HPC Asia 2022にて、市村強教授らによる研究がBest Paper賞、日下部亮太さん(博士3年)らによる研究がBest Student Poster賞を受賞

HPC Asia 2022(2022年1月12日~14日、オンライン開催)に採択され、1月12日に発表した市村強教授・藤田航平准教授・日下部亮太さん(博士3年)・菊地由真さん(修士2年)・堀宗朗外来研究員・Lalith Maddegedara准教授らによる研究がBest Paper賞、日下部亮太さん(博士3年)らの研究がBest Student Poster賞を受賞しました。

Best Paper賞を受賞した論文では,物理シミュレーションとデータ学習を融合した新たな手法を開発し,シミュレーション中で生成される19.2兆個のデータを学習しつつ,1.2兆自由度の超高速非線形動的シミュレーションを富岳上で可能としました.また,この手法を用いて,富岳全系(152,352計算ノード)において,7,312,896超並列計算(=609,408 MPI processes × 12 OpenMP threads)により,従来は不可能とされてきた超大規模・超高詳細地震シミュレーションを実現しました.

Best Student Poster賞を受賞したポスターでは,液状化現象の大規模3次元シミュレーションを多数回実行可能なGPUを活用した高速3次元動的有限要素解析手法を開発し,さらに本手法を活用することで生成された液状化解析結果を学習してサロゲートモデルを構築することで液状化の推定のさらなる低コスト化の可能性を示しました.


これらの研究は,物理シミュレーションとデータサイエンスの融合を進めてきた一連の研究(例えば、https://www.eri.u-tokyo.ac.jp/award/15580/ )の発展形にあたります.


市村 強 教授、藤田 航平 准教授らが、The International Conference on High Performance Computing in Asia-Pacific Region(HPC Asia 2022)にて、Best Paper Awardを受賞しました。

Best Paper賞
論文題目:152K-computer-node Parallel Scalable Implicit Solver for Dynamic Nonlinear Earthquake Simulation
著者(受賞者):Tsuyoshi Ichimura1,2, Kohei Fujita1,2; Kentaro Koyama3, Ryota Kusakabe1, Yuma Kikuchi1, Takane Hori4, Muneo Hori4,1, Lalith Maddegedara1, Noriyuki Ohi3, Tatsuo Nishiki3, Hikaru Inoue3, Kazuo Minami2, Seiya Nishizawa2, Miwako Tsuji2, and Naonori Ueda2
著者所属:1. The University of Tokyo, 2. RIKEN, 3. Fujitsu Ltd., 4. Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology
受賞名:Best Paper Award
授与機関:HPC Asia 2022: The International Conference on High Performance Computing in Asia-Pacific Region
受賞日:2022/1/14

Best Student Poster賞
論文題目:GPU-accelerated Multiphysics-based Seismic Wave Propagation Simulation and its Surrogate Model with Machine Learning
著者(受賞者):Ryota Kusakabe1, Tsuyoshi Ichimura1, Kohei Fujita1, Muneo Hori2,1, Lalith Maddegedara1
著者所属:1.The University of Tokyo, 2. Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology
受賞名:HPC Asia 2022 Best Student Poster Award in Memory of Hiroshi Nakashima
授与機関:HPC Asia 2022: The International Conference on High Performance Computing in Asia-Pacific Region
受賞日:2022/1/14


HPCAsia2022のHP: https://sighpc.ipsj.or.jp/HPCAsia2022/
HPCAsia2022での受賞紹介HP: https://sighpc.ipsj.or.jp/HPCAsia2022/#awards
理研R-CCSでの受賞紹介HP: https://www.r-ccs.riken.jp/outreach/topics/20220127-1/
JAMSTEC「富岳」成果創出加速プログラム:「大規模数値シミュレーションによる地震発生から地震動・地盤増幅評価までの統合的予測システムの構築とその社会実装」での受賞紹介HP: http://www.jamstec.go.jp/fugaku-earthq/ja/result.html#20220112

