海底地震観測による南海トラフ最西端域の浅部プレート境界付近の地震活動

胡靚妤 1,2 ・篠原雅尚 1 ・山下裕亮 3 ・利根川貴志 4 ・山田知朗 1 ・悪原岳 1 ・望月公広 1
1 東京大学地震研究所、 2 東京大学大学院理学系研究科、 3 京都大学防災研究所、 4 海洋研究開発機構

Earth, Planets and Space, 76(1), 168. https://doi.org/10.1186/s40623-024-02122-4

Seismic activity around shallow plate boundary near westernmost Nankai
Trough revealed by ocean bottom seismometer observation


Ching-Yu Hu 1,2 , Masanao Shinohara 1 , Yusuke Yamashita 3 , Takashi Tonegawa 4 , Tomoaki Yamada 1 ,Takeshi Akuhara 1 , Kimihiro Mochizuki 1

 
 南海トラフ最西端域である日向灘において、浅部プレート境界付近の正確な地震活動を把握するために、2015~2016年、2017~2018年、および2022年に実施された海底地震計による地震観測のデータを用いて、震源決定を行いました。海底地震記録からP波S波の到着時刻を読み取った後、まず一元速度構造による震源決定により、暫定震源位置を求めて、その結果によりダブルディファレンス法を用いて、正確な震源位置を決定しました。さらに、初動極性から発震機構解を求めました。

 本研究の震源決定結果と過去に求められている速度構造を比較した結果、南海トラフ最西端域の浅部プレート境界付近で発生する地震のほとんどは、沈み込むフィリピン海プレート内で発生していることが明らかとなりました。2017年12月および2018年1月のそれぞれ数日間に、6 km × 12 km程度の狭い領域において多数の地震が発生する群発活動が確認されました。群発地震活動を除く定常的に発生している地震の発震機構解は、主に正断層型となっています(図中央)が、群発地震活動では、逆断層型や横ずれ断層型も多く発生していたことがわかりました(図右)。日向灘では浅部スロー地震活動が活発です。通常の地震の群発活動域とスロー地震の一つである超低周波地震(VLFE)の活動域は、平面的な位置は重なっていました(図左)。さらに、活動時系列を調べたところ、通常の地震の群発活動は、VLFEの活動より半日程度遅れて発生することもわかりました。これらの結果は、日向灘の浅部プレート境界付近におけるテクトニクスを考察する上で、重要な情報です。

左:本研究により求められた通常の地震とスロー地震の分布の比較。本研究によるで震源を丸で示しており、色は震源の深さを表します。黒十字は低周波微動の震央位置、橙色の星は超低周波地震の震央位置を示しています。。中央および右:本研究で求められた発震機構解の三角ダイアグラム。それぞれの頂点が純粋な逆断層型、正断層型、横ずれ型を示す。また、震源球の赤色、青色、緑色はそれぞれ逆断層型、正断層型、横ずれ型を示している。群発活動以外の通常の活動(中央)と群発活動(右)を分けて、表示してい

Friday Seminar (14 March 2025) Pablo D. Minini (University of Buenos Aires)

Title: Expect the Unexpected: turbulence in Earth and planetary sciences

 

Abstract:
Small transient stress perturbations are prone to trigger earthquakes and a better understanding of the dynamics of earthquake triggering by transient stress perturbations is essential in order to improve our understanding of earthquake Turbulence is often viewed as a complex, small-scale process, that enhances mixing and dissipation in geophysical flows. From this perspective, it is frequently overlooked in studies of large-scale dynamics, and treated instead as a secondary effect that modifies model parameters—often through enhanced diffusion coefficients. However, in recent decades, a growing body of research has uncovered surprising ways in which turbulence actively shapes large-scale patterns, influences geophysical dynamics, and alters the timescales of critical processes. In this talk, I will explore these unexpected roles of turbulence, drawing from recent findings from different research groups as well as from our own studies using theory, numerical simulations, and laboratory experiments. I will discuss examples such as the emergence of large-scale structures in atmospheric flows, the turbulence-driven enhancement of particle collisions in multiphase systems, and its implications for electrification in volcanic plumes. These cases highlight the need to move beyond the classical view of turbulence as homogeneous and isotropic, instead considering its behavior in geophysical and planetary settings where diverse forces shape its effects.

