3次元速度構造を用いたCMT解析による2024年能登半島地震(Mw7.5)の余震の特徴

山谷 里奈, 久保 久彦,汐見 勝彦, 木村 武志
Aftershock characteristics of the 2024 Noto Peninsula earthquake (Mw7.5) through centroid moment tensor analysis using a 3-D seismic velocity structure model
Earth, Planets and Space77, 67, doi: 10.1186/s40623-025-02196-8, 2025     
                                                                                                   

 2024年1月1日、石川県能登半島地域を震源とするモーメントマグニチュード7.5の地震が発生しました。この地震は逆断層型で、主圧縮軸は北西―南東方向でした。本震発生後は、陸域および海域の広範囲にわたり地震活動が活発化しています。本研究では、震源域周辺の詳細な応力状態や断層の形状を把握するため、3次元の地下構造モデルを用いて余震のセントロイド・モーメントテンソル解析*を実施しました。モーメントマグニチュード3.2-6.1の221個の余震に対して、セントロイド・モーメントテンソル解を推定できました。特に海域では、P波・S波到着時刻による震源決定と比べて震源深さの推定精度が向上し、海底地震計の臨時観測網による結果とよく一致しました。本震発生直後の、特に余震域直上の海域等での臨時観測が始まっていない時期においても、頻発する余震の震源深さを高精度に推定できました。本解析の結果、以下の4つの特徴的な余震活動が確認されました。(1)本震と同様に北西―南東方向の主圧縮軸を持つ逆断層型、(2)浅部に分布する横ずれ断層型、(3)能登半島の西側に分布する東北東―西南西方向の主圧縮軸を持つ逆断層型、(4)本震の断層面の傾斜が変化する領域付近に推定された正断層型および横ずれ断層型。また、本震発生前の2007年から2023年に発生した地震についても同様の解析を行った結果、本震の影響によって震源域周辺の応力状態が変化し、上記の(3)、(4)の地震活動が誘発された可能性が示唆されました。本研究によって、一連の地震活動と複雑な応力状態および断層構造の関係を理解するにあたって重要な知見を得ることができました。

図:セントロイド・モーメントテンソル解から得られた主圧縮軸の向き。赤色は正断層(Normal fault)、緑色は横ずれ断層(Strike-slip fault)、青色は逆断層(Reverse fault)を示します。(a)はセントロイドが深さ8 km以下の地震、(b)は8 kmより深い地震に対応します。本文中で示した4つの特徴的な余震活動のうち、(3)能登半島の西側に分布する東北東―西南西方向の主圧縮軸を持つ逆断層型は、図aの西側領域(Region Sa:136.7ºE・37.3ºN付近)、(4)本震の断層面の傾斜が変化する領域付近に推定された正断層型および横ずれ断層型は、図aの東側領域(Region Sc:137.5ºE・37.6ºN)にそれぞれ分布しています。
*セントロイド・モーメントテンソル解析:地震波形のうち周期が長い成分を使用することで、地震の発生位置、発生時刻、地震の規模、断層面や滑りの方向などを推定する手法。

【研究速報】霧島新燃岳の最新噴火活動:2025年6/22・23に噴出した火山灰《7/14更新》

ページ立ち上げ:2025年6月27日
最終更新日:2025年7月14日

霧島新燃岳では2025年6月22日の水蒸気噴火を皮切りに、活動が活発化しています。
※下記に情報を随時更新してまいります。


*報道関係の皆さまへ:図・動画等を使用される際は、「東京大学地震研究所」と、クレジットを表示した上でご使用ください。また、問い合わせフォームより使用した旨ご連絡ください。


霧島新燃岳2025年6−7月噴火の火山灰の全岩化学組成とその推移

2025年7月14日
東京大学地震研究所



 火山灰の全岩化学組成は,2011年や2018年など,これまで新燃岳の噴火活動の推移把握に活用されてきた経緯がある1), 2).そこで,新燃岳で2025年6月22日から7月8日の間に発生した噴火の火山灰について,全岩化学組成分析を実施し,過去の噴火推移との比較を行った.

