地震研究所と参加者とのコミュニケーション促進の場である「懇談の場」が、2018年1月12日に開催されました。
今回は、2016年4月に起きた熊本地震について、その後の調べで明らかになってきた断層破壊過程について、加藤愛太郎准教授より説明がありました。
次回日程は、また決まり次第告知させていただきますが、東京大学の地震研究所と史料編纂所が連携して設立された地震火山史料連携研究機構の発足に伴う、地震学と歴史学の融合についてを話題とする予定です。お気軽にお越しください。
所内外の技術職員の発表を主とした職員研修会を下記のとおり開催致します。
日程: 1月24日(水)~1月26日(金)
場所: 地震研究所1号館
セミナー室A・B、コミュニケーションラウンジ、他
詳しくは:職員研修のページ
Determination of Intrinsic Attenuation in the Oceanic Lithosphere-Asthenosphere System
N.TAKEUCHI, H. KAWAKATSU, H. SHIOBARA, T. ISSE, H. SUGIOKA, A. ITO & H. UTADA
Science, vol 358, issue 6370, pp.1593-1596, 2017.
地球の海の下にはリソスフェアと呼ばれる硬い岩盤があり、柔らかいアセノスフェアの上で運動していると考えられている。しかしなぜアセノスフェアがリソスフェアよりも柔らかいのかはわかっていないうえ、計測の困難さから、アセノスフェアの柔らかさを直接観測する手段もほとんどなかった。
私たちは「ふつうの海洋マントルプロジェクト(通称)」を推進し、長期海底地震観測技術を開発し、アセノスフェアの物性をその場観測した。地震波減衰特性という岩石の柔らかさの指標に着目し、独自の地震波伝播シミュレーション手法を駆使して、海洋リソスフェア・アセノスフェアの柔らかさの精密比較に成功した。この計測技術を通じ、室内岩石実験データと地球観測データを直接比較できるようになったため、アセノスフェアを診る新たな手段を獲得したと言える。今後の研究を通じ、岩石が柔らかくなる原因や条件の詳細が室内実験から解明されれば、アセノスフェアの柔らかさの原因が特定できる可能性がある。
詳しい成果解説は
http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/people/takeuchi/science/
を参照ください。
地震研究所は、2017年12月に開催されたAGU2017(米国地球物理学連合)Fall Meeting においてブース展示をしました。地震研でされている研究の紹介や、国際室の招聘制度への応募呼びかけ、また、国際室の室長による個別相談会もブースにて開催されました。今年はAGUが主催するキャリアセンターのレセプションへも参加し、若い研究者達と直接話す機会の多い展示となりました。
ブースを訪れてくださった皆さま、どうもありがとうございました。
ERI had a booth at the exhibition hall in AGU2017. Our recent researches and people were introduced as well as call for entry to our International Visiting Program was done.
ニュースレターPLUS27号特集:「2016年熊本地震の本震前に前震域が拡大」が、刊行されました。
海洋アセノスフェアの「柔らかさ」のその場観測〜アセノスフェアを観測する新たな手段〜
竹内 希 (東京大学地震研究所 准教授)
川勝 均 (東京大学地震研究所 教授)
塩原 肇 (東京大学地震研究所 教授)
一瀬 建日(東京大学地震研究所 助教)
杉岡 裕子(神戸大学理学研究科 准教授)
伊藤 亜妃(海洋研究開発機構地球深部ダイナミクス研究分野 技術研究員)
歌田 久司(東京大学地震研究所 教授)
●独自開発した計測技術を駆使し,海洋リソスフェア及びアセノスフェアの柔らかさの指標である,地震波減衰特性の精密特性を実現した.
●リソスフェアは減衰が弱く,アセノスフェアは減衰が強いことに加え,地震波の周波数により減衰の強さがどう変わるか初めて解明した.
●岩石実験の結果との対比により温度や状態を議論できるようになり,新たなアセノスフェアのモニタリング手段を獲得した.
