原田智也 (執筆当時地震研特任助教)、佐竹健治 教授、古村孝志 教授、室谷 智子外来研究員の論文が、2019年度日本地震工学会 論文賞を受賞しました。
対象業績:1945 年三河地震(M6.8)の震度分布:発生直後
に行われたアンケート調査資料の再検討
■受賞理由
本論文は、1945年三河地震(M6.8)直後に東京大学地震研究所が実施したアンケート調査の貴重な元資料である調査票を再調査し、河角震度階級によりそれらを整理したものである。津村(2010)により発見されたアンケート票174枚のうち、震度が評価できない25回答を除いた調査票149枚を用い、既往のデータ整理や評価法に基づく丁寧な分析がなされている。中央気象台(1952)は、122点の旧震度階による震度を報告しているが、震源のある愛知県では震度IVが1点報告されているのみで、また、周辺の静岡県、三重県、滋賀県でも数地点の震度が明らかになっているのみで、震源域近傍や震源域と比較的近い地域における震度分布の特徴は不明であった。本論文では、アンケート調査票の分析の結果、震源近傍域(愛知県形原町・幡豆町)の震度、名古屋市とその北西部といった濃尾平野の震度の分布を明らかにしている。これに加えて、断層の特性や周期特性等も併せて考察しており、三河地震に関する様々な事象を知る意味でも価値の高い資料であると言える。分析結果の信頼性は高く、また相対的な震度の大小が明らかにされたことは当該地域の地震想定等に対する有用性も有していると言える。以上要するに、本論文は、信頼性・有用性の面で極めて高い水準にあると評価されることから、本会論文賞に相応しいものと判断した。