部門・センターの研究活動」カテゴリーアーカイブ

3.12.5 日本列島の地震活動を予測するモデルの作成(CSEP-Japan)

地震カタログデータに基づく確率論的な予測を行うために,CSEP (Collaboratory for the Study of Earthquake Predictability)を世界規模で実施しているSCEC (Southern California Earthquake Center) と連携を図り,2008年にCSEP日本テストセンターを立ち上げ,日本における地震発生予測検証実験を実施している.テスト領域として日本周辺,内陸日本および関東地域,テスト期間として1日,3ヶ月,1年および3年毎の合計12のテストのクラスを整備して実験を進めている.

3.12.4 高密度強震観測データベース

(1) 首都圏強震動総合ネットワークSK-net の構築と運用

首都圏強震動総合ネットワーク(SK-net)は,首都圏の10 都県の14 観測網から,合計1065 観測点の強震波形データを収集し,公開するシステムである.10 都県のうち5 自治体については,波形収集装置を開発してオンライン収集を,残りの自治体については,オフラインもしくは自治体側で用意したサイトでデータ提供して頂いている.これらの観測網のデータ収集方式やフォーマットはそれぞれ異なるので,一旦共通フォーマットに変換してデータベース化し,加速度,速度,変位のグラフおよび最大値,SI (Spectral Intensity) 値,速度応答スペクトルを SK-netウェブサイトで一般に公開している.オリジナルの波形データは,全国の大学等の研究者の利用を可能にしており,2021年度は42名の利用申請を受け付けた.データは,1999年1月から2023年2月までに収集されたデータを順次利用可能にしている.

3.12.3 地震データ解析とその公開

本センターではWWWサーバを立ち上げ,地震・火山等の情報提供を行ってきた.広報アウトリーチ室が設置されてからは,本センターはそれをサポートしている.

(1) 地震カタログ解析システム等

研究者向け情報としては,日本や世界の地震カタログをデータベース化し,地震カタログ検索・解析システムTSEISを開発し,地震活動解析システムとして公開している.

利用可能な地震カタログは,国立大学観測網地震カタログ(JUNEC) ,防災科学技術研究所地震カタログ,気象庁一元化地震カタログ,グローバルCMT地震カタログ,ISC 地震カタログなどで,多くの研究者に活用されている.また,我が国の地震や世界の地震について気象庁やNEIC などが速報として提供したものを,国内の研究者にメール配信している.気象庁の一元化震源については,そのミラーを行う機器を更新して運用を継続し,大学等の研究者に提供している.

(2) 長周期波動場のリアルタイムモニタリングGRiD MT

全国地震観測データ流通ネットワークJDXnet で提供されている広帯域地震波形データを利用して,震源速報等の地震情報を必要とせずに,地震の発生・発震機構(MT 解)・大きさ(モーメントマグニチュード) をリアルタイムに決定する新しい地震解析システムGRiD MTを開発して,その解析結果をWeb やメールでリアルタイムに情報発信している.現在までに得られた,解析結果についてはGRiD MTウェブサイトで公開している.巨大地震や津波ポテンシャルをW-phaseにより評価するイベント駆動型のシステムを開発し,解析結果を世界中の地震のサイトおよび日本の地震のサイトにて公開している.2022年においては,世界の地震については140個,日本の地震については136個のモーメントテンソル解(VRが80以上)を決定した.

(3) 古い地震記象の利活用

地震研究所には各種地震計記録(煤書き) が推定で約30 万枚ある.この地震記録を整理し利用しやすい環境を作るため,本センターが中心となって所内に「古地震記象委員会」が設置され,1) マイクロフィルム化やPDF等の電子化,2) 検索データベースの作成,3) 原記録の保存管理などが行われている.煤書き記録については,約22 万枚のマイクロフィルム記録のリスト,WEB 検索システム(日本語・英語)を作成し,国内外のユーザーの利用に供している.津波波形記録については,マイクロフィルムと,スキャナーでスキャンしたデジタルデータが津波波形データベースシステムで公開されている.2022年は,1921年龍ヶ崎,1922年浦賀水道,1923年鹿島灘,1923年関東(余震),1924年茨城県沖の地震の波形記録を,高解像度で電子化した.

