1925 年に設立されました.設立当時からの使命は, 地震・火山現象を科学的に解明し, それらによって起因する災害を軽減することです.この使命を果たすために, 約 80 名の教員を中心に,国内外における地球物理学的観測に基づく研究のほか, 地震・火山現象の根源としての地球内部構造やダイナミクス, 史料編纂所と連携しての歴史地震に関する文理融合研究,学術情報ネットワークを利用した大規模地震データのリアルタイム流通・解析, ビッグデータと高速計算とを融合した地震ハザード予測など, 幅広い研究を行っています.
 2011 年東日本大震災から 10 年が過ぎました. 東北地方太平洋沖地震によって日本列島の応力場は大きく変化し, 余効変動は今でも継続しています. 地震研究所は,地震・火山科学の共同利用・共同研究拠点として, 全国の研究者らとともに, 超巨大地震に伴う日本列島の変動を観測し, 研究しております. また, 国の建議に基づいた「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(第 2 次)」を, 地震・火山噴火予知研究協議会に属する 26 の国公私立大学の機関や, 10 近くの研究開発法人, 国・地方自治体の機関とともに実施しております.
 2020 年は新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のため, 地震研究所の野外や海外での調査・観測, 国際交流, 広報アウトリーチ活動も大きな影響を受けました.多くの教員・研究員・大学院生は在宅で講義やセミナーに参加したほか, 事務職員や技術職員も一定の在宅勤務を行いました. 国際的には, 海外の 26 の研究機関と学術協定を結ぶほか, 通常は年間 100 名を超える外国人研究者・学生が地震研に滞在しますが, 2020 年は激減しました. 一方で, サマースクールやインターンプログラムをオンラインで実施し,通常より多くの方に参加して頂きました.
 地震研究所での研究成果を一般の方に知って頂くため,夏の一般公開や年間を通じてのラボツアーで年間 2000 名程度の方が訪問されておりましたが, こちらも 2020 年は完全にオンライン化し,講演や学生実験をライブで行ったり, 野外調査の様子を録画で発信したりしています.マスコミや自治体の防災担当者などとの懇談会もオンラインで行うことによって, 全国から多くの方に参加して頂くことができ,研究成果の新しい発信方式となりました.
 地震研究所は 2025 年には創立百周年を迎えます.今後とも,ポストコロナでの世界レベルの研究の実施, その成果を新しい形で社会へ還元すべく, 地震研究所の構成員が一丸となって努力してまいります. 皆様のご支援・ご協力をお願い申し上げます.

沿革

地震研究所(以下、本所)は、大正14年(1925年)11月13日に創立された。それまで30余年にわたり日本の地震学発展に貢献した文部省震災予防調査会の研究業務は、このとき本所に引きつがれた。昭和3年(1928年)6月には、東京帝国大学(当時)の構内に、本庁舎が完成し、本所は、同大学附属の研究所として、その基礎を定めた。
第二次世界大戦の苦難の時期を経て昭和24 年(1949年)5月31日に、国立学校設置法が制定され、本所は東京大学附属の研究所となった。戦後の復興と共に、国内外の研究の進展にもめざましいものがあった。本所でも研究規模の増大に伴い、昭和45年(1970年)3月、農学部構内に新しい庁舎(現在の2号館)が建設された。

新庁舎完成以後、本所は地震学・火山学の基礎研究を行うとともに、わが国における地震予知・火山噴火予知計画を推進してきた。昭和54年(1979年)度には地震予知観測センターが地震予知観測情報センターに改組され、全国の大学の地震予知計画に係わる観測データの集積、整理、提供等による研究も行われるようになった。

全国の大学が合同で実施する海陸での観測、全国地震観測網のデータ流通やそれらに基づく各種プロジェクト研究などの、大規模研究計画を担う体制が必要となり、平成6年(1994年)6月、本所は、東京大学附置の全国共同利用研究所となり、4部門、5センター、2附置観測施設の組織となった。さらに、客員教授制が採用され、全国から研究協力者を集めた各種の共同研究が行われるようになった。

平成9年(1997年)4月には、国内外の研究者と共同して地球規模の観測研究する目的で、新たに海半球観測研究センターが発足した。

平成18年(2006年)には、免震構造を有する新庁舎(1号館)が竣工するとともに、旧本館(2号館)の耐震改修も行われ、首都圏周辺で大地震が発生しても継続的な観測・研究ができる体制が整った。平成21年(2009年)、地震予知研究と火山噴火予知研究の一層の連携のために、地震予知研究推進センターと火山噴火予知研究推進センターを改組して、地震火山噴火予知研究推進センターと、火山噴予知研究センターを発足させた。

平成22年(2010年)に、本所は全国共同利用研究所から、全国共同利用・共同研究拠点となり、高エネルギー素粒子物理学研究センターを含む4部門、7センターに改組し、多様で多面的な観測固体地球科学を、機動的で柔軟な組織によって推進する体制となった。

平成24年(2012年)、東日本大震災の教訓を踏まえ、理学と工学の連携強化を目的として、先端的数値解析を軸に据えた巨大地震津波災害予測研究センターが発足した。

平成26年(2014年)から開始した「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画」の推進のため、防災研究の拠点である京都大学防災研究所との間で拠点間連携が開始された。