「100均でできちゃう地震波実験装置」をyoutube地震研チャンネルで公開

簡単に手に入る素材を使い、地震波を視覚的に見ることができる実験装置の作り方を、技術開発室のもの作りのプロ:浦野 技術職員 が考案。P波とS波の違いを理解するのにお役立てください。

この動画はJACST「臨時休校対応特別企画」にも参加しています。

武村俊介助教、古村孝志教授らの論文が日本地震学会論文賞の受賞決定

前田 拓人 元地震研助教(現弘前大学准教授)、武村 俊介 助教、古村 孝志 教授らの論文が、2019年度日本地震学会論文賞に受賞決定しました。

授賞論文
Takuto Maeda, Shunsuke Takemura, and Takashi Furumura (2017) OpenSWPC: an open-source integrated parallel simulation code for modeling seismic wave propagation in 3D heterogeneous viscoelastic media, Earth, Planets, and Space, 69:102, DOI 10.1186/s40623-017-0687-2.

日本地震学会賞授賞のページ
https://www.zisin.jp/awards/essay03.html

吉光奈奈特任助教が日本地震学会若手学術奨励賞の受賞決定

吉光 奈奈 特任助教の研究業績に対し、2019年度日本地震学会若手学術奨励賞が決定しました。

受賞対象研究: 地震発生環境の理解に向けた室内岩石実験から自然地震までの架け橋

日本地震学会若手学術奨励賞授賞のページ
https://www.zisin.jp/awards/young03.html

3次元地下構造の影響を考慮した南海トラフ沿いの地震の震源メカニズム推定

武村俊介1・奥脇亮2・久保田達矢3・汐見勝彦3・木村武志3・野田朱美3

S. Takemura1, R. Okuwaki2, T. Kubota3, K. Shiomi3, T. Kimura3 and A. Noda3 (2020). Geophysical Journal International, 222 (2), 1109-1121, doi:10.1093/gji/ggaa238

1東京大学地震研究所, 2筑波大学, 3防災科学技術研究所

地震が発生すると、国内外の地震計で記録された地震波形の長周期成分を用いたセントロイドモーメントテンソル(CMT)解析が行われ、地震発生後10-30分程度で、発生時刻、位置、規模とメカニズム解(断層面上のすべり方)が推定される。推定されたCMT解は、地震学の基礎情報としてだけでなく、震源断層の評価や津波発生予測などの災害対応においても非常に有用な情報となる。

多くのCMT解析は、計算の簡便さから深さ方向の地震波速度変化のみを考慮した1次元構造モデルを用いて行われるのが一般的である。しかし、海域で発生した地震の場合、海洋プレートや海洋堆積物などの海域特有の地下構造の影響で地震波の伝わり方が複雑になるため、1次元構造モデルでは正確なCMT解を得ることが難しい。海底地震観測網の記録を利用することで、より正確な解析も可能だが、観測期間が2011年以降に限られている。

そこで、本研究では3次元地下構造モデルを用いたスーパーコンピュータによる地震波伝播シミュレーションに基づいて、陸域に敷設された防災科学技術研究所のF-netの波形記録を用いた高精度なCMT解析(3次元CMT解析)を実施した。解析対象とした地震は、2004年4月〜2019年8月に南海トラフ周辺で発生した中規模地震である。

本研究による3次元CMT解析(図の上段)の結果と従来の1次元解析(F-netカタログ:図の下段)を比較したところ、特に海域で発生した地震において地震メカニズムと深さに大きな差が現れた(図)。近年の地震について海底地震計を用いた解析結果と比較したところ、本研究による3次元CMT解析が、従来の1次元解析結果と比べ精度良くメカニズムと深さが推定できることを確認した。

本研究の手法(陸域地震計+3次元CMT解析)により求められた、2004年4月以降の15年間におよぶ南海トラフ沿いの地震カタログは、今後、スロー地震や測地学的に推定したフィリピン海プレートのすべり遅れと比較を進めることで、南海トラフのすべり特性の解明に貢献するものと期待される。

なお、本研究で推定した3次元CMT解析で得られた地震カタログは https://doi.org/10.5281/zenodo.3674161 にて公開しています。

2000年三宅島噴火20年

三宅島2000年噴火は山頂部のカルデラ形成と大規模な火山ガス放出を伴う特異な噴火でした。

2000年6月26日に地震活動が始まり6月27日には西方に移動したマグマにより海底噴火が発生しました。その後、活動は一旦収まったかに見えましたが、7月8日に山頂陥没を伴う噴火が突然発生しました。山頂陥没は徐々に進行し、8月半ばには直径約1.5㎞深さ450mに達しました。

また、三宅島と神津島の間の海域ではマグマ貫入による大規模な群発地震が続きました。 山頂陥没の進行中は断続的に噴火が発生し、特に8月18日の噴火では噴煙高が14㎞に達しました。9月に入り1日当たり数万トンを超える有毒な火山ガス放出が始まり、約4000人の島民は島外での避難生活を余儀なくされました。 火山ガスの放出量が低下し避難指示が解除されたのは4年半後の2005年2月のことでした。

( 火山噴火予知研究センター長 大湊 隆雄 教授 )

三宅島雄山の中腹の村営牧場から見た噴煙と 噴石で壊れた施設の屋根(2000年8月)
三宅島雄山の中腹の村営牧場から見た噴煙と 噴石で壊れた施設の屋根(2000年8月 両写真撮影:古村 孝志 教授)

1960年チリ地震から60年

1960年5月22日(現地時間)にチリ南部で発生した地震は,20世紀最大の巨大地震とされています.この地震による津波は,まる一日かけて太平洋を横断し,日本に達しました.三陸沿岸では最大6mとなり,北海道から沖縄までの太平洋岸で計142名の死者・行方不明者が出ました.上の写真は5月24日(日本時間)早朝のチリ津波によって浸水した宮城県女川駅です(東大地震研究所発行のチリ津波合同調査班報告書から).過去半世紀の間に,地震・測地・津波など様々なデータを使って,この地震の規模(モーメントマグニチュードMw)が調べられてきました.一般にはMw=9.5とされていますが,用いるデータや研究者によって大きく異なり,最近の測地・地殻変動データを使った研究ではMw 9.3 程度とされています(図1)

( 地震火山情報センター  佐竹健治 教授)

図1 地震・測地・津波データによる1960年チリ地震の規模Mw(横軸)と,その研究の発表年(縦軸).