伊東優治助教らによる論文がAGU Editor’s Highlight 受賞

伊東優治助教らによる論文が、AGU Editor’s Highlight を受賞。


受賞者:伊東優治、Socquet Anne(グルノーブルアルプ大学)、Radiguet Mathilde(グルノーブルアルプ大学)
受賞名:Editor’s Highlight アメリカ地球物理学連合
受賞日:2025年3月18日
受賞研究:Slip-Tremor Interaction at the Very Beginning of Episodic Tremor and Slip in Cascadia

 第1046回地震研究所談話会開催のお知らせ

下記のとおり地震研究所談話会を開催いたします。

対面での開催を再開しておりますので、地震研究所へお越しいただければ幸いです。

なお、お知らせするZoom URLの二次配布はご遠慮ください。また、著作権の問題が

ありますので、配信される映像・音声の録画、録音を固く禁じます。

                 記

         日  時: 令和7年4月18日(金) 午後1時30分~

         場  所: 地震研究所1号館2階 セミナー室

               Zoom Webinarにて同時配信 

1. 13:30-13:45

演題:火山噴火の周期性の理解を目指した間欠泉の噴出間隔多様性の解明プロジェクト室 活動報告 【所長裁量経費成果報告】

著者:○柘植鮎太・市原美恵

2. 13:45-14:00

演題:2024年能登半島地震(Mw 7.5)に伴う地震波速度変化

著者:Paris NICOLAS(グルノーブルアルプ大学)、〇伊東優治、BRENGUIER Florent(グルノーブルアルプ大学)、WANG Qing-Yu(グルノーブルアルプ大学、現所属ストラスブール大学)、盛 一笑(中国科学技術大学)、岡田知己(東北大学)、内田直希(東北大学、現所属東大地震研)、HIGUERET Quentin (グルノーブルアルプ大学)、髙木涼太(東北大学)、酒井慎一、平原 聡・木村洲徳(東北大学)

要旨:2024年能登半島地震の本震に伴う地震波速度構造変化をHi-netと大学のキャンペーン観測点のデータを使って推定した(EPSに論文が受理済)

3. 14:00-14:15

演題:Magnitude Estimation via An Attention-based Machine Learning Model

著者:○Ji ZHANG・Aitaro KATO、Huiyu ZHU(Institute of Engineering Mechanics, China Earthquake Administration) and Wei WANG(Key Laboratory of Earth and Planetary Physics, Institute of Geology and Geophysics, Chinese Academy of Sciences)

○発表者

※時間は質問時間を含みます。

※既に継続参加をお申し出いただいている方は、当日zoom URLを自動送信いたします。

※談話会のお知らせが不要な方は下記までご連絡ください。

〒113-0032 東京都文京区弥生1-1-1 

東京大学地震研究所 共同利用担当

E-mail:k-kyodoriyo(at)eri.u-tokyo.ac.jp

※次回の談話会は令和7年5月23日(金) 午後1時30分~です。

開催報告:懇談の場「海からプレートテクトニクスの根幹に迫る」

地震研究所と参加者とのコミュニケーション促進の場である「懇談の場」が2025年4月10日にハイブリッドで開催されました。
『海からプレートテクトニクスの根幹に迫る』について、一瀬 建日 准教授・馬場 聖至 准教授によるお話でした。

【共同プレスリリース】千葉工業大学・東京大学・高知大学の研究チーム 、地球史における “酸素に乏しい海” の多様性を新たなデータ科学的アプローチにより解明―海のレアメタル資源探査への新展開―

[ 概要 ]
 矢野萌生(千葉工業大学)、安川和孝、中村謙太郎、黒田潤一郎、岩森光(東京大学)、池原実(高知大学)、加藤泰浩(東京大学/千葉工業大学)の研究チームは、現世の海洋とは全く異なる「酸素に乏しい海」(貧酸素/無酸素海洋) で生成したさまざまなレアメタル元素を含む堆積岩 (黒色頁岩) の化学組成データを統計的に解析し、貧酸素/無酸素海洋においてレアメタル濃集を引き起こした要素を分離・抽出することに成功しました。さらに、これらを新たな指標として、酸素に乏しい海洋がどのような環境であったかの推定に利用できることを示しました。
 