第28回サイエンスカフェ(ハイブリッド)開催報告

サイエンスカフェを地震・火山噴火予知研究協議会と広報アウトリーチ室の共同で、2025年2月27日にハイブリッドで開催いたしました。

28回目となる今回は、「地震の即時評価と防災情報」というテーマで開催し、林元直樹 准教授(東京大学地震研究所)・太田雄策 教授(東北大学)を迎え加藤尚之教授の司会のもと、地震即時評価手法の現状や、防災情報高度化の可能性について紹介がされました。


<地震・火山噴火予測研究のサイエンスカフェ >
地震や火山噴火に関する研究の成果は、予測の基礎となることが期待されています。これまでの研究から、地震や火山噴火のメカニズムへの理解は深まってきました。また、今後発生する可能性のある地震や火山噴火を指摘することもある程度はできます。しかし、規模や発生時期についての精度の高い予測はまだ研究の途上です。このサイエンスカフェでは、地震・火山噴火の予測研究の現状について研究者と意見交換を行い、研究者・参加者双方の理解を深めることを目的とします。

開催報告:懇談の場「災害後経済の高性能シミュレーションを開発」

地震研究所と参加者とのコミュニケーション促進の場である「懇談の場」が2025年2月26日にハイブリッドで開催されました。
『災害後経済の高性能シミュレーシ ョンを開発』について、マッデゲダラ・ラリス准教授によるお話でした。通訳は藤田航平准教授がされました。

武村俊介助教・三反畑修助教らの論文がAGU Editor’s Highlightを受賞

武村俊介助教・三反畑修助教らの論文が、AGU Editor’s Highlightを受賞しました。

受賞名:Editor’s Highlight
授与機関:American Geophysical Union
論文発行日:2024年10月17日
著者:武村俊介・久保田達矢(防災科研)・三反畑修
受賞論文:Takemura, S., Kubota, T., & Sandanbata, O. (2024). Successive tsunamigenic events near Sofu Seamount inferred from high-frequency teleseismic P and regional T waves. Journal of Geophysical Research: Solid Earth, 129, e2024JB029746. https://doi.org/10.1029/2024JB029746
関連リンク:https://eos.org/editor-highlights/t-waves-may-improve-tsunami-early-warning-systems

Dieno Diba(博士3年)がJpGU2024年大会学生優秀発表賞受賞

Dieno Diba(博士3年)が、JpGU2024年大会学生優秀発表賞を受賞しました。

受賞者:Dieno Diba(博士3年)
受賞日:2024年7月12日
受賞名:JpGU2024年大会学生優秀発表賞
受賞発表タイトル:Structurally constrained magnetotelluric inversion using a modified
regularization constraint: An alternative to the cross-gradient
JpGU2024HP:https://www.jpgu.org/ospa/2024meeting/#sectionS

Han SONG特別研究生がJpGU2024年大会学生優秀発表賞受賞

Han SONG特別研究生が、JpGU2024年大会学生優秀発表賞を受賞しました。


受賞者:Han SONG(特別研究生)
受賞日:2024年7月12日
受賞名:JpGU2024年大会学生優秀発表賞
受賞発表タイトル:3-D joint inversion framework with hybrid structural and petrophysical couplings
JpGU2024HP:https://www.jpgu.org/ospa/2024meeting/#sectionS

2024年日向灘地震とその余効すべりの過程に沈み込んだ海山が与えた影響について

伊東優治(東京大学地震研究所)
Coseismic Slip and Early Afterslip of the 2024 Hyuganada Earthquake Modulated by a Subducted Seamount
Yuji Itoh (ERI, UTokyo)
Geophysical Research Letters, 52, e2024GL112826.
https://doi.org/10.1029/2024GL112826

 
 2024年日向灘地震(M 7.1)は日向灘の沖合のプレート境界断層で発生した。日向灘の複雑なプレート境界断層の形状は、フィリピン海プレートともに海底の地形の起伏である九州・パラオ海嶺が沈み込むため、複雑である(図1)。海嶺や海山の沈み込みによりプレート境界断層における断層すべり過程が複雑化することが理論的な考察などから指摘されてきた。本論文では、GNSSにより観測された地殻変動データから2024年日向灘地震の本震時のすべりと、余効すべり(地震後に継続するゆっくりとしたすべり)の分布を推定し、沈み込んだ九州・パラオ海嶺が本震のすべりと、余効すべりへ与えた影響を議論した。


