第31回サイエンスカフェ(ハイブリッド)開催報告

サイエンスカフェを地震火山観測研究推進協議会と広報アウトリーチ室の共同で、2025年10月28日にハイブリッドで開催いたしました。

31回目となる今回は、「人工衛星を利用した地震・火山研究」というテーマで開催し、金子隆之 准教授および小林知勝 研究室長(国土地理院)を迎え、加藤尚之教授の司会のもと、衛星データ等に基づく火山活動モニタリングや噴火推移の研究や合成開口レーダー(SAR)で得られる地殻変動データから大地震の断層モデルの研究について紹介がされました。


<地震・火山噴火予測研究のサイエンスカフェ >
地震や火山噴火に関する研究の成果は、予測の基礎となることが期待されています。これまでの研究から、地震や火山噴火のメカニズムへの理解は深まってきました。また、今後発生する可能性のある地震や火山噴火を指摘することもある程度はできます。しかし、規模や発生時期についての精度の高い予測はまだ研究の途上です。このサイエンスカフェでは、地震・火山噴火の予測研究の現状について研究者と意見交換を行い、研究者・参加者双方の理解を深めることを目的とします。

日光・足尾地域の地下電気比抵抗構造の推定

臼井嘉哉、上嶋誠、坂中伸也、山谷祐介、小川康雄、市來雅啓、本蔵義守、黒木英州、北関東MT観測グループ

Crustal fluids and their relation to seismic activities in the Nikko-Ashio area of Northeastern Japan inferred by electrical resistivity imaging, Tectonophysics, 917, (2025). https://doi.org/10.1016/j.tecto.2025.230958

 
 栃木県の日光・足尾周辺は地震活動・火山活動ともに活発な地域です。本地域では群発地震が観測され、過去に、M6以上の地震も複数回発生しております。また、日光白根山、男体山などの活火山や第四紀火山が存在しています。そのため、日光・足尾地域は地震活動・火山活動とその相互関係を理解する上で重要な場所です。

 地震・火山活動ともに地下深部の流体が関係していることが指摘されております。私たちは日光・足尾地域の地下の流体の分布を明らかにするため、本地域で地表の電磁場を観測し、そこから地下の電気比抵抗構造を推定しました。電気比抵抗は電流の流れにくさを表す物理量で、地中の間隙流体の量とそのつながり方に強い感度があり、流体の量が比較的多い場所では電気比抵抗は一般的に低くなります。

 観測データを解析した結果、日光白根山と男体山の下に電気比抵抗が低い領域が分布することを明らかにしました。この低比抵抗域は日光白根山と男体山のマグマ供給系を示していると解釈でき、高温かつ流体に富んでいると考えられます。この低比抵抗域の外縁付近では2013年にM6.3の内陸地震が起きています。マグマ供給系と推測されるこの低比抵抗域の外縁における地下の流体量や温度の不均質が本内陸地震の発生に関与した可能性を示唆しています。

第1051回地震研究所談話会(創立100周年記念談話会)開催のお知らせ

記のとおり地震研究所談話会を開催いたします。

対面での開催を再開しておりますので、地震研究所へお越しいただければ幸いです。また、Zoomでの同時配信も行っておりますので、Zoom参加を希望される方は10月16日(木)正午までに以下のフォームからお申し込みをお願いいたします。

URL: https://forms.gle/BBFWpLzRr1ipBqRZA

ご登録いただいたアドレスへ、開催前日にZoom URLとパスワードをお送りいたします。

なお、お知らせするZoom URLの二次配布はご遠慮ください。また、著作権の問題が

ありますので、配信される映像・音声の録画、録音を固く禁じます。

                 記

         日  時: 令和7年10月17日(金) 午後1時30分~

         場  所: 地震研究所 2 号館 5 階 第一会議室

※通常の会場と異なりますのでご注意ください

Zoom Webinar にて同時配信 

1. 13:30-13:45

演 題:地震研究所での地震工学系の研究開発と社会貢献

講演者:堀 宗朗

2. 13:45-14:00

演 題:地震研究所の観測地震学への貢献

講演者:平田  直

3. 14:00-14:15

演 題:地震研究所の火山研究

講演者:藤井敏嗣

4. 14:15-14:30

演 題:東京大学地震研究所による海底観測ネットワークの開発

講演者:金沢敏彦

5. 14:30-14:45

演 題:概観:地震研究所における強震動の観測と関連研究100年

講演者:工藤一嘉

6. 14:45-15:00

演 題:地震・火山の測地学的研究と地震研の果たした役割

講演者:大久保修平

   (休憩 15:00 ~ 15:15)

7. 15:15-15:30

演 題:グローバル地震観測ー海半球観測

講演者:深尾良夫

8. 15:30-15:45

演 題:動的地震破壊モデルの展開と課題

– 理論的視点からの小考 –

講演者:山下輝夫

9. 15:45-16:00

演 題:永正九年(1512)徳島県宍喰浦を襲った大津波は何だったのか?

