金曜日セミナー(2024年7月12日)伊東 優治(地震予知研究センター)

題目:沈み込み帯の地震サイクルに伴う広帯域地殻変動

 

要旨:

沈み込み帯においては、沈み込むプレートと上盤プレートの境界で、大小様々な地震やスロー地震が多数発生している。これらに伴う断層すべりは数秒から数年と幅広い時間帯域に亘る。また、数十年から数百年に亘る大地震間にはプレート境界は固着しており、将来の地震発生に向けた歪みを蓄積する。これらのプレート間相互作用に伴う応力変化により、短期的には弾性変形が、長期的にはマントルで粘弾性を含む非弾性変形が生じる。このように、沈み込み帯のプレート境界断層では様々な時空間スケールでの変形プロセスが生じている。発表者は、測地データ等を基にこのような様々な時空間スケールでの地殻変動を解析し、変形の素である断層運動過程や、地殻やマントルの変形特性の理解を目指してきた。本発表では、それらの研究の中から、2014年Iquique地震後の数日間の余効変動に関する研究と、千島海溝南部における地震間固着の分布と地震間の媒質応答に関する研究を紹介する予定である。