 火山灰試料はバルクを未洗のまま処理して溶融ガラスビードを作成し,蛍光X線分析により測定した.今回測定した火山灰試料の化学組成はSiO2含有量が59 – 63 wt. %(無水100%換算)で,2011年および2018年噴火噴出物に基づく新燃岳マグマの組成トレンドからは逸脱していた.ただしその化学組成については時系列変化がみられ,2008年水蒸気爆発から2011年1月マグマ噴火への移行期1) や,2017年10月から2018年3月のマグマ噴火に至るまでの火山灰組成変化の傾向2) と類似している.

 6月22日から7月2日の火山灰はSiO2含有量が60 – 63 wt. %,K2O含有量が1.5 – 1.9 wt. %で,2017年10月噴火の変質物に富む火山灰と類似していた.7月2–4日火山灰はやや変化に富み,噴煙が約5,000 mまで上昇した7月3日15時頃の火山灰はややSiO2含有量が低かった.その後の7月5–6日の火山灰は再度変質物を多く含む火山灰の組成に戻ったが,7月8日早朝の火山灰ではSiO2含有量の低下とMgO含有量の増加がみられ,2018年3月の溶岩流出直前と類似した化学組成であった.このような徐々にマグマ組成に近づく火山灰組成の変化は,新鮮な溶岩あるいはマグマの割合が増加したことを反映していると考えられる.7月2日以降の火山灰が新鮮な発泡ガラスを含み,その割合が増減していること3),また7月8日火山灰に酸化岩片や新鮮な破断面をもつ溶岩片および発泡した白色粒子(軽石)が認められること4) 等の観察結果と調和的である.


参考文献:

  1. Suzuki, Y., Nagai, M., Maeno, F. Yasuda, A., Hokanishi, N., Shimano, T., Ichihara, M., Kaneko, T., Nakada, S. (2013) Precursory activity and evolution of the 2011 eruption of Shinmoe-dake in Kirishima volcano—insights from ash samples. Earth, Planets and Space, 65, 11. https://link.springer.com/article/10.5047/eps.2013.02.004
  2. Maeno, F., Shohata, S., Suzuki, Y., Hokanishi, N., Yasuda, A., Ikenaga, Y., Kaneko, T., Nakada, S. (2023) Eruption style transition during the 2017–2018 eruptive activity at the Shinmoedake volcano, Kirishima, Japan: surface phenomena and eruptive products. Earth, Planets and Space, 75, 76. https://doi.org/10.1186/s40623-023-01834-3
  3. 産業総合研究所,新燃岳2025年7月2日〜4日の火山灰構成粒子の特徴.火山調査研究推進本部提出資料.2025年7月7日.https://www.gsj.jp/hazards/volcano/kazanhonbu/index.html
  4. 東京大学地震研究所,霧島新燃岳2025年7月8日噴火の火山灰について.火山調査研究推進本部提出資料.2025年7月11日.
図1 霧島火山新燃岳噴出物の全岩化学組成.2025年噴火の火山灰(A)を■,それ以前の噴火の火山灰(A)を▲,溶岩(L)や噴石(B)および軽石(P)を●で示した.2017−2018年噴火では変質物に富んだ火山灰組成(黄色領域)からマグマ組成トレンド(青色領域)に向けて,火山灰組成の時系列変化が認められた(灰色矢印)2)

