3成分入力波動場に基づく3次元非線形地盤応答解析法

Masahiro Iida

International Journal of Geomechanics, American Society of Civil Engineers, 16(1), Paper No. 04015026 (2016).

DOI: 10.1061/(ASCE)GM.1943-5622.0000482.

既存の地盤応答解析法は、地震波動を適切に考慮できていません。そのため、地震波動が複雑な軟弱地盤においては、さまざまな矛盾が生じてきます。そこで、深い地下構造内に適切な波動状態を実現した、非線形地盤応答解析法を開発しています。

すでに以前にそうした非線形地盤応答解析法を提案しましたが、現在の研究では、その解析法を改良しました。地震動は、水平2成分から3成分へと拡張しました。東京の様々な地盤に適用することで、解析法が適切に機能することを確認しました。図に示すように、液状化した地盤においても、解析法は適切に機能しています。使用された単純な地盤非線形モデルは、より高度なモデルに変更することが可能で、解析法は完成域に到達しました。

さらに、地盤に建物を組み入れれば、深い地下構造内に適切な波動状態を実現した、地盤と建物の相互作用解析を実施することができます。別の研究において、そうした相互作用解析を実施する方法を開発しています。現在の研究は、この視点においても、きわめて大きな意義があります。

関東地震において越中島観測点において液状化した場合の、有限要素法により評価された地盤のさまざまな深さでのせん断応力と歪の履歴曲線。

遠地地震によって誘発された深部低周波微動のマイグレーション

Ryo Kurihara, Kazushige Obara, Akiko Takeo, Takuto Maeda

Geophysical research letters, 45 , 3413-3419 (2018)

https://doi.org/10.1002/2017GL076779

西南日本のプレート沈み込み帯ではスロー地震と呼ばれる人の感じない地震が発生しています。スロー地震にはゆっくりとしたプレートの動きであるスロースリップ、2−8Hz程度の地震波を放出する深部低周波微動などの種類があります。本研究ではこのうち深部低周波微動に注目しました。

この深部低周波微動はスロースリップと対応して発生することがよく知られています。例えば、四国西部では約6ヶ月周期で深部低周波微動がスロースリップを伴って発生し、微動活動が数日間継続します。さらに、数日間継続する活動の中で微動の発生位置が約1日10km程度の速さで動いていることが知られています。一方で、遠地で地震が発生した際に伝播してくる表面波によって誘発されて、この周期的な活動とは異なった深部低周波微動が起こることが知られていました。本論文では、紀伊北部と四国西部において、この遠地の地震によって誘発される深部低周波微動がどの程度の頻度で発生しているのか、またこのような誘発された深部低周波微動の活動では微動の発生位置に動きがあるのかということを調べました。

本論文では、マッチドフィルタ法と呼ばれる過去に観測された地震と同様の地震波を持つ現象を地震計での観測記録から探し出す方法を用いて、遠地地震の表面波が到来した時間に注目して深部低周波微動の検出を行いました。遠地地震は2004年から2016年に発生したマグニチュード7.5以上の四国から震源が1500km以上離れたすべての地震(71個)を対象としました。

その結果、紀伊半島北部では9回、四国西部では16回の誘発微動を確認しました。また、遠地地震によって誘発された微動についても同じ場所での活動が継続しているわけではなく、時間的に徐々に動いていることがあるということがわかりました。その速さは時速10-100 kmと、周期的な活動の中で見られる通常の微動発生位置の移動に比べ、かなり速く、周期的な活動中でも微動活動が活発化した後に見られる局所的な移動と同程度の速度であることがわかりました。通常、このような微動の発生位置の移動はスロースリップの発生している場所が徐々に移動することに対応していると考えられていることから、この結果は遠地地震に誘発された深部低周波微動が観測することのできない小さなスロースリップを伴って発生していること、つまり遠地地震によって深部低周波微動だけでなくスロースリップも誘発された可能性を示唆します。

図:四国西部における2007年1月13日の千島列島沖地震による誘発微動の時空間分布.(a) 上の波形は表面波の3方向の成分と誘発微動の波形を示す.下の図中の色付きの丸は時間の経過に伴う誘発微動の位置の変化を示し,縦軸25km付近で開始した微動が徐々に15km付近まで移動している.(b) 誘発微動の発生場所.Aは(a)で示した誘発微動と対応する.A内だけでなく,B内でも誘発微動が発生している.

開催報告:懇談の場「日記史料から有感地震データベースを構築」

地震研究所と参加者とのコミュニケーション促進の場である「懇談の場」が2018年5月11日に開催されました。

今回は、史料に基づく前近代の地震データベースの構築について、地震予知研究センターの西山 昭仁 助教にお話しいただきました。地震研究所と東京大学史料編纂所は2017年に地震火山史料連携研究機構を設置して、史料を用いた組織的な歴史地震研究を始めています。

次回日程は、また決まり次第告知させていただきますが、「耐震工学」をテーマにする予定でおります。お気軽にお越しください。

過去に開催された「懇談の場」
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プロジェクトについて:地震火山史料連携研究機構

EGU2018へブース出展

2018年4月8-14日まで開催されたEGU General Assembly 2018(欧州地球科学連合2018年大会)にて地震研展示ブースを出展し、研究所の紹介や国際室の招聘制度への応募呼びかけがされました。また、ブースにて、過去に地震研で共同研究をされたことのある方々との同窓会が開催されました。共同研究者の他にも、去年の夏に開催されたSakura Science Programで来所していた学生およびその教員の参加もあり、賑わいました。

ERI had a booth at the exhibition hall in EGU(European Geoscience Union) 2018. Call for entry to our International Visiting Program was done (http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/kokusai/english/visiting/apply_e.html).

On Tuesday afternoon, an alumni gathering was held at the booth with researcher and students who have visited ERI using the Interantional Office program and Sakura Science Program.
Thank you all for your visit!