◆大西洋で発生した爆弾低気圧による海洋波浪が励起した P 波・S 波を日本の観測記録を使 って検出した。震源情報を定量化することによって、その発生メカニズムを明らかにした。
◆嵐によって P 波だけでなく S 波が励起されていることを初めて検出した。
◆嵐による P 波・S 波を利用することで、地震・観測点ともに存在しない、海洋地域を通過 する嵐直下の地球内部構造を推定し、新たな地球科学的な知見を与える可能性がある。
前震活動中に地震発生域が拡大する現象は、沈み込む海洋プレートと陸側プレートとの境界で発生した2011年東北地方太平洋沖地震や2014年チリ北部地震の発生前に起きていたことが報告されているものの(e.g., Kato et al., 2012; Kato et al., 2016)、内陸の活断層においても、規模は小さいものの類似した現象が起きていたことを明らかにした点はユニークです。地殻内の浅い場所で規模の大きな地震が起きた後に、その余震域が時間の経過とともに拡大する現象は、2004年パークフィールド地震や2007年能登半島地震などの発生後に確認されており、ゆっくりすべり(余効すべり)の伝播が余震域の拡大をコントロールする物理過程の一つとして考えられています(Peng and Zhao, 2009; Kato and Obara, 2014)。
図1. a) 九州地域の地震テクトニクス図6).灰色の○印はM6以上の地震の分布図.b) 地震活動と解析に用いた地震観測点の分布図.青色の点は2016年4月14日以降の熊本地震に関連した活動.灰色の点は熊本地震発生以前に発生した地震活動の位置(2003年以降, 気象庁一元化処理震源).□印は地震観測点、赤線は活断層の地表トレース、赤い△印は活火山の位置.図2. 前震の発生以降、本震が発生する直前までの地震活動の時空間発展図(積算図).断層の走向方向に加えて、断層面の傾斜方向(浅い・深い側)にも前震の発生域が拡大する様子がわかります.図3. a) カラースケール(CFS)は前震(Mw 6.2)による本震断層面(A1-, A2-, B-fault)へ加わったCoulomb応力変化を示します.灰色の○印は前震から本震発生直前までの地震活動の震央位置を示します.黄色の☆印は本震の破壊開始点、灰色の実線は活断層の地表トレース.緑色の矢印は前震から本震発生前までに測地観測点で観測された非定常な変位ベクトル、白色矢印は前震の断層面上にすべり(約25 cm)を仮定して計算された理論変位ベクトル.b) 測地観測点(電子基準点)1071で捉えられた前震発生以降の非定常な変位変化.赤い曲線は、対数関数によるフィットを示します.c) 前震発生以降の地震の移動現象の概念図.黄色い矢印は前震域の拡大方向、黄色い☆印は本震の位置を示します.
【参考文献】
Kato, A., K. Obara, T. Igarashi, H. Tsuruoka, S. Nakagawa, and N. Hirata (2012), Propagation of slow slip leading up to the 2011 Mw 9.0 Tohoku-Oki Earthquake, Science, 335, 705–708, doi:10.1126/science.1215141.
Kato, A., J. Fukuda, T. Kumazawa, and S. Nakagawa (2016), Accelerated nucleation of the 2014 Iquique, Chile Mw 8.2 Earthquake, Sci. Rep., 6, 24792, doi:10.1038/srep24792.
Peng, Z., and P. Zhao (2009), Migration of early aftershocks following the 2004 Parkfield earthquake, Nature Geosci., 2, 877–881, doi:10.1038/ngeo697.
Kato, A., and K. Obara (2014), Step-like migration of early aftershocks following the 2007 Mw 6.7 Noto-Hanto earthquake, Japan, Geophys. Res. Lett., 41, 3864–3689, doi:10.1002/2014GL060427.