このほかに,20 世紀の巨大地震の世界各地での地震記象を入手しており,それをスキャンし,画像データとして保存し公開すべく作業を進めている.さらに,1923年関東地震(本震)の記録について,数値化を開始した.WWSSN フィルムの長期保存のためのファイリングや,劣化が始まっている筑波地震観測所HES記録の修復作業も行っている. また,濃尾地震や鳥取地震等の過去の大地震のアンケート調査や報告書などの資料のPDF化を行っており,公開すべく準備を行っている.2020年においては,和歌山観測所飯南観測点および七川観測点の連続記録の画像化を進めた.

3.12.2 全国共同利用並列計算機システムの提供

本センターは,全国共同利用の計算センターとして,データ解析やシミュレーションなどのために,高速並列計算機システムを導入し,全国の地震・火山等の研究者に提供している.2020年3月にシステム更新を実施し,現在はHPE ProLiant DL560 Gen10システムが稼働している.このシステムは,計算サーバとして120ソケット(2400Core),22.5TiB メモリ,それらのフロントエンドサーバとして4ソケット(80Core),1.5TiB メモリを有している.この分野の計算需要の伸びは著しく,恒常的に処理能力の限界に近いところまで利用される状況が続いている.システムは,例年毎月平均70 ~ 90 名が利用しており,そのうちの4 ~ 6 割 が地震研究所外から共同利用で利用している大学や研究所の研究者となっている.本センターでは,利用マニュアルをインターネットで公開し,また,初心者の並列計算利用者を対象とした利用者講習会を毎年開催している.

3.12.1 全国の地震データ流通とデータベース

(1) 全国地震観測データ流通ネットワークJDXnet

新しい大学間の全国地震観測データ流通ネットワークJDXnetを各大学や防災科研との共同研究として開発した.JDXnet は,衛星回線に代わって,国立情報学研究所(NII) が運用する全国規模の超高速広域ネットワークSINET,情報通信研究機構(NICT) が運用する全国規模の超高速広域ネットワークJGN,さらにNTT が提供するフレッツ回線などの地上回線を利用した次世代データ流通ネットワークである.JGNとSINETの広域L2 網を用いてデータ交換ルートを二重化し,安定性と信頼性を高めたシステムを運用している. 2022年も,JGNの仮想化サービスを用いてクラウド型データキャッシュサーバを引き続き運用し,災害時などにおけるネットワーク障害に強いシステムの開発を継続した.今後も,各研究機関で地震観測データを安定して利用できる環境を整備し地震学の研究進展に資することを目指す.

(2) 新J-array システム

新J-array システムは,世界の大地震(M5.5 以上,日本付近はM5 以上) の発生時に日本列島で観測された地震波形データを30 分から2 時間の長時間記録として保存したものである.波形データは準リアルタイムで処理しJ-arrayサイトで即日公開している.これまでNEICからのQEDメールを利用した自動化処理を行っていたが,USGSのWebページから地震情報を自動的に収集するシステムを2020年度自動化システムを改良し,2022年度はそのシステムを継続運用した.

(3) 全国地震波形データベース利用システム HARVEST

各大学が収集している地震波形データを全国地震データ等利用系システムサイトに公開し,データの活用ならびに各大学と全国の研究者の共同研究を推進するためのシステムHARVESTを開発し,各大学に提供している.このシステムにより,どこの大学の利用システムでも共通のインターフェースで地震波形データを利用したり,データ利用申請したりすることが可能となっている.2022年においては,各地域の地震活動のみの提供を継続して行った.