新規開発した浅海用係留ブイ方式海底地震計と陸上観測点による2019年山形県沖の地震の精密な余震分布

篠原雅尚1・酒井慎一1・岡田知己2・佐藤比呂志1・山下裕亮3・日野亮太2・望月公廣1・悪原岳1

1東京大学地震研究所、2東北大学大学院理学研究科附属地震・噴火予知研究観測センター、3京都大学防災研究所地震予知研究センター宮崎観測所

Earth, Planets and Space (2022) 74:5, https://doi.org/10.1186/s40623-021-01562-6

 
 2019年6月18日22時22分頃、山形県酒田市沖の深さ約14kmを震源とするマグニチュード6.7の地震(山形県沖地震)が発生しました。西北西-東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、震源域は陸域既設地震観測網近傍の海域でした。そのため、精密な余震分布を求めるためには、震源域直上における海底地震計による観測が必要です。そこで、山形県沖地震の活動と地震発生場の特徴を正確に把握するために、震源域直上において海底地震計を用いた臨時観測と、震源域近傍の海岸線付近において陸上臨時観測を実施しました。海域部については水深100m以下の浅海であり、通常の自己浮上式海底地震計での観測は困難です。そこで、浅海用に新しく係留ブイを用いた海底地震計を開発し、観測を行いました。海底の地震計測部は計測センサーとして3成分地震計とハイドロフォン(水中圧力を測定)を用いています。また、計測部装置の海底での姿勢を把握するために、2成分の傾斜計と方位計を持っています。係留ブイに地震計測部をつなぐシステムは、漁業に用いられているシステムを基として開発しました。今回の観測で、浅海での地震観測では係留ブイ方式が優れていることが明らかになりました。
 2019年7月5日に水深約80mの震源域直上に3基の係留ブイ方式海底地震計を設置し、2基を同年同月13日に回収しました。3成分地震計をもつ陸上臨時観測点を同時に設置しました。得られたデータから地震のP波及びS波の到着時刻を読み取り、高精度震源決定を実施しました。その結果、山形県沖地震の余震は深さ2.5kmから10kmの間で発生しており、南東に位置する震源ほど震源が深いことがわかりました。さらに、余震群をプロットすると南東に傾き下がるような面を形成しており、本震の発震機構から得られる断層面と調和的であることがわかりました。また、活動域は上部地殻の上部域に限定されていることもわかりました。余震の発震機構は多くは本震とよく似た逆断層型でしたが、正断層型や横ずれ型の地震も発生していました。東北日本の日本海側は、2011年東北地方太平洋沖地震発生前には圧縮応力場でしたが、東北沖地震発生により緩和されたことが推測されています。今回の地震の特徴はこのような東北沖地震発生後の日本海側の応力状態を反映していると考えられます。


図の説明
左:開発した浅海用係留ブイ方式海底地震計の構成図と設置時の写真。右:2019年7月5日から13日までの臨時観測網による震源分布と観測点分布。

【研究速報】2022年1月15日13時頃(日本時間)のフンガ・トンガ-フンガ・ハアパイ火山の噴火


ウェブサイト立ち上げ:2022年1月17日
最終更新日:2022年1月24日

日本でも気象庁より津波警報が発出されました、2022年1月15日日本時間13時頃のフンガ・トンガ-フンガ・ハアパイ火山の噴火(気象庁HPより)関連の情報を、ここで更新してまいります。
*内容や図等は常に新しい情報が入り次第更新されております。

*報道関係の皆さまへ:図・動画等を使用される際は、「東京大学地震研究所」と、クレジットを表示した上でご使用ください。また、問い合わせフォームよりご連絡ください。


【三陸沖光海底ケーブル式海底地震・津波観測システムで記録された2022年1月15日トンガ火山爆発に伴う海面変動】(掲載日:1月24日)

2022年1月15日13時頃(日本時間)に南太平洋トンガのフンガ・トンガ-フンガ・ハアパイ火山が大きな噴火を起こしました。この噴火に伴い、同日夜から翌日午前中に日本各地で海面変動が観測されました。東京大学地震研究所が設置、観測を行っている三陸沖光海底ケーブル式海底地震・津波観測システムでも、この海面変動を記録しました。同システムは1996年に設置されたシステムと2015年に設置されたシステムの2システムからなっており、併せて5台の津波計により観測を行っています(図1)。最も浅いYTM1は水深が500mほどで、ケーブルとセンサーは海底下に埋設されています。そのほかの点は海底に置かれており、最も深いYTM3で水深1600mほどです。
同システムの津波計は、15日の20時過ぎから海面の変動(海底における水圧変化)を観測しました(図2)。この海面変動は、16日の午前0時頃に最も大きくなり、その変動量は両振幅で約18cm(水圧変化としては18 hPa)に達しました。その後、変動は小さくなっていきましたが、変動を始めてから24時間経過した後も継続していました。変動開始の時間帯のデータを詳しく見ると、変動はおおよそ340 m/sの速度で伝播しているように見えます(図3)。これは、大規模な噴火による気圧変動が海面変動を引き起こしたとする説明に整合的です。

