岩森 光 教授 が、日本地質学会小藤文次郎賞を受賞しました。
受賞者氏名:岩森 光
受賞名:日本地質学会小藤文次郎賞[重要な発見または独創的 な発想を含む論文を発表した会員に授与]
授与機関:日本地質学会
受賞日:2025年6月7日
対象論文:Iwamori, H., Ueki, K., Hoshide, T., Sakuma, H., Ichiki, M.,
Watanabe, T., Nakamura, M., Nakamura, H., Nishizawa, T., Nakao, A., Ogawa, Y., Kuwatani, T.,
Nagata, K., Okada, T., Takahashi, E. (2021) Simultaneous analysis of seismic velocity and
electrical conductivity in the crust and the uppermost mantle: a forward model and inversion
test based on grid search. Journal of Geophysical Research: Solid Earth, 126, e2021JB022307
(2021年に東京大学プレスリリース発表を行った論文)
受賞理由:
地球内部の水溶液やマグマは,地震,火山活動,地殻変動や地球全体の進化に重要な役割を担うと考え
られているにもかかわらず,従来の解析方法(例えば,地震波速度あるいは電気伝導度のみの解析)では,これらの地球内部に存在する液相がどこにどれだけ存在するか,定性的にイメージングすることが難しかった.特に,地震や火山活動の主な場である深さ 60 km 程度までの領域は,岩石の種類が極めて多様であり,正確な理解のためには岩石と液相を同時に推定することが必要であった.岩森 光会員を中心とした研究グループは,地震波速度構造と電気伝導度構造を統合的に解析し,地殻と最上部マントルを構成する岩石に加えて,液相の種類,液相の量・アスペクト比・連結度を同時に推定し,地球内部の水溶液やマグマを定量的にとらえる手法を初めて開発した.その成果をまとめた本論文では,さまざまな組成の岩石,マグマ,水溶液についての実験的データと理論に基づき,それらの混合物性(地震波速度と電気伝導度)を予測する数値モデルを発表した.さらに,この数値モデルを用いて,観測される地震波速度と電気伝導度から,岩石と液相の種類と量比などが求められることを示した.このような推定手法は国際的にも例がなく,今後本手法を実際の観測データに応用することにより,地殻とマントル最上部の構造イメージングが飛躍的に進むことが予想される.加えて,本研究による解析の高解像度化は,地震・火山活動の機構や地球進化の理解に資することが期待され,我が国に与えるインパクトは非常に大きい.
以上のことから,極めて独創的な発想を有している研究を主導した,本論文の筆頭著者である岩森 光
会員は日本地質学会小藤文次郎賞に相応しいものと評価される.