(4) チャネル情報管理システム

チャネル情報管理システム(CIMS)は,地震観測点のチャネル情報を管理するデータベースである.2007年10 月にこのシステムの運用を開始したが,これまでの運用状況やミドルウェアの更新状況等を踏まえて将来の運用について見直しを継続して行った.

(5) 緊急地震速報の伝達と利活用

気象庁に予報業務許可申請(地震動) を行い,予報業務の許可のもと,東京大学情報ネットワークシステムUTNET やSINET 等のネットワークを介して緊急地震速報の伝達を行っている.学内で,緊急地震速報の仕組みや技術的限界を周知し,利用するための必要な事柄を検討し,Web コンテンツと同様なアクセスのみで緊急地震速報を簡便に受信できるようにし,端末表示装置の開発も行った.2011年からは情報学環総合防災情報研究センターと共同で,学内に複数の配信サーバを設置して,全学に緊急地震速報を提供している.また2012年度以降からは,学内の放送設備に接続して緊急地震速報を放送する装置を開発して,理学部,工学部,地震研究所,本部棟,駒場Ⅰキャンパス,白金キャンパス,柏キャンパスに設置した.2015年度には,本郷キャンパス広域放送設備に接続して,本郷キャンパスの主要な建物のほぼすべてに緊急地震速報を放送可能にした.また東京大学本部の防災訓練,理学部や工学部,地震研等の部局の防災訓練,駒場キャンパスや柏キャンパスの防災訓練,医科研や附属病院における防災訓練などにおいて,本装置による緊急地震速報の訓練放送が活用されている.

3.12 地震火山情報センター

教授 佐竹健治,木下正高
准教授 鶴岡 弘(センター長),中川茂樹
外来研究員 室谷智子, 山田昌樹
技術補佐員 金澤久美子
地震研究所特別研究生 胡桂

3.11.8 共同利用への対応

(1) テレメータ機材

地震観測用VSATシステムおよび地上テレメータ装置,データロガー等を地震研共同利用の手続きに従って,全国の大学の研究者に提供(貸し出し)しており,2023年2月27日現在の貸し出し数は741件である.

(2) 地震観測装置

総計約1000台の地震観測装置を,地震研共同利用の手続きに従って,全国の大学の研究者に貸し出している.2ヵ月以上の長期利用を希望する利用者が,利用を希望する前年度に行われる利用公募に申請した際に,観測開発基盤センターは,申請内容を審議して採否を決定している.2022年度の特定機器利用の採択件数は7件で貸出台数は122台であった.また,2 ヵ月未満の短期利用については随時受け付けており,2022年度の利用件数は29件,貸出台数は延べ679台であった.

(3) 電磁気観測装置

国内の大学や諸研究機関に所属する電磁気関連研究者による,それぞれの研究ターゲットに基づく野外観測を援助するため,地震研究所の共同利用機器として,電磁気観測装置の貸し出しを実施している.2022年7月現在で,高精度広帯域MT観測装置,長基線電位差測定装置,超長周期電磁場測定装置,高精度方位決定ジャイロ装置,高精度広帯域電場観測装置を保有し,毎年,各研究者からの応募に対応して利用の便宜を図ってきた.そのことにより,多くの観測成果が生み出され,特に地震活動や火山噴火活動のメカニズムを解明するための比抵抗構造研究では,毎年,複数の学術論文が上梓されている.観測機器を常に最良の状態で使用できるよう,ファームウェアを更新し,使用前後に機器キャリブレーションを実施して動作確認をすることも重要な仕事となっている.2022年度の利用件数は9件であった.貸出台数は,測定器本体と磁場センサーをあわせ,延べ152台であった.

3.11.6 強震動観測研究

(1) 定常的な強震観測網の運用

伊豆・駿河湾地域や足柄平野などにおける高密度の強震観測網を中心とした観測研究を,強震計観測センターの時代から継続して行っており,近年リアルタイム化を進めている.伊豆駿河湾の観測網は東海地方での大規模地震発生を想定して,地域を代表する露岩上に設置されている.一方,足柄平野の観測網は表層地質による強震動への影響を評価することを主目的として1987年に設置され,国際的なテストサイトとしても位置づけられている.定常的な強震観測網では,地盤特性の把握を目的としたボアホール観測に加え,地盤と建物の同時観測も実施している.