図1 三陸沖光海底ケーブル式海底地震・津波観測システムの位置。赤い四角が津波計の位置を示している。黒線と赤線は海底ケーブルの位置。
図2 三陸沖光海底ケーブル式海底地震・津波観測システムにより観測された海面変動。縦軸は圧力を示しており、1hPaがおおよそ1cmの海面変動に対応する。データには、3600秒から10秒のバンドパスファイルターがかけてある。最も浅いYTM1で最大約18cmの変動が見られた。

図3 変動開始付近の拡大図。縦軸は、フンガ・トンガ-フンガ・ハアパイ火山から距離を示している。データには、3600秒から10秒のバンドパスファイルターがかけてある。図中の縦棒は、波形の振幅を示している。海面変動は、15日の20時過ぎに始まり、約340m/sの伝播速度を持っているように見える。

(観測開発基盤センター 篠原雅尚 教授・酒井慎一 教授)


火山噴火に関連する大気・海洋波動現象の用語解説】(掲載日:1月21日)

  • 空振とは:空気中の圧力変化として音速で伝わる波.大気波動の一種.日本固有の用語で.英語の「Infrasound」を含む.
  • 大気Lamb波とは:大気中を地表や海面に沿って大気音速で伝わる.大気波動の一種で大気境界波とも言う.
  • 衝撃波とは:強い火山爆発等で発生し火口近くでは音速を超え,遠ざかると急激に減速し,音速で伝わる.
  • 津波とは:波長が長ければ水深に応じた速度で伝わる.海洋波動の一種.
  • 共鳴:大気波動が海面上を伝わる際、津波の伝播速度に一致すると海面変動が生じ、津波として伝わる.

トンガ噴火に伴う津波の発生機構に関しましては,NHK解説記事内の説明をご参照ください.

(地震研究所長 佐竹健治 教授)
(火山噴火予知研究センター 市原 美恵 准教授)
(数理系研究部門 西田 究 准教授)
(地球計測系研究部門 綿田 辰吾 准教授)


【噴火の強さ】 (最終更新日:1月19日)
大気への噴煙流入率(時間あたりの噴煙流入量)が大きいほど噴煙半径が大きくなることが知られています。今回の噴火は噴煙半径が非常に大きいことが特徴で、強い噴火であったことを示唆しています。今回の大気への噴煙流入率は1991年のフィリピン・ピナツボ噴火の約3倍であると推定しています。このような高い噴煙流入率は、1) 高いマグマ噴出率、2)多量の海水との接触、またはその両方が原因になった可能性があります。

横軸は噴火開始からの秒数、縦軸は噴煙の半径。同じ時間でみると、ピナツボ火山の1991年噴火よりも今回の噴煙半径が大きいことが見て取れる。

(火山噴火予知研究センター 鈴木 雄治郎 准教授)


謝辞:
宇宙航空研究開発機構(JAXA)の分断横断型プロダクト提供サービス(P-Tree)の提供するデータを使用しました。記して感謝します。


【噴火に関する津波】(掲載日:1月18日)

トンガ大規模噴火による津波は太平洋沿岸の各地に到達しました。図は東京湾アクアラインの海底トンネルに設置されたミュオグラフィ観測装置「Hyper Kilometric Submarine Deep Detector(HKMSDD)」を用いて測定された潮位偏差(天文潮位との差分)の時間変化です(青線)。東京湾の海水を貫通して海底トンネルに到達した素粒子を測定することでトンネル上部にある海水の厚みに関する情報が得られます。2022年1月15日13時ごろ噴火が起き、そのおよそ8時間後の21時ごろに最初の津波が東京湾に到達しました。図(A)〜(B)には、それぞれ千葉、横須賀検潮所における潮位偏差※との比較が示されています。潮位の時間変化を見ると、千葉、横須賀における検潮結果とミュオグラフィの結果との間には似たような傾向がありますが、振幅はおよそ2.5倍高い結果となりました。また、図(C)には、横浜における気圧の時間変化を示しました。検潮結果の大雑把な傾向として、潮位が徐々に高くなっているように見えますが、これは図(D)に示した気圧変化による吸い上げ効果によるものと考えられ、吸い上げ効果の影響を受けないミュオグラフィではそのような変化は見られません。従って、津波そのものが高くなってきているのではないと考えられます。