 本研究の成果は、酸化的な海洋で生成するレアアース泥やマンガンノジュールとは全くタイプの異なる、酸素に乏しい海洋で生成したレアメタル資源の探査にも活用できると期待されます。これまで貧酸素/無酸素海洋で形成した堆積物の化学組成については、対象とする個々の時代や元素に注目した研究がなされていましたが、それらが互いにどう異なるのかや、堆積時の海洋環境と堆積物への元素濃集および海底レアメタル資源の生成との関係は明らかになっていませんでした。今回研究チームは、ペルム紀/トリアス紀境界、白亜紀海洋無酸素事変、現世という 3 つの異なる時代に形成した堆積物・堆積岩に対して多変量解析手法の 1 つである独立成分分析 (注 1; 図 1) を適用し、酸素に乏しい環境下での異なる元素濃集パターンを示す 4 つの成分を抽出することに成功しました。そして、抽出された成分の特徴の詳細な解析から、時代や海域ごとの黒色頁岩の化学組成の普遍性と特異性を初めて明らかにしました。この成果は、海洋の酸素が乏しい時代に形成された黒色頁岩における元素濃集のメカニズムの解明、さらにそれを生じさせた地球環境変動の解明に貢献する、重要な知見といえます。
 この研究成果は、2025 年 4 月 7 日にアメリカ地球物理学連合 (American Geophysical Union)
の学会誌「Paleoceanography and Paleoclimatology」で発表されました。

キーワード:貧酸素海洋、独立成分分析、化学組成データ、ペルム紀/トリアス紀境界、白亜
紀海洋無酸素事変、黒色頁岩、レアメタル資源


これにつきまして千葉工業大学よりプレスリリースがされました。
詳細につきましてはこちらをご覧ください:https://chibatech.jp/news/20250408.html(千葉工業大学HP)

緊急海底地震観測による令和6年能登半島地震震源域東部の余震活動

篠原雅尚 1 ・日野亮太 2 ・高橋努 3 ・尾鼻浩一郎 3 ・小平秀一 3 ・東龍介 2 ・山田知朗 1 ・悪原岳 1 ・山下裕亮 4 ・蔵下英司 1 ・村井芳夫 5 ・一瀬建日 1 ・中東和夫 6 ・馬場久紀 7 ・太田雄策 2 ・伊藤喜宏 4 ・八木原寛 8 ・仲谷幸浩 8 ・藤江剛 3 ・佐藤利典 9 ・塩原肇 1 ・望月公廣 1 ・酒井慎一 1 ・白鳳丸KH-24-JE01およびKH-24-JE02C乗船研究者


1 東京大学地震研究所・ 2 東北大学理学研究科・ 3 海洋研究開発機構・ 4 京都大学防災研究所・ 5 北海道大学理学部・ 6 東京海洋大学海洋資源エネルギー学科・ 7 東海大学海洋学部・ 8 鹿児島大学理工学研究科理学研究院・ 9 千葉大学理学研究院・ 10 東京大学情報学環


Precise aftershock activity in the marine source region of the 2024 Noto-Hanto earthquake by rapid response observation using ocean bottom seismometers
Earth Planets Space 77, 43 (2025). https://doi.org/10.1186/s40623-025-02171-3
Received 29 October 2024, Accepted 14 March 2025, Published 03 April 2025 as Open Access

 
 石川県能登半島を震央とする気象庁マグニチュード7.6の令和6年能登半島地震が2024年1月1日に発生しました。本震震源域は半島東方の海域に拡がりました。そこで、海域下での余震活動の詳細を明らかにするために、自由落下自己浮上式海底地震計(OBS)の密な観測網による海域緊急余震観測を実施しました。2024年1月に34台のOBSを設置し、約1ヶ月後に26台の短周期OBSを回収しました。気象庁が震源決定した情報を基に、絶対走時を用いる震源決定と、double-difference法を組み合わせて、震源を再決定しました。震源決定に用いる速度構造は、過去にこの領域で行われた地震波構造探査の結果を元にしました。さらに、初動極性を用いて発震機構解を決定しました。震源は主に深さ0.2kmから17 kmに分布しており、余震は主に上部地殻内で発生していました。余震は傾いた面を形成し、その面は本震発生以前に構築された地震発生断層モデルとよく一致していました。これは、本震の破壊がほぼ共役な断層に伝播した可能性を示すと共に、事前に地震発生断層モデルを構築しておくことが有用であることがわかりました。多くの逆断層型の余震が発生していましたが、横ずれ型の余震も数多く発生していました。横ずれ型を含めて多くの余震がモデル断層と直交する方向に最大圧縮軸を持っていました。これは余震活動が北西-南東方向の応力の影響を受けていることを示しています。
 この研究による震源要素(震源時、位置)及び発震機構解の情報は下記のURLから利用可能です。
https://doi.org/10.5281/zenodo.13968365

図説明
左:double-difference法による余震震源分布図です。海底地形も併せて表示しています。中央下:
発震機構解の分布を示す三角図。赤、緑、青の領域が純粋な逆断層型、横ずれ型、正断層型の発震
機構解に対応しています。右:観測域を15の領域に分け、それぞれの領域の深さ断面図を作成し
ました。領域幅は5kmです。断面図中の灰色の太線は、それぞれの領域における断層モデルの上面
の位置を示しています。

金曜日セミナー(2025年4月18日 【10-11時】)杉山 将(新領域・理化学研究所)

Title:
Reliable Machine Learning from Imperfect Training Data

 

Abstract:
In many machine learning applications, it is often challenging to collect a
large amount of high-quality labeled data. However, learning from unlabeled
data is not necessarily reliable. To overcome this problem, the use of
imperfect data is promising. In this talk, I will review our recent
research on reliable machine learning from imperfect supervision, including
weakly supervised learning, noisy label learning, and transfer learning.
Finally, I will discuss how machine learning research should evolve in the
era of large foundation models.