(2) 臨時強震観測の実施

開発された機動観測用強震計は,微動観測にも対応可能な増幅器を併せ持ち,共同利用の枠組みなどを通して機器の貸し出しが可能な体制を取っている. 2016年熊本地震後に震源域周辺において臨時強震観測を他機関と共同で行った他,拠点間連携共同研究による小田原地域や東京湾岸地域の共同観測に参加した.

(3) 強震観測データベースの公開

2007年度より,観測された強震動記録のアーカイブと公開を行うデータベースシステムの開発を進め,そのシステムを用いて1980年以降のデータ公開を開始し,以後,引き続き公開を行っている(https://smsd.eri.u-tokyo.ac.jp/smad/ja/top/ ).また,1964年新潟地震の川岸町においてSMAC型強震計で観測されたデジタイズ記録を公開した他,1956年から1995年兵庫県南部地震までのSMAC型強震計記録の画像データを公開した.

3.11.5 新たな観測手法の研究

地震・火山現象を理解するためには地下深部の観測が不可欠であるが,機器を設置できるのは地球全体の規模からすると地表に近いごく一部の領域にすぎない.そのため観測機器の精度の向上や観測範囲の拡大を目指して,レーザー干渉計などの光計測を用いた新たな観測機器の開発に取り組んでいる.レーザー干渉計は高精度・低ドリフトの変位センサーであり,地震・地殻変動観測機器へ組み込むことにより観測装置の高精度化や装置の小型化ができる.また光を用いた計測手法は,半導体素子では観測が難しい地下深部・惑星探査など極限環境での高精度観測を可能にする.

 (1) 長基線レーザー伸縮計による広帯域ひずみ観測

レーザー伸縮計は地殻変動から数十Hz の地震波まで広いタイムスケールの地動を観測できる.岐阜県の神岡鉱山(東大宇宙線研究所神岡宇宙素粒子研究施設)の地下1000 m のサイトにおいて,独自開発した波長安定化レーザーを組み込んだ100mレーザー伸縮計を用いてひずみ観測を継続している.2016年からは神岡の重力波望遠鏡(KAGRA)と連携し,1500mのレーザー伸縮計を建設し観測を継続しており,観測された多様な記録からレーザー干渉計の広帯域・広レンジの特性が示された.観測量と広域ひずみ場の関係の定式化,地下水変動に伴うひずみの検出,近地~遠地の地震に伴い観測されたひずみステップを用いた地震モーメントの測地学的推定などを行った.2022年1月に起こったトンガ火山の噴火によるグローバルな気圧変動の波に対応するひずみ観測記録が得られており,気圧の空間スケールとひずみ変動との関係の解析を行なっている.また,愛知県犬山観測所(名古屋大学,30m)および静岡県天竜船明観測点(気象庁気象研究所,400m)に設置されているレーザー伸縮計と同時観測を行い,共通イベントの解析を進めている.

 (2) 光ファイバーリンク方式の観測装置の開発

レーザー干渉計の光源とセンサーを光ファイバーでつなぐことによりセンサー部を無電源化し,地下深部や惑星探査など極限環境(高温・極低温・高放射線など)で使用可能な高精度観測装置を構成できる.その一つとして,小型広帯域地震計の開発を行っている.この地震計は小型長周期振り子の変位検出部としてレーザー干渉計を使用し,光ファイバーでレーザー光を導入することにより耐環境性を高めている.試作機を用いたこれまでの性能評価では,広帯域地震計(STS1型) と同等の検出性能が確認され,干渉計部分は-50℃~ 340℃の温度範囲で動作できる.この原理の地震計を用いて地下深部や月面における地震探査に応用することを検討している.