講演者:都司嘉宣

10. 16:00-16:15

演 題:地震研究所における岩石の摩擦と変形に関する実験的研究

講演者:嶋本利彦

※時間は質問時間を含みます。

※既に継続参加をお申し出いただいている方は、当日zoom URLを自動送信いたします。

※談話会のお知らせが不要な方は下記までご連絡ください。

〒113-0032 東京都文京区弥生1-1-1 

東京大学地震研究所 共同利用担当

E-mail:k-kyodoriyo(at)eri.u-tokyo.ac.jp

※次回の談話会は令和7年11月21日(金) 午後1時30分~です。

開催報告:懇談の場「地震研究所創立100周年変わらぬ使命:地震火山現象の科学的解明と災害の軽減」

地震研究所と参加者とのコミュニケーション促進の場である「懇談の場」が2025年10月9日にハイブリッドで開催されました。
『地震研究所創立100周年変わらぬ使命:地震火山現象の科学的解明と災害の軽減』について、古村 孝志 所長によるお話でした。

海底火山における海中音波(T波)励起過程

武村俊介1

1東京大学地震研究所

Takemura, S. Characteristics of T-wave generation around submarine volcanoes. Earth Planets Space77, 150 (2025). https://doi.org/10.1186/s40623-025-02284-9



近年、本州南方にあるスミスカルデラや孀婦海山周辺において、検知された地震現象の規模に対して顕著な津波が観測された。それらの地震現象は海底火山活動と関連があることが指摘されている(例えば、Sandanbata et al. 2022解説記事1; Fujiwara et al. 2024)。また、津波に伴ってP波やS波より大きな海中音波(T波)が観測されており、そのことから浅い事象であったために津波が観測されたと考えられている(Takemura et al. 2024解説記事2)。T波は海水中の低速度層(SOFARチャネル)に沿って数千km以上離れた観測点でも観測されることがあり、遠洋の海底火山監視に有用であることが議論されている。そこで、Takemura et al. (2024)解説記事2の研究を更に推し進め、海底火山におけるT波の励起プロセスに迫った。


詳細な海底地形モデル(ETOPO 2022)を含んだ地震波伝播シミュレーションにより、図1に示すように、震源が海底火山の内側か外側かでT波の特徴が異なることを見出した。P波やS波より顕著に大きく、立ち上がりが鋭く、継続時間が60秒以下のT波はスミスカルデラ周辺ではカルデラ内部(図1a)、孀婦海山周辺では孀婦海山や孀婦岩の内部(図1b)で事象が発生した場合にのみ見られることがわかった。紀伊半島沖の海底地震計で観測された実際のT波もP波やS波の5倍以上の振幅を持ち、継続時間が60秒以下であることから、海底火山内部で発生した事象ではないかと推察される。


さらに詳細に調べると、震源近くに対象とする観測点へ向けた急傾斜が存在するとT波が効率よく励起されることがわかった。これまで観測あるいは理論的な研究からDownslope Conversion(傾斜変換:海底面の傾斜で地震波から海中音波へ変換)がT波励起のメカニズムと考えられてきたが、実際の海底火山地形を含んだ地震波伝播シミュレーションによって、観測点へ向けた急傾斜によってT波が効率よく励起されること、海底火山の形状によってT波励起は非等方的となることを明らかにし、海底火山におけるT波励起メカニズムの理解を深化させた。


実際にスミスカルデラの事象では、日本列島で顕著なT波が観測される地域とそうでない地域が見られた。対象の海底火山や地域に対して、先に地震波伝播シミュレーションを実施しておくことで、陸から遠く離れた遠洋の事象監視に向けた基礎検討が実施可能であり、今後も研究を進めたいと考えている。


関連解説

解説記事1 https://www.eri.u-tokyo.ac.jp/research/17626/

解説記事2 https://www.eri.u-tokyo.ac.jp/research/22620/

図1. 海底火山周辺のシミュレーション波形の特徴。(a)スミスカルデラ周辺、(b)孀婦海山および孀婦岩周辺。紀伊半島沖のDONET KMB06観測点の計算波形の包絡線を震央位置と深さ毎に並べている。図中のkmbsfはkilometer below the seafloorの略で、海底面からの相対深さを示す。図中の破線は震央距離と海中音波速度(1.5 km/s)から予想される理論T波到達時刻である。