2025年3月30日新燃岳の活動

ページ立ち上げ:2025年4月4日

九州南部にある霧島山の新燃岳では、2025年3月28日頃から火山性地震が増加しています。観測された情報をこちらで更新してまいります。


夜間 GCOM-C 画像で捉えた新燃岳2025年3月30日イベントに伴う表面温度変化

2025年4月4日 

新燃岳では、2025年3月28日頃から火山性地震が増加し、30日には山体の膨張を示す地殻変動が観測された(気象庁)。 JAXAのGCOM-C 衛星により、このイベントに関連すると考えられる新燃岳の表面温度のわずかな上昇が観測された。図1に示した3月6日と4月2日の夜間 GCOM-C 画像(11 µm バンド/分解能250m)を比較すると、イベント発生後の4月2日に、新燃岳火口域の温度が高くなっていることが認められる。

図1 3月6日と4月2日のGCOM-C画像(11 µm バンド)  

図2に、新燃岳とバックグラウンドとして設定した南岳山頂域との温度差の時間変化を示す。新燃岳の温度は、従来から南岳より4~8 度ほど高い傾向があるが、30日のイベント後である4月2日には、その温度差がこの範囲を超え、10.4 度に達している。30日のイベントの発生に伴い、一時的な噴気活動の活発化が観測されている。本検討の結果は、ガス放出の増加により溶岩層の表面が加熱され、その影響が4月2日まで継続した可能性を示唆している。

図2 新燃岳火口表面とバックグラウンドの温度差の時間変化

(火山噴火予知研究センター  金子隆之)

第1045回地震研究所談話会開催のお知らせ

下記のとおり地震研究所談話会を開催いたします。

対面での開催を再開しておりますので、地震研究所へお越しいただければ幸いです。

なお、お知らせするZoom URLの二次配布はご遠慮ください。また、著作権の問題が

ありますので、配信される映像・音声の録画、録音を固く禁じます。

                記

         日  時: 令和7年3月21日(金) 午後1時30分~

         場  所: 地震研究所1号館2階 セミナー室

               Zoom Webinarにて同時配信 

1. 13:30-13:45

演題:ニュージーランド・北部ヒクランギ沈み込み帯における長期海底電磁場観測 【所長裁量経費成果報告】

著者:○馬場聖至、姜 峰(中国科学院南海海洋研究所)、上嶋 誠、Grant CALDWELL(GNS Science)、尾花由紀(九州大学)、望月公廣

要旨:北部ヒクランギ沈み込み帯において、上盤プレートの電気伝導度構造の時間変化を検出する試みを開始し、このほど1年分のデータを取得できたので報告する。

2. 13:45-14:00

演題:クラックの指向性を考慮した岩石の電気伝導度モデル

著者:○臼井嘉哉

3. 14:00-14:15

演題:Slow-to-Fast地震学プロジェクト部【所長裁量経費成果報告】

著者:○加藤愛太郎・武村俊介・竹尾明子・望月公廣、井出 哲(東大理学系研究科)

4. 14:15-14:30

演題:三浦半島断層群・相模トラフ調査観測プロジェクト部 【所長裁量経費成果報告】

著者:○蔵下英司・石山達也・三宅弘恵・古村孝志・酒井慎一

5. 14:30-14:45

演題:Large-scale simulation of 3D fracture: engineering applications to fault rupture

著者:○Lalith MADDEGEDARA・Elia NICOLIN・Kohei FUJITA・Tsuyoshi ICHIMURA and Muneo HORI(JAMSTEC)

6. 14:45-15:00

演題:情報科学-固体地球科学融合研究プロジェクト部【所長裁量経費成果報告】

著者:○長尾大道・徳田智磯・Gerardo Manuel MENDO PEREZ・加藤慎也・情報科学-固体地球科学融合研究プロジェクト部メンバー

○発表者

※時間は質問時間を含みます。

※既に継続参加をお申し出いただいている方は、当日zoom URLを自動送信いたします。

※談話会のお知らせが不要な方は下記までご連絡ください。

〒113-0032 東京都文京区弥生1-1-1 

東京大学地震研究所 共同利用担当

E-mail:k-kyodoriyo(at)eri.u-tokyo.ac.jp

※次回の談話会は令和7年4月18日(金) 午後1時30分~です。

ETSの始まりにおける微動とスロースリップイベントの相互作用:カスケード沈み込み帯の例

伊東 優治(1)、Socquet Anne(2)、Radiguet Mathilde(2)
1東京大学地震研究所 2グルノーブルアルプ大学地球科学研究所

Slip-Tremor Interaction at the Very Beginning of Episodic Tremor and Slip in Cascadia
Yuji Itoh (1), Anne Socquet (2), Mathilde Radiguet (2)
1ERI, University of Tokyo, Japan
2ISTerre, Université Grenoble Alpes, France
AGU Advances, 6, e2024AV001425
https://doi.org/10.1029/2024AV001425