※海上保安庁海洋情報部リアルタイム検潮データ


(参考)世界最高ミュオグラフィ観測精度を達成(東京大学国際ミュオグラフィ連携研究機構

(高エネルギー素粒子地球物理学研究センター 田中 宏幸 教授)


【噴火に関するLamb波】(最終更新日:1月18日)
周期200秒より長い帯域では、大きな火山噴火が起きると、大気Lamb波(長周期大気音波の一種)*1が励起される事が知られています。1883年クラカタウ噴火には、地球を周回したとの記録が残っています。近代的な観測が始まってからは、地球を周回する火山起源のLamb波の観測はありませんでした。今回、全世界的に微気圧計記録を解析したところ、Lamb波が地球を周回する様子を捉えていました。図中L1で示した直線はトンガから最短距離で伝搬したLamb波、L2は逆回りに伝播したLamb波です。図中L3、L4は2周目と対応します。

横軸はトンガからの距離(角度)、縦軸はUT 1/15 4:30 (おおよその噴火時刻) からの秒数。微気圧計記録に周期100秒から10000秒のバンドパスフィルタをかけた。

謝辞:
US Geological Survey Networks, Central and Eastern US Network, Caribbean USGS Network, Geoscope, IRIS IDA, IRIS USGS のデータを使わせていただきました。記して感謝します。

*1: 大気Lamb波: 厳密には境界波の一種で、水平方向には音波として振る舞い、鉛直方向は静水圧平衡にある波です。

(数理系研究部門 西田 究 准教授)

・・・・・・・・・・下記掲載日:1月19日・・・・・・・・・・・


 トンガの噴火により発生した,地球を周回する大気Lamb波(西田准教授【噴火に関するLamb波】をご参照ください)は,日本の火山空振観測点でも捉えられました.空振計としても気圧計としても使用できる非常に精度のよい微気圧計を設置している霧島火山周辺の観測点(宮崎県4点・鹿児島県1点)と浅間火山周辺の観測点(長野県)の波形を並べて示しました.大気圧の変動や局地的な音波は霧島と浅間や,霧島の観測点間でも大きく違いますが,Lamb波はすべての観測点で共通に見えるはずです.世界中の観測点に届いた時刻を参考にLamb波と思われるところを黄色の矢印で示しました.地球の裏側を回ってきたL2は波形が不明瞭で,霧島と浅間では大きく異なりました.L4・L5になると,矢印で示したものが対応するものかどうか,まだ確信は持てません.日本各地,世界各地の観測データと合わせて解析することが重要です.研究者の方々との情報共有のため,本ページに掲載しております.なお,図の時刻は日本時間,縦軸の目盛り幅は100 Pa (太線)です.

(火山噴火予知研究センター 市原美恵 准教授)

第1010回地震研究所談話会開催のお知らせ

 下記のとおり地震研究所談話会を開催いたしますので、ご案内申し上げます。今回は、コロナウィルス感染対策として、地震研究所の会場での開催は行いません。WEB会議システムを利用した参加のみとなります。参加に必要な設定URL・PWDについては、参加をご希望される方宛に別途ご連絡をいたしますので、共同利用担当宛(k-kyodoriyo@eri.u-tokyo.ac.jp)お問い合わせください。

なお、お知らせする設定URLの二次配布はご遠慮ください。また、著作権の問題がありますので、配信される映像、音声の録画、録音を固く禁じます。

日  時  令和4年1月21日(金)午後1時30分~ インターネット WEB会議

                  記

  1. 13:30-13:45

演題:地震波よりも早く到達する重力ベクトルの変化から断層傾斜角と

マグニチュードのそれぞれが決定可能に【発表補助成果報告】

著者:木村将也・〇亀 伸樹・綿田辰吾・新谷昌人、功刀 卓(防災科研)