 推定された本震時のすべりと余効すべり、沈み込んだ海山の分布の関係を図2に示す。本震のすべりは、磁気異常から推定される海山の位置よりも深部側に位置した。沈み込んだ海山はその深部側の断層にかかる圧縮応力を強め、地震が起こりやすい条件を作り出す。今回の地震はそのような条件下で生じたと考えられる。一方で、海山そのものは地震による断層すべりの進展を止めるとされるため、この海山が今回の本震の浅部への断層すべりの進展を停止させたと考えられる。余効すべりは本震すべりの浅部側と、宮崎県の南東端の沖合に見られ、浅部側の余効すべりは海山と部分的に重なっていた。また、海山の浅部側の余震クラスターの活動開始時刻が、他のクラスターと比べて遅れていることがわかった。このことは、余効すべり域の広がる速度が海山を通過する際に低下することを示唆し、沈み込んだ海山がその直上から深部側にかけて局所的に法線応力を増加させる(プレート境界断層を締める)ことと調和的である。また、宮崎県の南東端の沖合に、本震時のすべりも余効すべりも顕著に見えない領域が存在することがわかった。この領域は長期的に安定してすべり続ける傾向があり、今回の地震がその領域のすべり速度に顕著な影響を与えなかった可能性が示された。そのような断層の振る舞いを説明するには、隣接領域と大きく異なる摩擦パラメタを導入する必要がある。


 以上の考察から、2024年日向灘地震(M 7.1)の本震時のすべりと余効すべりの推定結果は、日向灘の断層の力学的な特性やそのパラメタが空間的に非常に不均質であることを示唆しており、それは九州・パラオ海嶺が沈み込んでいることと調和的である。

図1: (a) RTP磁気異常(Arai et al., 2023、Okino, 2015)。暖色の濃い部分が沈み込んだ海山の位置を表すと考えられる。灰色の閉曲線は過去の大きな地震の主要なすべり域を表す(Yagi et al., 1998, 1999)。1996年の地震は10月(Mw 6.8、右)と12月(Mw 6.7、左)の2回起きた。紫色の閉曲線は1996年の地震で生じた主要な余効すべり域を表す(Yagi et al., 2001)。緑色の曲線はプレート境界付近の地震波低速度域を描いており、沈み込んだ海山の存在範囲と解釈されている(Yamamoto et al., 2013)。(b)プレート境界の断層の長期的なすべり欠損速度を表す(Nishimura et al., 2018)。(c) 海底面の深さ。フィリピン海プレート上(白い曲線の右下側)の地形の高まりが沈み込む前の九州・パラオ海嶺を表す。茶色い点は使用したGNSS観測点の場所を示す。
図2: 本震時のすべりと余効すべりの推定結果。(a-b) 本震時のすべり(a、赤色の等値線)、余効すべり(b、青色の等値線)の分布、及び、それらの推定に使ったGNSSデータ(黒矢印)と推定されたすべり分布から予測される地殻変動(色付きの矢印)。

第1044回地震研究所談話会開催のお知らせ

下記のとおり地震研究所談話会を開催いたします。

対面での開催を再開しておりますので、地震研究所へお越しいただければ幸いです。

なお、お知らせするZoom URLの二次配布はご遠慮ください。また、著作権の問題が

ありますので、配信される映像・音声の録画、録音を固く禁じます。

                記

         日  時: 令和7年2月21日(金) 午後1時30分~

         場  所: 地震研究所1号館2階 セミナー室

               Zoom Webinarにて同時配信 

1. 13:30-13:45

演題:2024年日向灘地震とその余効すべりの過程に沈み込んだ海山が与えた影響

著者:○伊東優治

要旨:2024年日向灘地震の地震時すべりと余効すべりを解析し、沈み込んだ海山がそれらの過程に与えた影響を議論した(査読付き論文:https://doi.org/10.1029/2024GL112826