火山噴火予知研究センター 前野 深 准教授
川口 允孝 助教
技術開発室 外西 奈津美 技術専門職員


霧島新燃岳の最新噴火活動:霧島新燃岳2025年7月8日噴火の火山灰について

2025年7月11日
東京大学地震研究所

・降灰状況
 霧島火山群新燃岳で7月8日朝5時台および6時台に発生した爆発的噴火では、西側の新湯方向に火山灰が飛散、堆積した。東京大学地震研究所では、これらの噴火直後の7月8日8時〜11時に現地調査を実施した(図1)。とくに新湯温泉から烏帽子岳にかけての道路沿いでは 数mm程度の火山灰の堆積が認められ、降灰量は、新湯温泉駐車場で1440 g/m2、新湯展望台で399 g/m2などであった(図1)。降灰軸は西南西方向で、南限は不明瞭だが、北限は大浪池登山口付近と推定された。
 7日午後に烏帽子林道(地震研観測点付近)に設置した火山灰採取用のトラップにより、この噴火の火山灰を採取することができた。火山灰は濃灰色で、500 μm以上の粗粒粒子も含む火山灰で、6月22−23日など、この噴火以前の火山灰と比べて粗い特徴を有する。

調査地点の地図
図1 7月8日の調査地点と降灰量(単位はg/m2
降灰の様子(トラップ内)
図2 トラップ内の火山灰。
降灰の様子(支柱座)
図3 支柱座石上の火山灰。
図4 葉上に堆積した火山灰。

火山灰の鏡下での特徴
 地震研の烏帽子観測点付近でトラップにより採取した火山灰(7月8日9時採取、試料No. 2025070802)の構成物を実体顕微鏡で観察した。なお、火山灰は乾燥重量を計測後、超音波洗浄を行い、篩がけにより250-500 μmの粒子を抽出して検鏡を行った。
 火山灰の構成物種は、これまでの噴火(6月22−23日や7月3−4日、図5)とほぼ同様で、破断面に光沢のない灰色石質岩片、破断面に光沢を有する岩片、赤色酸化岩片、白色珪化変面に光沢を有する岩片、赤色酸化岩片、白色珪化変質岩片、斑晶鉱物由来の結晶片が大部分を占めるが(図6)、破断面に光沢を有する岩片の割合は7月4日までの火山灰に比べて多く、白色珪化変質岩片量は明らかに減少した。また、黒〜濃褐色のガラス質粒子に加えて、淡褐色から白色で透明感がある発泡粒子(軽石)が微量(1%以下)含まれていた(図7)。

6/22-23火山灰粒子。7/3-4火山灰粒子。
図5 上段: 6月22日―23日にかけての火山灰粒子。下段: 7月3日―4日にかけての火山灰粒子。
7/8噴火の火山灰粒子
図6 7月8日噴火の火山灰粒子。新鮮な破断面を有する火山灰粒子が多数を占める一方で、赤色・白色に変質した岩片も微量認められる。
発砲粒子拡大写真
図7 (左)黒〜濃褐色のガラス質粒子。これまでの噴火でも微量認められていた。(右)7月8日噴火で認められた、淡褐色から白色で透明感のある軽石粒子。

 石質岩片、赤色酸化岩片や白色珪化変質岩片などの火山灰構成物の特徴は、既存の溶岩ドームや熱水系を破壊することにより生産された火山灰であることを示唆する一方、ガラス質光沢を有する火山灰は新鮮であり、マグマ物質に由来する可能性がある。また、濃褐色のガラス質粒子はこれまでの火山灰試料にも認められていたが、白色の発泡粒子は今回の一連の噴火で初めて確認された粒子である。このような粒子の混入は、マグマの浅部への上昇および噴火への寄与が大きくなったことを示唆する。

 火山灰構成物の変化は、噴火発生場(火道の拡大やマグマの寄与の程度など)の変化を反映すると考えられ、今後の活動においても、構成物の種類や量比に着目した分析を継続していく必要がある。