WANG Rongjiang(Helmholtz Centre Potsdam, GFZ)

要旨: 地震波よりも早く到達する重力ベクトルの変化(P波前重力信号)から断層傾斜角と

マグニチュードのそれぞれが決定可能になった。

(論文URL:https://doi.org/10.1186/s40623-021-01553-7

2. 13:45-14:00

演題:高サンプリングGPSを用いたCascadiaスロースリップの時空間発展の推定

【R2年度所長裁量経費成果報告】【特任研究員成果報告】

著者○伊東優治・青木陽介・福田淳一

要旨: Cascadia SSEの時空間発展を30分間隔のGPSデータから推定した

(プレプリント:https://doi.org/10.31223/X5J91V)。

3. 14:00-14:15

演題:地球外核における液体鉄の状態方程式のベイズモデリング

著者:〇松村太郎次郎・安藤康伸(産業技術総合研究所)、上木賢太・桑谷 立(海洋研究開発機構)、

永田賢二(物質・材料研究機構)、桑山靖弘・伊藤伸一・長尾大道

要旨: 地球外核に対応する高圧・高温条件下における溶鉄の状態方程式の最適化にベイズ推定の枠組みを適用した。

(論文URL: https://doi.org/10.1029/2021JB023062 )

○発表者

※時間は質問時間を含みます。

※談話会のお知らせが不要な方は下記までご連絡ください。

〒113-0032 東京都文京区弥生1-1-1 

東京大学地震研究所研究支援チーム

E-mail:k-kyodoriyo@eri.u-tokyo.ac.jp

※次回の談話会は令和4年2月18日(金)午後1時30分~です。

地震波よりも早く到達する重力ベクトルの変化から断層傾斜角とマグニチュードのそれぞれが決定可能に

木村将也, 亀伸樹, 綿田辰吾, 新谷昌人(東京大学地震研究所), 功刀卓(防災科学技術研究所), Wang, Rongjiang(Helmholtz Centre Potsdam, GFZ)

Determination of the source parameters of the 2011 Tohoku‑Oki earthquake from three‑component pre‑P gravity signals recorded by dense arrays in Japan
Earth, Planets and Space (2021) 73:223 https://doi.org/10.1186/s40623-021-01553-7

地震の動的破壊は、断層周辺と地震波が伝播する場所の両方に質量の変化をもたらします。これにより生じる重力ベクトルの変化はほぼ瞬時に伝わるため、P波より早く地震観測点に到達します。このP波の前に到達する重力ベクトル信号(P波前重力信号)は幾つかの大地震で検出されてきましたが、観測記録の垂直成分に限られていました。これは水平記録の雑音レベルが高いためです。本研究は、2011年東北地方太平洋沖地震(Mw 9.1)に対するHi-net高密度傾斜計アレイデータを解析し、水平成分のP波前重力信号を探しました。現実的な地球構造モデルに対して計算された3成分合成波形の信号強度の分布(図1)に基づいて水平成分記録をスタッキングし、雑音レベルを明瞭に超えた水平信号を特定しました(図2a)。さらに、F-net広帯域地震計アレイデータの垂直信号(図2b)と組合せ、波形逆解析から震源パラメータを推定し、地震の傾斜角とマグニチュードをそれぞれ11.5–15.3°とMw 8.75–8.92の範囲に制約しました。従来の「地震波形」の解析においては、浅い地震に対して傾斜角とマグニチュードは二律背反の関係にあり両者を同時に決定できませんでした。本研究は、P波前重力信号の3成分を解析することで、この二律背反問題を解決できることを示しました。これはP波前重力信号が、地震の震源研究のための新しい観測窓を開いたことを意味します。

図1.P波前重力信号合成波形の信号強度の分布(単位1 nm/s2, a.東西成分, b.南北成分,c.上下成分)
図2. P波前重力信号のスタック波形. a. 水平成分, b. 上下成分, 黒:合成波形, 赤:観測記録