 北米西海岸のカスケード沈み込み帯や南海トラフでは、スロースリップイベント(SSE)と微動と呼ばれるスロー地震現象が時空間的に近接して発生することが知られており、大規模なイベントはEpisodic Tremor and Slip (ETS)と呼ばれている。多数の観測に支持されるETSのメカニズムの概念的なモデルの一つは、SSEは断層帯の延性的な変形であり、その断層帯の中に埋め込まれた小さな脆性的なパッチが微動を起こすというものである。しかし、ごく小さな微動や、微動を起こすパッチが、それよりも何桁も大きな規模のSSEのすべり挙動に影響を及ぼしうるかどうかは検証されていなかった。そこで、本研究では、カスケードで発生した大規模なETSの始まりの過程のみに着目した解析を実施することで、微動とSSEの間の力学的な関係の議論を試みた。典型的な逆解析手法で推定されるSSEの時間発展は実際のものよりも滑らかになることが知られており、すべり速度やモーメント解放速度が急激に変化するSSEの始まりの推定結果に顕著な影響を及ぼすと考えられる。また、通常の解析で使われる1日ごとのGPS地殻変動データではSSEと微動の時間的関係を詳細に比較することはできない。そこで、本研究では、SSE開始地点付近の複数観測点における1日以下の時間間隔のGPS地殻変動データを足し合わせる(スタックする)ことで、SSEの開始に伴うモーメントの時間発展を推定した。その結果を微動の累積発生個数の時間発展と比較することで、SSEのモーメントのシグナルが、微動の発生よりも0~2日程度遅れて検出可能になることがわかった。一方で、SSEのモーメントが検出可能なくらい大きくなると、微動の発生域の面積がより効率的に広がることがわかった。これらの解析結果は、ETSの始まりの段階では、微動がSSEの挙動に影響を及ぼしうることことや、SSEが検出可能なくらい成長した後は、微動とSSEが相互作用しながら拡大していくことを示唆している。本研究では、これらの解析結果と先行研究による知見を統一的に説明し得る概念的なモデルとして、Unpinningモデルを提案した。このモデルでは、微動を起こす小さなパッチの強度が周囲のSSEを起こす断層帯よりもやや強く、微動のパッチがプレート境界断層面を留めるピンのような役割を持つ。そのため、破壊強度に達していない微動のパッチはSSEの成長を妨げ、無数にある微動のパッチが破壊強度に達して集合的に破壊された後に、SSEはGPSデータで観測可能な大きさに成長することが可能となる。提案するモデルは概念的なものであるため、数値シミュレーションや室内岩石実験等による定性的な検証が待たれる。

図1: (a) 2010年8月中旬のETS発生期間を含む、5分間隔のGPS地殻変動データ(赤い点)。4桁のコードは観測点名を表し、その位置をdに示す。(b) aに示すデータを、重みづけしてスタックする(足し合わせる)ことで得られたSSEのモーメント時間関数(赤)と、ETSの始まりに伴う微動の累積発生個数(青)。c-dの赤い四角の中で発生した微動のみを考慮している。(c) 微動の分布(色付きの点、色は時間を表す)。赤い四角はETSが始まったと仮定した領域を表す。赤と黒の矢印は赤い四角の領域で一様なすべりが発生した場合のGPS観測点での変位パターンを 表し、この変位パターンをスタックの重みづけに使った。(d) cの一部を拡大したもの。赤の四角はaに示したデータの観測点位置を示す。
図2: 本研究で提案したETSの始まりの過程に関する概念的なモデル。オレンジ色の領域は滑っていない領域、青色の領域はすべっている領域。SSEはETS zone全体で生じ、小さな丸と吹き出しはそれぞれ、微動のパッチと、その破壊(微動の発生)を表す。(a) 大規模なETSが発生していない期間。(b) 大規模なETSが始まっているがSSEのシグナルが観測可能な大きさに達していない期間。(c) 大規模なETSが始まっており、SSEと微動の両方が観測可能なほど大きく、両者の相互作用が顕著な期間。(d)ETSの拡大が終了し、走向方向(等深線方向)への移動が始まる期間。