西田 究 准教授 井上学術賞を受賞

西田 究 准教授 が、第36回(2019年度)井上学術賞を受賞しました。

井上学術賞は、自然科学の基礎的研究で特に顕著な業績を挙げた50歳未満の研究者に対して贈られるものです。2020年1月4日に授賞式が開催され、(公社)井上科学振興財団理事長より第36回井上学術賞が贈呈されました。

対象研究:常時地球自由振動現象の研究
推薦者:日本地震学会

受賞理由:お寺の大きな鐘はゴーンと響き、軒先の小さな風鈴はチリンと鳴る。
けっしてその逆はない。当たり前のように思うが、不思議といえば不思議である。これは、物体にはそれぞれの大きさや材質できまる「固有の」振動数があり、叩かれるとその定まった振動数で振動するからだ。一個の物体としての地球も例外ではなく、大地震が起こると様々な音色、すなわち固有の振動数で、地球全体が振動する。これが地球自由振動と呼ばれる現象で、近代地震学史上最大の1960 年チリ地震(M9.5)の際、発見された。それ以降、地球自由振動の観測に基づく地球内部構造の研究が盛んになる一方で、地震以外の現象が自由振動を励起する可能性は顧みられなくなった。この常識を覆すきっかけを作ったのが西田究氏らの研究で、「地球の大気擾乱は、観測可能なレベルの自由振動を引起こしている筈」との理論的見積りに基づき、地震のない時でも地球が常時自由振動していることを発見した。西田氏はこの問題を発展させて、固体地球全体と大気・海洋系全体が相互作用を及ぼす1 つのシステムとしてみなせることを示してきた。海洋内の波が海底地形にぶつかると、常に微弱な固有振動を励起することを示し、さらに、固体地球の振動が大気音波と共鳴していることも明らかにした。これらの研究は、固体と大気・海洋との間には力学的な相互作用はないとする従来の見解からの、コペルニクス的転回をもたらした。さらにその応用として、地震波干渉法による地球内部構造推定を「グローバル・上部マントル」にまで拡大した功績は大きい。この手法によって、砂嵐の吹き荒れる火星や、表面気圧が地球の90 倍もある金星の内部構造解明が期待されるなど、将来への発展性も大いに評価できる。
以上述べたように、現象の詳細解明、励起源の探求、関連振動現象の発見、地球内部構造研究への応用など、大気・海洋・固体地球系地震学とも言うべき新たな分野を開拓した業績に対し、井上学術賞を授賞することとした。