火山噴火予知研究センター 前野 深准教授
川口 允孝助教


2025年6月27日
東京大学地震研究所

・降灰状況
霧島火山群新燃岳で6月22日午後に噴火が発生し、東〜北東に位置する宮崎県高原町や小林市など広い地域で降灰が確認された。東京大学地震研究所では、この噴火による噴出物調査を6月23日に実施した(図1)。ただし、6月23日早朝からの雨により、降り積もった火山灰の多くは水により再移動し、調査時に元の堆積状態を保っていたと考えられる堆積物はわずかであった。
調査地域の中でも、夷守台や矢岳および大幡前山に続く道路、林道沿いでは比較的厚い堆積物が認められた。皇子原公園から大幡沢登山口の間の林道においては西進するにつれて火山灰量は増加し、大幡沢登山口付近(新燃岳火口縁から3.3 km)では層厚数mm、786 g/m2(乾燥重量)程度の降灰量であった(図2)。一方、夷守台から北方向へはしだいに減少していく特徴を示した(図3)。高原IC付近では、聞き取り調査により、22日夕方に比較的多量の降灰があり、吸い込まないように注意していたとの証言も得た。降灰の分布軸は新燃岳から東北東方向であり、気象庁等がまとめた降灰分布図と整合的である。 
 調査中、しばしば激しい雨を伴う天候であり、新燃岳火口からの噴煙の有無や様子を確認することはできなかったが、23日午後3時過ぎからの1時間には、夷守台で火山灰混じりの降雨や火山ガス臭を確認した(図4)。そのため、23日のこの時間の直前頃にも火山灰噴出があったと考えられる。

6月23日の調査地点を現した地形図。左下に新燃岳の火口があり、そこから右・右斜め上に延びる線の間を範囲で調査地点の印が複数書かれている。
図1 6月23日の調査地点
大幡沢登山口付近で撮られた写真。看板に火山灰が積もっている様子。
図2 大幡沢登山口付近
ベンチの上に火山灰が積もっている様子。
図3 夷守台のベンチ上
木の葉に火山灰が積もっている様子。
図4 大幡沢登山口手前
ビニール袋に濁った水が入っていて、先の方に火山灰が沈殿している。
図5 6月23日15時半頃、夷守台での調査中に雨とともに直接採取した火山灰。

・火山灰の鏡下での特徴
 皇子原公園から大幡沢登山口の間の林道において葉上から採取した火山灰(6/23 12:40, No. 2025062302B、図4、火口縁から3.8 km)と、夷守台での調査中に雨とともに直接採取した火山灰(6/23 15:30頃, No. 2025062304、図5、火口縁から4.9 km)の構成物を実体顕微鏡で観察した。なお、湿った火山灰は一旦乾燥し、乾燥重量を計測後、水洗し、篩がけにより125-250 μmの粒子を抽出して検鏡を行った。

 どちらの試料の構成物の特徴も、他の大学・研究機関がすでに報告している特徴とほぼ同様であり、破断面に光沢のない灰色石質岩片、破断面に光沢を有する岩片、赤色酸化岩片、白色珪化変質物(黄鉄鉱が付着する場合がある)、斑晶鉱物由来の結晶片が含まれていた(図6)。ただし、23日に採取したNo. 2025062304の試料の方は白色岩片量がやや少ない、全体的に光沢を有する破断面を持つ岩片が多い、また、濃褐色のガラス質粒子がごく微量含まれるなどの特徴を有していた。

火山灰を顕微鏡で見た際の画像6枚。
上三枚とした三枚は同じ場所で採取された火山灰。
図6 上段は、皇子原-矢岳登山口間の林道沿いで葉上(図4)から採取した火山灰粒子の特徴。下段は、6月23日15時台に夷守台で雨とともに採取した火山灰粒子(図5)の特徴。右下段の写真中央には、濃褐色のガラス粒子が認められる。

 火山灰構成物の特徴は、既存の溶岩ドームや熱水系を破壊することにより生産された火山灰であることを示唆しており、これまでの新燃岳における水蒸気噴火による火山灰の特徴ともよく似ている。6月22日および23日の噴火は水蒸気噴火と判断できる一方、23日の火山灰構成物は22日に比べて若干の違いがあるようにも見える。

 火山灰構成物の変化は、噴火発生場(火道の拡大やマグマの寄与の程度など)の変化を反映している可能性があり、今後の活動においても、構成物の種類や量比に着目した分析を継続していく必要がある。