東京大学地震研究所 共同利用研究集会「固体地球の多様な波動現象へのアプローチ:多量データ解析と大規模計算を両輪に」

東京大学地震研究所 共同利用研究集会
「固体地球の多様な波動現象へのアプローチ:多量データ解析と大規模計算を両輪に」

開催日時:2021年12月21日(火)13:30〜18:00 ・22日(水) 9:00〜14:30

開催方式:オンライン(Zoom)
プログラム:
https://www.eri.u-tokyo.ac.jp/people/furumura/211213.pdf

参加申し込みフォーム:
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSfJkqsoeqf2maidI_1UnkAnG9UVpLpYj1fLk6bo6XBi_TI32A/viewform?usp=sf_link

*申し込みいただいた方にZoom情報をお知らせします。

世話人:野口科子(地震予知総合研究振興会)・古村孝志・武村俊介

第12回サイエンスカフェ(オンライン)開催報告

第12回サイエンスカフェを、 地震・火山噴火予知研究協議会と広報アウトリーチ室の共同で、2021年12月8日にオンラインで開催いたしました。

 12回目となる今回は、「高リスク小規模火山噴火」というテーマで開催し、話題提供者に 大倉敬宏 教授(京都大学 大学院理学研究科)、大湊隆雄 教授(東京大学地震研究所)を迎え、加藤尚之 教授の司会のもと、小規模な噴火の予測研究の現状と小規模噴火による被害を小さくするための取組などについて話題提供していただきました。

<地震・火山噴火予測研究のサイエンスカフェ >
地震や火山噴火に関する研究の成果は、予測の基礎となることが期待されています。これまでの研究から、地震や火山噴火のメカニズムへの理解は深まってきました。また、今後発生する可能性のある地震や火山噴火を指摘することもある程度はできます。しかし、規模や発生時期についての精度の高い予測はまだ研究の途上です。このサイエンスカフェでは、地震・火山噴火の予測研究の現状について研究者と意見交換を行い、研究者・参加者双方の理解を深めることを目的とします。

「地震史料集テキストデータベース」を公開

地震火山史料連携研究機構で構築した「地震史料集テキストデータベース」を公開いたしました。
震災予防評議会(旧震災予防調査会)や地震研究所から発行された史料集をオンラインデータベースにしたものです。ぜひご利用ください。
https://materials.utkozisin.org/

藤田准教授、菊地由真(修士2年)、市村教授、Lalith准教授らによる研究が WACCPD21で特別賞を受賞

藤田 航平 准教授、菊地由真(修士課程2年)、市村 強 教授、Lalith Maddegedara 准教授らによる研究がEighth
Workshop on Accelerator Programming Using Directives(WACCPD)で特別賞(Honorable Mention)を受賞しました。

論文題目 GPU porting of scalable implicit solver with Green’s function-based neural networks by OpenACC
著者(受賞者) Kohei Fujita1,2, Yuma Kikuchi1, Tsuyoshi Ichimura1,2 , Muneo Hori3 , Lalith Maddegedara1 , Naonori Ueda2
著者所属 1.The University of Tokyo, 2.RIKEN, 3.Japan Agency for Marine Earth Science and Technology
受賞名 Honorable Mention
授与機関 Program Committee on Eighth Workshop on Accelerator Programming Using Directives (WACCPD21)
受賞日 2021/11/14

世界最高ミュオグラフィ観測精度を達成(東京大学国際ミュオグラフィ連携研究機構)

東京大学国際ミュオグラフィ連携研究機構は、同大学生産技術研究所、大気海洋研究所、大学院新領域創成科学研究科、および九州大学、英国シェフィールド大学、英国ダラム大学、英国科学技術施設会議ボルビー地下実験施設、イタリア原子核物理学研究所、イタリアサレルノ大学、イタリアカターニャ大学、ハンガリーウィグナー物理学研究センター、チリアタカマ大学、フィンランドオウル大学Kerttu Saalasti研究所と共同で、世界初となる海底ミュオグラフィセンサーアレイ(HKMSDD:Hyper KiloMetric Submarine Deep Detector)の一部を東京湾アクアライン海底トンネル内部に設置し、この東京湾海底(Tokyo-Bay Seafloor)HKMSDD(TS-HKMSDD)を用いて、令和3年6月1日〜8月18日までの79日間の長期観測を実施した。
詳細:東京大学国際ミュオグラフィ連携研究機構