開催報告:懇談の場「『太平洋アレイ』展開開始!」

地震研究所と参加者とのコミュニケーション促進の場である「懇談の場」が2019年5月11日に開催されました。

今回は、太平洋の海洋底に広帯域海底地震計・電磁力計を展開するプロジェクト:「太平洋アレイ」の展開について、 海半球観測研究センターの川勝 均 教授 にお話しいただきました。

過去に開催された「懇談の場」
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太平洋アレイHP:http://eri-ndc.eri.u-tokyo.ac.jp/PacificArray/index_j.html

次回日程は、また決まり次第告知させていただきますが、「データ同化関係」をテーマに、長尾大道准教授にお話しいただく予定でおります。お気軽にお越しください。

2015年ネパール・ゴルカ地震: 自然地震反射法による震源断層のイメージング,構造と断層すべり挙動との関係

蔵下 英司1, 佐藤 比呂志1, 酒井 慎一1, 平田 直1, Ananta Prasad Gajurel2, Danda Pani Adhikari2, Krishna Prasad Subedi 3, 八木 浩司4, and Bishal Nath Upreti3,5

1)東京大学地震研究所, 2)トリブバン大学, 3)ネパール科学技術院, 4)山形大学, 5)ザンビア大学

Kurashimo, E., Sato, H., Sakai, S., Hirata, N., Gajurel, A. P., Adhikari,D. P., et al. (2019). The 2015 Gorkha earthquake: Earthquake reflection imaging of the source fault and connecting seismic structure with fault slip behavior. Geophysical Research Letters, 46, 3206–3215. https://doi.org/10.1029/2018GL081197

 2015年4月25日に発生したネパール・ゴルカ地震(Mw7.8)は,カトマンズをはじめとして約9000人の死者を伴う甚大な被害を発生させました.この地震は,インドプレートとユーラシアプレートの境界で発生した地震です.ヒマラヤ地震発生帯は,典型的な大陸衝突型のプレート境界に位置していますが,衝突帯のテクトニクスを理解し,そして本地震の発生原因を検討する上で重要となる詳細な震源分布や速度構造に関する知見は十分ではありませんでした.そこで,震源域中央部を横切る測線で稠密余震観測を実施し,取得データにトモグラフィ解析・自然地震反射法解析・初動メカニズム解析を適応しました.得られた構造と地震時の断層面上のすべり量(Elliott et al., 2016)との比較を図に示します.すべり量が大きかった領域(図cの青色領域)では,断層面の傾斜角が変化し,断層面近傍では地震波のP波速度が高速度な特長が分かりました.すべり量が大きかった領域の浅部側における断層面近傍は,低速度な特長が示されましたが,さらに浅部側の,すべり量が浅部に向かって減少する領域でアフタースリップが推定されている領域(Mencin et al, 2016; 図cの紫色領域)には,断層面近傍に高速度な領域が認められれました.これらの結果は,断層面近傍における物質構造の変化が,地震断層のすべり挙動に影響を与えている可能性を示唆しています.

図: ゴルカ地震震源域中央部を横切る測線下の構造と地震時すべり量(Elliott et al., 2016)との比較. (a)インド‐ユーラシアプレート衝突帯の断面図 (b)測線下の構造と本観測データで決定した測線近傍(±5 km)の震源分布.黒実線は,反射法断面図から確認できる反射帯を示し,反射帯の上面を主ヒマラヤ衝上断層に対応すると解釈しました. P波速度を,カラースケールで示しています.震源は丸印で示し,メカニズムが決定できた地震の断層タイプを,輪郭の色で示します.断層タイプの分類方法は,Frohlich (1992) によります. (c)地震時すべり量と主ヒマラヤ衝上断層から1km下方の面に沿うP波速度分布.青色の領域は,すべり量が600㎝より大きな領域を示し,紫色の領域は,Mencin et al. (2016)によるアフタ-スリップが推定された領域を示します.縦の破線は,主ヒマラヤ衝上断層の沈み込み角度が変化する位置を示します.

【参考文献】
Elliott, J. R., Jolivet, R., González, P. J., Avouac, J. P., Hollingsworth, J., Searle, M. P., & Stevens, V. L. (2016). Himalayan megathrust geometry and relation to topography revealed by the Gorkha earthquake. Nature Geoscience, 9(2), 174–180.

Frohlich, C. (1992). Triangle diagrams: Ternary graphs to display similarity and diversity of earthquake focal mechanism. Physics of the Earth and Planetary Interiors, 75(1‐3), 193–198.

Mencin, D., Bendick, R., Upreti, B. N., Adhikari, D. P., Gajurel, A. P., Bhattarai, R. R., et al. (2016). Himalayan strain reservoir inferred from limited after slip following the Gorkha earthquake. Nature Geoscience, 9(7), 533–537.

岩森光教授らの共同研究の成果がプレスリリースされました

東北地方太平洋沿岸域が沈降するメカニズムを解明 -超巨大地震サイクル後半の沈降速度の増加-
[eri_slideshow] 物質科学系研究部門の岩森光教授らによる、超巨大地震サイクルに伴う東北地方太平洋沿岸域の沈降メカニズムに関する共同研究の成果論文「Mechanism of subsidence of the Northeast Japan forearc during the late period of a gigantic earthquake cycle(超巨大地震サイクル後半における東北日本前弧域の沈降のメカニズム)」が、4月5日に国際学術誌「Scientific Reports」のオンライン版に掲載されました。

詳細は、京都大学からのプレスリリースをご覧ください。

東北地方太平洋沿岸域が沈降するメカニズムを解明 -超巨大地震サイクル後半の沈降速度の増加-(京都大学プレスリリース資料へ)