着任セミナー(2022年6月10日)内田直希(推進センター)

タイトル:繰り返し地震による地震発生メカニズム研究

要旨:
繰り返し地震は,断層上に存在する固着域(パッチ)に,周囲の非地震性すべり(スロースリップ)によりひずみが蓄積し,繰り返し破壊するというプロセスにより生じていると考えられる.このような,比較的単純な起こり方をする地震は,地震の繰り返しのメカニズムを調べる上で有用であるとともに,地震発生の裏に隠れていると考えられる非地震的なすべりの検出にも重要な役割を果たす.本発表では,観測データに基づく繰り返し地震の発生特性の解析および非地震生すべりの推定による地震発生メカニズム研究について紹介する.

【共同プレスリリース】2022年1月トンガ噴火に伴う地球規模の津波 ー火山噴火による津波研究の新展開ー

国立研究開発法人防災科学技術研究所(理事長:林春男)と東京大学地震研究所(所長:佐竹健治)は、2022年1月に発生した南太平洋トンガ諸島のフンガ・トンガ‐フンガ・ハアパイ火山の大規模噴火に伴って生じた津波の発生と伝播のメカニズムを明らかにし学術雑誌「Science」に公開しました。


詳細は国立研究開発法人防災科学技術研究所・報道発表をご覧ください。

第1014回地震研究所談話会開催のお知らせ

 下記のとおり地震研究所談話会を開催いたしますので、ご案内申し上げます。今回は、コロナウィルス感染対策として、地震研究所の会場での開催は行いません。WEB会議システムを利用した参加のみとなります。参加に必要な設定URL・PWDについては、参加をご希望される方宛に別途ご連絡をいたしますので、共同利用担当宛(k-kyodoriyo(@)eri.u-tokyo.ac.jp)お問い合わせください。
 なお、お知らせする設定URLの二次配布はご遠慮ください。また、著作権の問題がありますので、配信される映像、音声の録画、録音を固く禁じます。

日  時  令和4年5月20日(金)午後1時30分~ インターネット WEB会議

  1. 13:30-13:45
    演題:Two-layered oceanic lithosphere beneath the Japan Basin, the Sea of Japan
    著者:○Sanxi AI・Takeshi AKUHARA・Manabu MORISHIGE、Kazunori YOSHIZAWA(Hokkaido University)、Masanao SHINOHARA and Kazuo NAKAHIGASHI(Tokyo University of Marine Science and Technology)
  2. 13:45-14:00
    演題:Temperature-dependence of rate- and state-dependent friction with competing healing mechanisms【所長紹介(受入教員:福田淳一)】
    著者:○Sylvain Barbot (University of Southern California)
    要旨:We discuss how competing healing mechanisms at contact junction may affect the evolution of effective frictional properties with varying temperature.
  3. 14:00-14:15
    演題:Pn方位異方性により制約される海洋リソスフェアのオリビン選択配向様式【所長裁量経費成果報告】
    著者:○竹内 希・一瀬建日・川勝 均・塩原 肇、杉岡裕子(神戸大学)、歌田久司


○発表者
※時間は質問時間を含みます。
※談話会のお知らせが不要な方は下記までご連絡ください。

〒113-0032 東京都文京区弥生1-1-1 
東京大学地震研究所研究支援チーム
E-mail:k-kyodoriyo(@)eri.u-tokyo.ac.jp

※次回の談話会は令和4年6月17日(金)午後1時30分~です。

着任セミナー(2022年5月13日)森田雅明(火山センター)

タイトル:衛星を用いた火山ガス放出率観測手法の開発

要旨:
火山ガスの組成・放出率は,マグマ・熱水系の温度圧力環境やマグマ供給率など反映して変動する.したがって,これらのモニタリングは,噴火のメカニズム や噴火活動の継続期間など火山活動の把握と推移予測に重要である.この目的の もと,発表者はこれまで国内火山における火山ガス組成の連続観測やドローン・ 衛星などの先進的なシステムを用いた観測手法の開発を行なってきた.本発表で は,これらのうち,最近取り組んでいる衛星を用いた二酸化硫黄放出率の解析手 法の開発について紹介する.特に,福徳岡ノ場火山や西之島火山での最近の噴火 における解析結果を提示し,可視画像や熱観測などの他の衛星観測項目との比較 から,最近の火山活動についての検討結果を紹介する.また,既存の地物観測や 物質科学観測との連携なども含めた今後の展開について述べる.