火山噴火予知研究センター 前野 深准教授
川口 允孝助教

岩森 光 教授・原口 悟 特任研究員らの論文がGeochemical Journal 5-Year Most Cited Paper Award 受賞

岩森 光 教授、原口 悟 特任研究員らの論文が、日本地球化学Geochemical Journal 5-Year Most Cited Paper Awardを受賞しました。


受賞者氏名:Hikaru Iwamori (ERI), Hitomi Nakamura (AIST), Qing Chang (JAMSTEC), Noritoshi Morikawa (AIST), Satoru Haraguchi (ERI)
受賞名:Geochemical Journal 5-Year Most Cited Paper Award, Geochemical Society of Japan,
受賞年月日:2025年6月13日
授与機関:日本地球化学会

対象論文:Multivariate statistical analyses of rare earth element compositions of spring waters from the Arima and Kii areas, Southwest Japan.
Geochemical Journal, 54, 165-182. doi:10.2343/geochemj.2.0583.

 第1048回地震研究所談話会開催のお知らせ

下記のとおり地震研究所談話会を開催いたします。

対面での開催を再開しておりますので、地震研究所へお越しいただければ幸いです。

なお、お知らせするZoom URLの二次配布はご遠慮ください。また、著作権の問題が

ありますので、配信される映像・音声の録画、録音を固く禁じます。

                 記

         日  時: 令和7年6月20日(金) 午後1時30分~

         場  所: 地震研究所1号館2階 セミナー室

               Zoom Webinarにて同時配信 

1. 13:30-13:45

演題:過去400年の京都周辺の地震活動の時空間変化を歴史資料から明らかにする【所長裁量経費成果報告】

著者:○加納靖之・大邑潤三、岩橋清美(國學院大学)、玉澤春史(生産技術研究所)、北井礼三郎(立命館大学)

2. 13:45-14:00

演題:島弧離島火山モニタリングプロジェクトの進展: フィジー編【所長裁量経費成果報告】

著者:○前野 深、西澤達治(富士山研)、金子隆之、Saula MULE・Jorge MALODALI(MRD, Fiji)、池永有弥・石塚 治 (AIST)、後藤和久(東大理学系)、安田裕紀・外西奈津美・市原美恵

3. 14:00-14:15

演題:Geofluid mapping reveals the connection between magmas, fluids, and earthquakes 【災害軽減成果報告】

著者:○Hikaru IWAMORI, Yasuo OGAWA(Tokyo Institute of Technology), Tomomi OKADA(Tohoku U.), Tohru WATANABE(U. Toyama), Hitomi NAKAMURA(National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST), Tatsu KUWATANI(Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology (JAMSTEC)), Kenji NAGATA (National Institute for Materials Science (NIMS)), Atsushi SUZUKI (JX Metals Resources Exploration & Development Co., Ltd), Masahiro ICHIKI(Tohoku U.)

○発表者

※時間は質問時間を含みます。

※既に継続参加をお申し出いただいている方は、当日zoom URLを自動送信いたします。

※談話会のお知らせが不要な方は下記までご連絡ください。

〒113-0032 東京都文京区弥生1-1-1 

東京大学地震研究所 共同利用担当

E-mail:k-kyodoriyo(at)eri.u-tokyo.ac.jp

※次回の談話会は令和7年7月25日(金) 午後1時30分~です。

岩森 光 教授 日本地質学会小藤文次郎賞 受賞

岩森 光 教授 が、日本地質学会小藤文次郎賞を受賞しました。

受賞者氏名:岩森 光
受賞名:日本地質学会小藤文次郎賞[重要な発見または独創的 な発想を含む論文を発表した会員に授与]
授与機関:日本地質学会
受賞日:2025年6月7日
対象論文:Iwamori, H., Ueki, K., Hoshide, T., Sakuma, H., Ichiki, M.,
Watanabe, T., Nakamura, M., Nakamura, H., Nishizawa, T., Nakao, A., Ogawa, Y., Kuwatani, T.,
Nagata, K., Okada, T., Takahashi, E. (2021) Simultaneous analysis of seismic velocity and
electrical conductivity in the crust and the uppermost mantle: a forward model and inversion
test based on grid search. Journal of Geophysical Research: Solid Earth, 126, e2021JB022307
(2021年に東京大学プレスリリース発表を行った論文)