詳細:プレスリリース資料 (PDF)
保科 琴代 (IceCube Collaboration)
Nature 551, 596–600 (2017) doi:10.1038/nature24459
https://www.nature.com/articles/nature24459
https://www.youtube.com/watch?v=OdWZA5UxmOk
ニュートリノは物質を構成する基本粒子のうち、レプトンに属し、質量は大変軽く(現在は上限値がわかっているのみ)、電荷を持たず、物質とは弱い相互作用でのみ反応するという特殊な粒子です。弱い相互作用では、物質中で反応が起きると、一部はそのニュートリノと対になる荷電レプトン(電子、ミューオンなど)に変化した上で、物質に全てのエネルギーを吸収されて消滅します。残りのニュートリノは、エネルギーの一部を反応地点に落としたあと、さらに先に進んでいきます。
ニュートリノの反応断面積の理論値は、ニュートリノのエネルギーが増加するにつれ増加しますが、実験的な測定は歴史的に人工的に加速器によって生成できるエネルギーによって制限され、これまで400GeV(ギガ・エレクトロンボルト)が上限でした。本研究では、大気中で宇宙線と空気分子の衝突によって生成される大気ニュートリノおよび宇宙から飛来する宇宙ニュートリノが、地球によってどのように吸収されるかを調べることで、数十TeV〜数百TeVのニュートリノの反応断面積を測定することに世界で初めて成功しました。また、本研究で初めて、高エネルギーニュートリノの地球による吸収現象が観測されました。
ニュートリノの反応断面積を調べるには、地球の物質量が、ニュートリノが通過する経路に従って異なることを用います。同じエネルギーのニュートリノでも、全物質量が大きい経路(Zenith angle 180 deg)を経由したものと、全物質量が小さい経路を経由したもの(たとえばZenith angle 100 deg)では、ニュートリノが生き残る数が異なります(図b)。この吸収分布を、地球の質量分布とさまざまなニュートリノの反応断面積を仮定してシミュレーションします。最後に、これらのシミュレーションとデータと比較することで、もっともデータをよく説明する反応断面積を得ます。
本研究では、2010年にIceCubeニュートリノ観測施設で収集された10784例のニュートリノ事象を用いました。これらをシミュレーションと比較した結果、標準理論が予測する反応断面積に対するスケールパラメターとして、1.30+0.21-0.19 (統計誤差) +0.39-0.43 (系統誤差) の値を得ました。いくつかの標準理論を超えた反応断面積モデルでは、エネルギーが高くなるにつれ反応断面積が非線形に大きくなることが予測されていますが、それを強くサポートするような増加傾向は見られませんでした。
IceCubeでは現在7年分のデータがあり、さらに測定精度を上げた観測が進んでいます。また、本研究により、すくなくとも数百TeV領域までのニュートリノの反応断面積は誤差の範囲内で標準理論で説明できることがわかりました。この結果をふまえ、標準理論による反応断面積を既知のものとして、逆に地球の内部密度構造を測定する研究が進行中です。いずれの研究も、IceCubeの将来計画であるIceCube Gen2、KM3-Net計画のPhase 2.0などでニュートリノ事象の観測統計数を上げることにより、さらなる発展が期待されています。
Masanao Shinohara1 , Mie Ichihara1, Shin’ichi Sakai1, Tomoaki Yamada1, Minoru Takeo1, Hiroko Sugioka2,
Yutaka Nagaoka3, Akimichi Takagi3, Taisei Morishita4, Tomozo Ono4 and Azusa Nishizawa4
1 Earthquake Research Institute, The University of Tokyo. 2 Department of Planetology, Graduate School of Science, Kobe University. 3 Meteorological Research Institute, Japan Meteorological Agency. 4 Hydrographic and Oceanographic Department, Japan Coast Guard.
Earth Planets Space 69:159, DOI;10.1186/s40623-017-0747-7 , 2017.
伊豆小笠原島弧に位置する西之島は2013年11月に噴火活動を開始し島の面積が拡大した。火山の形成過程の研究には連続したモニタリング観測が重要であるが、このような遠方の無人島では連続観測の実施は難しい。そのため、我々は2015年2月から西之島近傍において長期観測型海底地震計(LT-OBS)を用いた観測を開始した。使用したLT-OBSは1年程度連続観測が可能であり、回収・再設置を繰り返すことにより連続観測を実施した。LT-OBSは西之島火山火口から13km以内に設置した。噴火が発生している期間では特徴的な波形をもつイベントが多数記録されていた。西之島近傍の観測船上におけるビデオカメラと空振計の記録と比較したところ、この特徴的なイベントは火口からの噴煙上昇と関係していることがわかった。火山活動を把握するためにSTA/LTA法によるイベント検出を行った。その結果、2015年2月から7月にかけては1日あたり1800個程度のイベントが発生していることがわかった。イベント数は同年7月から減少を始め、11月には1日あたり100個以下となった。表面活動の観察では噴火活動は11月に停止したと推定されている。特徴的なイベントは、2017年4月中旬に再び発生し始め同年5月下旬には1日あたり約1400個に達した。このように、海底地震計を用いた海底地震観測は島嶼火山活動の連続モニタリングに有益であることがわかった。
篠原雅尚教授が、海洋調査技術学会より岩宮賞を受賞しました。
11月6日に行われた海洋調査技術学会総会にて、表彰がされました。
*岩宮賞について
(目的)第1条 本規定は、本会の活動に貢献した者及び海洋の調査とそれに必要な技術開発の進歩、普及に貢献した者で、その功績顕著な者を表彰することによって、本会業務の向上を図ることを目的とする。(海洋調査技術学会HP岩宮賞表彰規定より引用)