トンネル内のシャンデリア 【-45℃のトンネル】 南極点基地の雪面の下には,長さ600mを超える観測用トンネルがあります.トンネルといっても延々と雪を掘り進めたもので,今回特別に案内してもらいました.トンネル奥の気温は…,なんと-45℃!支給されているExtreme Cold Weather gearと呼ばれる防寒具で完全装備していても,1時間もすると手足の指先から感覚がなくなっていきます.デジタルカメラも,低温のせいで途中から動かなくなってしまいました.そんな極低温の世界だからこそ,天井には空気中の水分が凍って出来た巨大な結晶がびっしり.まるで天然のシャンデリアのようです.
青い空と白い雪面 南極大陸は,日本のような色彩豊かな所ではありません. 基本的に青い空と白い雪面の2色だけです. 天気が悪くなると,全てが真っ白になるいわゆる「ホワイトアウト」になります. 沿岸部や山脈の一部には露出している岩があり, また海氷域にはアザラシやペンギンなどが生息していますが, 内陸部には動植物はおろか風邪のウイルスさえいません.
広大な雪原 南極の内陸部は一部を除いて,起伏の少ない広大な雪原が広がっています. 飛行機の窓から見ても,どこまでも平らな雪原が続きます. 写真下の黒い筋は,飛行機雲の影です. 少しは大きさが分かってもらえるでしょうか.
ツイン・オッターの機内 乗員・乗客21人乗りの小さな機体は,座席を取り外して観測資材でいっぱい. 与圧の無い機内は時に地上の半分の気圧になります. しかも資材が-30℃に冷え切っているので, いくらヒーターを効かせてもちっとも暖かくなりません. おまけに隙間風がピューピュー. 我々は最後部の座席に座って, 息も凍る機内が暖まってくるまでの30分~1時間じっと耐えます.
最果ての給油所 キャンプ地の滑走路脇には航空燃料のタンクがあります. タンクといってもプラスティックシートで出来た袋で,ピロータンクと呼ばれます. 写真では空になって潰れています. ある日,その傍らにはこんな看板(手前と奥)が立てられました. もちろん”Cash Only!”は冗談ですが,それ以外は本当です.
半鐘 南極は寒いだけではなく、とても乾燥しています。外の空気を常温まで暖めると湿度は10%を下回ります。そのため、何よりも火災が一番恐ろしい事態です。20人程の小さなキャンプでも火災(緊急事態)を報せる半鐘が2箇所にあり,これが鳴らされると全員が食堂に集合する決まりです。
ツイン・オッター キャンプと観測点の間はツイン・オッターで往復します.”ツイン・オッター”とはDe Havilland DHC-6の愛称です.Boeing 737-500を”スーパー・ドルフィン”と呼ぶのと同じです. ちょっとOtter(川獺)に似てるかな? キャンプから観測点までは片道で100~1000kmもあるので,雪上車ではとても28点もの観測点を回りきれません. これも南極の広大さを感じさせる事柄の1つです
雪下の貯蔵庫 20名もの人間が数週間生活するには,それなりの食糧が必要です.普通ならば大型の冷蔵・冷凍庫を用意するところですが,ここ南極ではそんなもの要りません.ここは,雪を溝状に掘り下げて作った天然の冷凍庫.深さ2.5m,長さ10mで室温は-40℃.両側に木製の棚があり,いろんな食材が並んでいます.調理担当のJake(写真の人物)とKathyが,毎食の用意のためここに来ます.まるで彼らの秘密基地みたいです.
ハロー(日暈) これはレンズのせいじゃありません. 「ハロー」という現象です. 空気中を氷の結晶が一様に流れていく事によって現れます. このように太陽の周りに円を描くように現れるのを「ハロー」, 太陽の上下や左右に強く現れるのを「パーヘリオン(幻日)」, 太陽の上下に光が連なるのを「サンピラー(太陽柱)」と言います. オーロラの見えない白夜の季節にも,南極の空は私たちを楽しませてくれます