2. 13:45-14:00

演題:日光・足尾周辺の3次元電気比抵抗構造【2024年度所長裁量経費報告】

著者:○臼井嘉哉・上嶋 誠、坂中伸也(秋田大学)、山谷祐介(産業技術総合研究所)、小川康雄(東京科学大学, 東北大学)、市來雅啓(東北大学)、本蔵義守(東京工業大学)、黒木英州(気象庁)、北関東MT観測グループ

3. 14:00-14:15

演題:緊急海底地震観測による令和6年能登半島
地震東部震源域における精密余震活動

著者:○篠原雅尚、日野亮太(東北大)、高橋 努・尾鼻浩一郎・小平秀一(海洋機構)・東 龍介(東北大)、山田知朗・悪原 岳、山下裕亮(京大)、蔵下英司、村井芳夫(北大)、一瀬建日、中東和夫(東京海洋大)、馬場久紀(東海大)、太田雄策(東北大)、伊藤喜宏(京大)、八木原寛・仲谷幸浩(鹿大)、藤江 剛(海洋機構)、佐藤利典(千葉大)、塩原 肇・望月公廣・酒井慎一・白鳳丸KH-24-JE01およびKH-24-JE02C乗船研究者

○発表者

※時間は質問時間を含みます。

※既に継続参加をお申し出いただいている方は、当日zoom URLを自動送信いたします。

※談話会のお知らせが不要な方は下記までご連絡ください。

〒113-0032 東京都文京区弥生1-1-1 

東京大学地震研究所 共同利用担当

E-mail:k-kyodoriyo(at)eri.u-tokyo.ac.jp

※次回の談話会は令和7年3月21日(金) 午後1時30分~です。

東京大学地震研究所技術職員採用説明会のご案内

東京大学地震研究所技術部では、技術職員を新規採用予定です。
令和7年度末に学部または修士課程を卒業・修了予定の方や民間企業等に在職中の方で、地震研究所で技術職員として勤務することに興味がある方を対象に、オンライン説明会及び現地説明会を実施いたしますので、是非、ご参加ください。

◆オンライン説明会開催日時:内容はいずれも同じ
2025年3月 8日(土)①10:00~10:30 ②11:00~11:30 ③13:00~13:30 ④14:30~14:30オンライン開催
2025年4月12日(土)①10:00~10:30 ②11:00~11:30 ③13:00~13:30 ④14:30~14:30オンライン開催

◆現地説明会開催日程:2025年5月9日(金)14:00~16:00
 会場:東京大学地震研究所 東京都文京区弥生1-1-1地震研究所1号館
  特に服装の指定はございませんので、楽な服装でお越しください。
◆参加人数:特になし
◆参加資格:就職・転職を検討している方で、東京大学地震研究所の技術職について興味がある方。学部生の参加も歓迎します。
◆申込締切:3月8日開催:3月7日(金)17:00まで 4月12日開催:4月11日(金)17:00まで 5月開催:5月8日(木)17:00まで
◆開催概要:東京大学地震研究所技術部紹介及び公募概要や業務内容の説明、先輩技術職員との対話など。

◆申込登録:次のいずれかにより事前にお申込ください。

 (1) マイナビ(東京大学地震研究所の採用情報掲載ページ)からの申し込み
https://job.mynavi.jp/26/pc/search/corp270574/outline.html

 (2) 以下のFormsからの申し込み
  https://forms.office.com/r/rci4YqCQ8A


※説明会申込受付後、開催情報等をメールでお知らせします。

◆地震研究所技術部のページおよび技術職員からメッセージはこちら
URL: https://www.eri.u-tokyo.ac.jp/gijyutsubu/
URL: https://www.eri.u-tokyo.ac.jp/gijyutsubu/message/

◆リクルート情報の詳細はこちらのページをご覧下さい。 ※2025.3.1公開予定
東京大学地震研究所 https://www.eri.u-tokyo.ac.jp/recruitinfo/
マイナビ2026(東京大学地震研究所)https://job.mynavi.jp/26/pc/search/corp270574/outline.html

お問合せ:
東京大学地震研究所庶務チーム(人事担当)
電子メール:jinji%eri.u-tokyo.ac.jp(%を@に置き換えてください。)
電話:03-5841-5668