受賞理由:
地球内部の水溶液やマグマは,地震,火山活動,地殻変動や地球全体の進化に重要な役割を担うと考え
られているにもかかわらず,従来の解析方法(例えば,地震波速度あるいは電気伝導度のみの解析)では,これらの地球内部に存在する液相がどこにどれだけ存在するか,定性的にイメージングすることが難しかった.特に,地震や火山活動の主な場である深さ 60 km 程度までの領域は,岩石の種類が極めて多様であり,正確な理解のためには岩石と液相を同時に推定することが必要であった.岩森 光会員を中心とした研究グループは,地震波速度構造と電気伝導度構造を統合的に解析し,地殻と最上部マントルを構成する岩石に加えて,液相の種類,液相の量・アスペクト比・連結度を同時に推定し,地球内部の水溶液やマグマを定量的にとらえる手法を初めて開発した.その成果をまとめた本論文では,さまざまな組成の岩石,マグマ,水溶液についての実験的データと理論に基づき,それらの混合物性(地震波速度と電気伝導度)を予測する数値モデルを発表した.さらに,この数値モデルを用いて,観測される地震波速度と電気伝導度から,岩石と液相の種類と量比などが求められることを示した.このような推定手法は国際的にも例がなく,今後本手法を実際の観測データに応用することにより,地殻とマントル最上部の構造イメージングが飛躍的に進むことが予想される.加えて,本研究による解析の高解像度化は,地震・火山活動の機構や地球進化の理解に資することが期待され,我が国に与えるインパクトは非常に大きい.
以上のことから,極めて独創的な発想を有している研究を主導した,本論文の筆頭著者である岩森 光
会員は日本地質学会小藤文次郎賞に相応しいものと評価される.

Friday Seminar (27 June 2025) Miao Zhang (Dalhousie University, Canada)

Title: Machine Learning for Earthquake Monitoring: From Land to Ocean

 

Abstract:

In recent years, machine learning-based arrival time picking has demonstrated remarkable accuracy and efficiency in monitoring earthquakes both on land and at sea. It has been widely applied to the rapid construction of high-precision earthquake catalogs, which contribute to a better understanding of detailed earthquake source processes, as well as their associated seismogenic mechanisms. In this talk, I will present our recently developed seamless, machine learning-based earthquake detection and location package — LOC-FLOW — as well as the OBS phase picker — OBSTransformer — and their applications. Examples include earthquake swarms, hydraulic fracturing-induced earthquakes, and marine earthquakes offshore the Cascadia region.

【共同プレスリリース】光ファイバケーブルを活用した海域・地下構造のイメージング手法を開発 ─ 海域における地震波速度構造の詳細把握の実現 ─

【発表のポイント】

  • 光ファイバセンシング技術の一つである分布型音響センシング(Distributed Acoustic Sensing、以下DAS)を用いた地震波探査により、海底下の地下構造の詳細把握が実現しました。
  • DASの高密度観測を生かした新手法により、岩手県三陸沖における地震波速度構造の空間的な不均質構造が明らかにできました。
  • 本手法は、海底下の構造モニタリングや資源探査、地球科学的な研究の理解への応用が期待されています。

【概要】
近年、光ファイバをセンサーとして振動などを捉えるDASが地震観測などに用いられるようになってきました。この技術は、光ファイバ上を数m〜数十mという超高密度の観測点間隔で約100 kmほどの距離まで観測することが可能です。また、海底に設置されている海底光ケーブルでDAS観測を実施することで、海底における地震動の稠密観測を実現することが可能です。海底での地震動の稠密観測は,地震活動のモニタリングや地下構造のイメージングなど,多目的に応用されるようになってきています。