【プレスリリース】世界初、多重ミュー粒子を用いたグローバル高精度時刻同期

東京大学国際ミュオグラフィ連携研究機構は高エネルギー1次宇宙線(注4)が生成するExtended Air Shower (以下高エネルギーEAS)(注5)に含まれる多重ミュー粒子の時空間構造並びにOven Controlled Crystal Oscillator(OCXO)(注6)の時間特性を分析することにより、空間的に離れた時計をワイヤレスかつ、100 nsを切る精度で時刻同期させることが可能であることを世界で初めて示した。このような多重ミュー粒子は地球上至るところで常時生成されているため、同時刻同期手法は世界中で実施可能である。また、高エネルギー1次宇宙線が生成するミュー粒子は、強い透過性を持つことから、屋内、地下、水中環境でも屋外とほぼ同等な高精度な時刻同期が世界中で可能となる。更に、高エネルギーEASに含まれる多重ミュー粒子の時空間構造は地球大気の密度分布が極端に大きく変化しない限り、大きくは変わらないので、ほぼ同精度の時刻同期精度を何百万年にも渡って実現することが期待できる。将来、本方式を広範囲に展開することにより、GPS/GNSSに頼らない高精度な時刻同期が可能となる。

第14回サイエンスカフェ(オンライン)開催報告

第14回サイエンスカフェを、 地震・火山噴火予知研究協議会と広報アウトリーチ室の共同で、2022年5月10日にオンラインで開催いたしました。

 
 14回目となる今回は、「内陸地震の長期予測手法」というテーマで開催し、話題提供者に 石山達也 准教授(東京大学地震研究所),西村卓也 准教授(京都 大学防災研究所)を迎え、加藤尚之 教授の司会のもと内陸地震の長期予測の現状と今後の発展などについて話題提供していただきました。

<地震・火山噴火予測研究のサイエンスカフェ >
地震や火山噴火に関する研究の成果は、予測の基礎となることが期待されています。これまでの研究から、地震や火山噴火のメカニズムへの理解は深まってきました。また、今後発生する可能性のある地震や火山噴火を指摘することもある程度はできます。しかし、規模や発生時期についての精度の高い予測はまだ研究の途上です。このサイエンスカフェでは、地震・火山噴火の予測研究の現状について研究者と意見交換を行い、研究者・参加者双方の理解を深めることを目的とします。

三陸沖海底ケーブルを用いた分散型音響センシング技術による海底地震観測

篠原雅尚1・山田知朗1・悪原岳1・望月公廣1・酒井慎一2,1

1東京大学地震研究所、2東東京大学情報学環

Front. Mar. Sci. 9:844506. doi: 10.3389/fmars.2022.844506

 
 光ファイバ自身をセンサーとして用いて歪みを計測する分散型音響センシング(DAS)は、近年様々な分野で用いられるようになってきており、地震観測にも適用されています。DAS計測では最も短い観測点間隔を数mにすることができて、計測できる総延長距離は50 km以上となっています。また、1秒間に数百回以上の早い時間間隔のデータ取得も可能です。このような性質をもつDAS計測は空間的に高密度の地震観測を実施可能であり、このDAS計測を海底ケーブル光ファイバに適用することにより、海底における観測量を爆発的に増加させることができます。東京大学地震研究所は、1996年に三陸沖に光ファイバをデータ伝送に利用した海底地震津波観測システムを設置しました。この海底地震津波観測システムは、データ伝送に用いる光ファイバの予備が備えられています。そこで2019月2月から、この海底観測システムの予備光ファイバを用いたDAS観測を行ってきました。その結果、マグニチュード1.8の微小地震を含む多くの地震がDAS計測システムにより観測されることがわかりました。マグニチュード3の地震についてはP波およびS波の到着が明瞭に記録されていました。さらに、2,300 km離れたマグニチュード6.6の地震も記録されていました。三陸沖海底地震津波観測システムは、従来の地震計を装備しており、DAS計測と通常の地震計の記録の比較が可能です。比較の結果、DAS計測の記録は従来の地震計の記録によい一致を示しました。DAS計測のノイズレベルも調査し、時間的な変動はほとんどないことを確認しました。また、DAS計測の特徴を生かすことにより、これまでよくわからなかった海岸付近から沖合に向けての詳細な地震学的な雑微動の空間変化を明らかにできました。2020年11月には、DAS計測と制御震源を用いた構造探査調査を行い、制御震源についてもDAS記録が従来の地震計記録とよく一致することを確認しました。ただし、DAS記録では制御震源からのP波の振幅が小さく記録されていました。これは、DAS計測が光ファイバと平行な歪みを計測しており、光ファイバを内有する海底ケーブルが海底に横たわっていることと関係があると考えられています。


