武村俊介1・小原一成1・汐見勝彦2・馬場慧1
Takemura, S.1, Obara, K.1, Shiomi, K.2, and Baba, S.1 (2022).
Journal of Geophysical Research: Solid Earth, 127 (3), e2021JB023073, doi:10.1029/2021JB023073
1東京大学地震研究所, 2防災科学技術研究所
本研究では紀伊半島南東沖で発生する浅部超低周波地震(通常の地震と比べてゆっくりとしたすべり現象“スロー地震”の1種)に着目し、Takemura et al. (2019) (解説記事:https://www.eri.u-tokyo.ac.jp/research/10595/)の結果を、震央位置決定とすべり過程(震源時間関数)推定の2点について刷新することで、紀伊半島南東沖における浅部スロー地震の詳細な発生様式を明らかにした。
図1aに2004年4月から2021年3月にかけて発生した浅部超低周波地震による地震モーメントの積算値(積算モーメント)の空間分布を示す。紀伊半島南東沖では、沈み込んだ古銭洲海嶺の西端でモーメント解放が特に大きく、浅部超低周波地震が活発であることがわかる(図1aの色の濃い領域)。海底地震計を用いた研究でも、古銭洲海嶺と浅部スロー地震の関係が指摘されていたが、本研究によりその関係が長期間にわたることが示された。
浅部超低周波地震活動の時空間特性は多様である。図1bに解析期間中に確認された浅部超低周波地震活動(以下、エピソードと記す)の活動域を示す。2004年9月、2009年3月および2020年12月に開始した規模の大きなエピソードの活動域は、図1aで示した浅部超低周波地震活発域全体にわたる。一方で、小規模なエピソードでは活発域の一部のみで発生し、活動は多様である。このような活動の多様性は、巨大地震発生域に隣接した浅部プレート境界のせん断応力あるいは流体の時空間変化に対応していると考えられ、今後も継続的なスロー地震モニタリングが必要である。
詳細は、https://doi.org/10.1029/2021JB023073 を御覧ください。また、本研究で検知した浅部超低周波地震とその震源時間関数カタログは、 https://doi.org/10.5281/zenodo.5211090 より取得可能です。