東北大学大学院理学研究科附属地震・噴火予知研究観測センターの福島駿特任研究員らは、東京大学地震研究所篠原雅尚教授、京都大学防災研究所伊藤喜宏教授と共同で、海底に敷設された光ファイバケーブルを活用した新しい地下構造のイメージング手法を確立しました。広範囲(50-100 km)かつ稠密(約5 m間隔)なデータが取得できることが特長で、得られるDASデータを解析することで、これまでの技術と比べて格段に高い空間分解能で海底下構造を推定できると期待されます。

本研究では、三陸沖に敷設された海底ケーブルを活用したDAS観測により得られた制御震源(注2)を用いた地下構造探査のデータを解析しました。その結果、DASで得られるデータが、海域における地下の構造を詳細に解明する上で有効であることを示すことでき、三陸沖の海域の浅部堆積層内に強い空間的な不均質構造がみられることを明らかにできました。このように地下の地質構造を詳細に把握することができる手法が開発されたことは、地震波の伝播の仕方や地形の成り立ちの理解をはじめとする地球科学的研究のみならず、二酸化炭素回収・貯留(Carbon Capture and Storage :CCS)(注3)などの工学的分野での研究開発にも大きく貢献すると期待されます。


これにつきまして、東北大学よりプレスリリースされました。
詳細: https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2025/06/press20250609-03-das.html(東北大学HP)

金曜日セミナー(2025年6月13日)宇野 正起(理学系研究科 地球惑星科学専攻)

Title: Physical conditions of magmatic-hydrothermal fracturing in deep crust: Records of subvolcanic deep low frequency earthquakes?

 

Abstract:

Recent geophysical observations have revealed that subvolcanic deep low frequency earthquakes (DLFEs) in the lower crust are coupled with volcanic earthquakes in the upper crust, suggesting magmatic/hydrothermal fluid flow triggering the earthquakes. However, the actual physico-chemical processes of DLFEs is largely unknown. Here I show the occurrences of magmatic dikes and hydrothermal mineral veins in a exceptionally-well exposed high temperature metamorphic terrane, Sør Rondane Mountains, East Antarctica, whose P-T conditions corresponds to the source regions of DLFEs. The fluid-rock reaction zones are subjected to reactive-transport, thermodynamic and structural analyses, to reveal spatio-temporal scales fluid-assisted crustal fracturing and discuss their relation to the observed seismic activities.

The depths (20–30 km), temperature (~700°C), duration of high-pressure fluids (hours to months), the extensional-shear mode of fracturing, and magnitudes (-1.5 to 2) observed in these dikes/veins are largely comparable to the depth, characteristic duration, focal mechanisms and magnitudes of the subvolcanic DLFEs. The geological observations strongly support non-double couple mechanisms for crustal fracturing in these regions, and suggest a large seismic anisotropy during the activation of these fractures.

長期海底地震計による2011年東北沖地震震源域北部における余震活動の時空間変化

篠原雅尚 1 ・日野亮太 2 ・望月公廣 1 ・佐藤利典 3 ・中東和夫 4 ・山田知朗 1 ・村井芳夫 5 ・八木原寛 6 ・伊藤喜宏7 ・東龍介 2 ・金沢敏彦 1, 8

1 東京大学地震研究所・ 2 東北大学理学研究科・ 3 千葉大学理学研究院・ 4 東京海洋大学海洋資源エネルギー学科・ 5 北海道大学理学部・ 6 鹿児島大学理工学域理学系・ 7 京都大学防災研究所・ 8 公益財団法人地震予知総合研究振興会

Spatiotemporal variation of aftershock activity in northern source region of the 2011
Tohoku‑oki earthquake by long‑term ocean bottom seismometers
Prog Earth Planet Sci 12, 37 (2025). https://doi.org/10.1186/s40645-025-00713-7
Received: 9 January 2025 Accepted: 1 May 2025, Published online 28 May 2025 as Open Access