市原美恵 教授らの論文が日本火山学会論文賞 受賞

市原 美恵 教授、小林 宰 外来研究員、前野 深 准教授、大湊 隆雄 教授、渡邉 篤志 技術専門職員、中田 節也 教授、金子 隆之 准教授による論文が、日本火山学会論文賞を受賞しました。


受賞者:市原 美恵 教授、小林 宰 外来研究員、前野 深 准教授、大湊 隆雄 教授、渡邉 篤志 技術専門職員、中田 節也 名誉教授、金子 隆之 准教授
受賞名 :日本火山学会論文賞
授与機関:日本火山学会
受賞日 :2025年5月12日
受賞研究:The sequence of the 2017-2018 eruptions and seismo-acoustic activity at Kirishima volcano group, Earth Planets Space, 75, 144, doi:10.1186/s40623-023-01883-8

能登半島地震余震に見られる非ダブルカップル成分

悪原岳,篠原雅尚,山田知朗,東龍介,日野亮太,尾鼻浩一郎,高橋努,藤江剛,小平秀一,村井芳夫,馬塲久紀,山下裕亮,八木原寛

Non-double-couple components of the 2024 Noto earthquake aftershocks: influence on focal mechanism estimation

Earth, Planets and Space, 77, 145. https://doi.org/10.1186/s40623-025-02279-6

 
 地震発生時に地下の断層がどう動いたかを示す手法として、「震源メカニズム解」が用いられます。これは、白黒の「ビーチボール」のような記号によって視覚的に表現されます(図1a)。このビーチボールの向きや分布を調べることで、地震を引き起こした断層の向きや、地面を押したり引いたりする力の向きを知ることができます。

 2024年1月に発生した能登半島地震の余震についても、この震源メカニズム解の調査が行われました。その結果、海底地震計のデータから求めた震源メカニズム解と、陸上の地震計のデータから求めた震源メカニズム解とで、向きに違いが見られることが報告されていました。本研究では、能登半島地震の余震が「非ダブルカップル成分」とよばれる性質をもつことを明らかにし、それが震源メカニズム解の不一致をもたらす原因であることを解明しました(図1c)。
 非ダブルカップル成分とは、地震が単純な断層のずれでは説明できないことを示す指標です。この成分が大きいとビーチボールの模様がいびつになり(図1b)、たとえば「断層面が曲がっている」、「地面が断層の向きとは別の方向にも動いている」、「地殻に力が加わったときの変形が対称ではない」といった、通常の地震とは違う複雑な現象が表れていると考えられます。今後、非ダブルカップル成分を詳しく調べることで、能登半島地震の発生メカニズムをより深く理解できると期待されます。

図1.(a)震源メカニズム(ビーチボール)の例。 (b)非ダブルカップル成分を含む震源メカニズムの例。(c)本研究で得られた非ダブルカップル成分を含む震源メカニズム解。青色や赤色のビーチボールは、非ダブルカップル成分の一種であるISO成分(体積変化を伴う成分)が有意に含まれていることを示し、灰色は有意でないことを示す。

三反畑 修 助教 日本地震学会若手学術奨励賞 受賞

三反畑 修 助教が日本地震学会若手学術奨励賞を受賞しました。

受賞者:三反畑 修 助教
受賞名 :日本地震学会若手学術奨励賞
授与機関:日本地震学会
受賞日 :2025年7月16日
受賞研究:地震波・津波の波形記録解析および数値計算に基づく海域火山現象の解明

武村俊介 助教、悪原 岳 助教 日本地震学会論文賞 受賞

武村俊介 助教、悪原 岳 助教らによる論文が、日本地震学会論文賞を受賞しました。

受賞者:武村俊介 助教、悪原 岳 助教
受賞名 :日本地震学会論文賞
授与機関:日本地震学会
受賞日 :2025年7月16日
受賞研究:A review of shallow slow earthquakes along the Nankai Trough, Earth, Planets and Space (2023) 75:164

伊東優治 助教 日本地震学会若手学術奨励賞 受賞

伊東優治 助教が日本地震学会若手学術奨励賞を受賞しました。

受賞者:伊東優治 助教
受賞名 :日本地震学会若手学術奨励賞
授与機関:日本地震学会
受賞日 :2025年7月16日
受賞研究:沈み込み帯における断層すべり現象の多様性の解明とその国際展開