図の説明
左:2019年2月のDAS計測による複数の地震の記録例。右:2019年2月(上)と2021年3月(下)に行ったDAS計測による海底の雑微動の空間的な変化。海岸から沖合に向けて、雑微動が大きく変化することがわかる。

第1013回地震研究所談話会開催のお知らせ

 下記のとおり地震研究所談話会を開催いたしますので、ご案内申し上げます。今回は、コロナウィルス感染対策として、地震研究所の会場での開催は行いません。WEB会議システムを利用した参加のみとなります。参加に必要な設定URL・PWDについては、参加をご希望される方宛に別途ご連絡をいたしますので、共同利用担当宛(k-kyodoriyo@eri.u-tokyo.ac.jp)お問い合わせください。
なお、お知らせする設定URLの二次配布はご遠慮ください。また、著作権の問題がありますので、配信される映像、音声の録画、録音を固く禁じます。

                  記
 

日  時  令和4年4月22日(金)午後1時30分~ インターネット WEB会議

  1. 13:30-13:45
    演題:「歴史地震の古文書及びその解読文」の可用性の向上
    著者:○加納靖之・鶴岡 弘・大邑潤三、中村亮一(中村地震調査技術士事務所)、石瀬素子
     
  2. 13:45-14:00
    演題:地磁気を使った石垣島及びトンガ王国の津波巨礫の移動履歴の解明【特任研究員成果報告】【所長紹介(受入教員:佐竹健治)】
    著者:○佐藤哲郎(早稲田大学)
    要旨: 石垣島及びトンガ王国に存在する過去の津波で移動した巨礫の再移動を含む移動年代について検討する。
     
  3. 14:00-14:15
    演題:時間間隔を基にした低周波地震の分類と2011年東北地方太平洋沖地震
    著者:○徳田智磯、島田悠彦(津山高専)
    要旨: 短い発生間隔をもつ低周波地震(東北地方)が2011年東北地方太平洋沖地震発生の1か月前に静穏化していたことがわかった。
     

○発表者
※時間は質問時間を含みます。
※談話会のお知らせが不要な方は下記までご連絡ください。

〒113-0032 東京都文京区弥生1-1-1 
東京大学地震研究所研究支援チーム
E-mail:k-kyodoriyo@eri.u-tokyo.ac.jp

※次回の談話会は令和4年5月20日(金)午後1時30分~です。

【共同プレスリリース】世界初、ミュオグラフィによる気象津波の観測

東京大学国際ミュオグラフィ連携研究機構は、同大学生産技術研究所、大気海洋研究所、大学院新領域創成科学研究科、および九州大学、日本電気株式会社、英国シェフィールド大学、英国ダラム大学、英国科学技術施設会議ボルビー地下実験施設、イタリア原子核物理学研究所、イタリアサレルノ大学、イタリアカターニャ大学、ハンガリーウィグナー物理学研究センター、チリアタカマ大学、フィンランドオウル大学Kerttu Saalasti研究所と共同で、世界初となる海底ミュオグラフィセンサーアレイ(HKMSDD:Hyper KiloMetric Submarine Deep Detector)の一部を東京湾アクアライン海底トンネル内部に設置し、この東京湾海底(Tokyo-Bay Seafloor)HKMSDD(TS-HKMSDD)を用いて、東京湾の連続ミュオグラフィ観測を進めている。この度、2021年台風16号通過に伴う、東京湾における気象津波の観測に世界で初めて成功した。