 
 2011年に太平洋プレートと陸側プレートの境界において2011年東北沖地震が発生し、本震後に多数の余震が発生しました。このような大地震発生様式を理解するためには余震活動の時空間変化を把握することが重要です。2011年3月の本震発生後、2011年9月までは数多くの海底地震計を用いた緊急海底余震観測が行われ、本震発生直後の余震活動が高精度で把握されています。緊急海底余震観測終了後に、東北沖地震の震源域直上において長期観測型海底地震計を用いた地震モニタリング観測を開始しました。2011年9月に39台の長期観測型海底地震計を震源域全域に設置し、10ヶ月間の海底地震観測を実施しました。2013年9月には30台の長期観測型海底地震計を北部震源域に設置し、約1年後に回収しました。これらの長期海底地震観測から東北沖地震震源域北部における余震活動の時空間変化を明らかにできます。また、東北沖地震発生以前にも同領域で長期海底地震観測を実施していたために東北沖地震発生前の地震活動と余震活動についても比較可能です。震源決定はそれぞれの海底地震計へのP波およびS波の到着時刻を用いて行い、初動の極性から発震機構解も求めました。その結果、東北沖地震発生時に大きな滑りがあるプレート境界領域における余震活動は本震発生直後から2014年までは低調であることがわかりました。このことから本震時に大きく滑った領域では本震発生後3年経ても地震を起こす応力が回復していないことが推定されます。
 東北沖地震発生以前は地震活動があまり見られなかった岩手県沖の領域で本震直後から活発な余震活動が観測されました。この領域は本震時に大きく滑った領域の周辺部となります。岩手県沖のこの領域では海洋プレートおよび陸側プレート内で発生する余震の多くは正断層型また横ずれ断層型の発震機構解と推定されましたが、逆断層型発震機構を持つ余震も観測されました。さらに、プレート境界付近で発生する逆断層型の発震機構を持つ地震の割合は2011年から2012年の観測に比べ2023年から2014年までの観測が増えていました。逆断層型の発震機構を持つ地震の発生割合の増加は本震時に大きく滑った領域の周辺から応力状態変化が始まると解釈されます。


この研究による震源要素(震源時、位置)及び発震機構解の情報は下記のURLから利用可能です。
https://doi.org/10.5281/zenodo.14564691

図1
左:海底地震観測による余震震源分布と本震時にすべり量(黄線)との比較。色つきの丸が余震の位置を示しています。赤線はプレート境界の深度コンターです。右:発震機構解の分布を示す三角図。それぞれの円の大きさがマグニチュードを、色は地震の深度を示しています。赤、緑、青の領域が純粋な逆断層型、横ずれ型、正断層型の発震機構解に対応しています。
図説明
左:海底地震観測による余震震源分布と本震時にすべり量(黄線)との比較。色つきの丸が余震の位置を示しています。赤線はプレート境界の深度コンターです。右:発震機構解の分布を示す三角図。それぞれの円の大きさがマグニチュードを、色は地震の深度を示しています。赤、緑、青の領域が純粋な逆断層型、横ずれ型、正断層型の発震機構解に対応しています。

Friday Seminar (6 June 2025) Hélène Le Mével (Carnegie Institute for Science)

Title: Imaging the magmatic systems under submarine volcanoes with satellite altimetry

 

Abstract:

The magmatic systems under most submarine volcanoes are poorly known and have not been imaged by geophysical techniques, due to their inaccessibility and the time and cost needed for research cruises. In this talk, I investigate the detectability of magma reservoirs in the vertical gravity gradient (VGG) anomalies calculated from satellite altimetry data. We will first look at a suite of synthetic seamount models to identify the expected gravity signature of magmatic systems. One of the largest explosive eruptions instrumentally recorded occurred at Hunga volcano (Tonga) on 15 January 2022. I will show how we can use marine gravity data derived from satellite altimetry combined with multibeam bathymetry to model the architecture and dynamics of the magmatic system before and after the January 2022 Hunga eruption. Finally, we will see how global satellite altimetry data with increasing resolution offer a promising reconnaissance tool to probe the subsurface for magma at other submarine volcanoes, including those in the Izu-Bonin-Mariana arc.