(3) 小型絶対重力計の開発研究

絶対重力計は地殻変動や物質移動(マグマ移動・地下水の変動など)を観測する有効な手段である.火山観測など野外で機動的に使用可能で,複数で観測網を構築できる絶対重力計を開発している.小型で必要な精度が得られるように独自のレーザー干渉信号の取得法や地面振動ノイズの補正機構を導入し,市販装置の約2/3のサイズの実証機を開発した.霧島火山観測所(宮崎県),蔵王観測所(宮城県,東北大)などで試験観測を行い,設計精度10-8m/s2が得られている.また,観測網を構築するために長距離伝送できる通信波長帯光源(波長1.5μm帯)を用いた動作試験を東北大・電気通信研究所と共同で実施し,従来の光源(波長633nm)の測定結果と一致し,光ファイバーによる光源の長距離伝送による精度劣化などは生じないことがわかった.火山帯の野外環境などで複数の絶対重力計を光ファイバーで接続し観測網を構成する手法開発を進めている.南極の昭和基地や周辺の露岩地域において,寒冷な野外に装置本体を設置し,長基線の光ファイバーで光源と検出器を接続した構成での絶対重力測定を実施した.国立天文台江刺地球潮汐観測施設(岩手県)においては,東北地方太平洋沖地震後の重力変化を継続的に観測している.

 (4) 重力偏差計の海底・月惑星・小天体探査への応用

地下構造を探査する方法として,広い空間スケールの重力場(重力加速度)をとらえる重力計に加え,その空間微分を測定する重力偏差計を併用することにより狭い範囲に局在化した鉱床などの密度異常のマッピングができる.海底鉱床の探査手法として,無定位振り子と光センサーを組み合わせた加速度計2台によって構成される重力偏差計を製作し,自律型無人潜水機(AUV) に重力計とともに搭載し,海中移動体上で探査を行ってきた.一方,月惑星や小天体などの天体の内部構造はいまだ十分な探査が行われておらず,着陸機あるいは周回機による観測で重力偏差計を用いれば従来の重力加速度の観測よりも高い分解能が得られることがモデル計算によって示されている.国立天文台および宇宙科学研究所(JAXA)と共同で小天体や月惑星表面などの内部構造探査を目指した重力偏差計の開発を進めており,光センサーを用いた小型重力加速度計を試作した.2021年度に50m落下塔を用いた微小重力試験を実施し,所期の動作性能を確認している.また,小型絶対重力計の技術を転用し,2つの鏡を真空中で同時落下させ重力偏差を計測する自由落下式重力偏差計の基礎データを取得した.月惑星など重力天体表面における地下構造探査を目指して機器構成などの検討を今後行っていく.

3.11.4 電磁気的観測研究

(1) 八ヶ岳地球電磁気観測所における基準観測

八ヶ岳地球電磁気観測所では東海・伊豆地方における地球電磁気連続観測の参照となる基準連続観測を継続した.毎月の地磁気絶対観測により地磁気3成分測定値の基線値を同定するとともに,毎月約2週間の,絶対観測室磁気儀台上の全磁力の繰り返し連続計測を実施し,観測所全磁力連続観測測定値との全磁力差を同定した.加えて毎月,地磁気絶対観測の際に絶対観測室内の水平48点,鉛直5層の計240点における全磁力値を計測して同室内の全磁力勾配を評価し,全磁力差や基線値の季節変化・経年変化との関連を調査するための基礎資料を作成した.これらの参照資料とするための気温・地温連続測定を継続して実施した.記録計室内での気温・気圧・湿度計測のオンライン化,局舎敷地内のwebカメラによる画像での敷地内の状態の定時監視,庁舎のwebカメラによる気象条件の常時監視による,無人観測所の保守を継続した.

気象庁及び同地磁気観測所による,草津火山における火山活動監視を目的とした全磁力観測値の参照値として,前日分のデータを毎日自動で送付する仕組みの運用を継続した.

(2) 東海・伊豆地方における地球電磁気連続観測

東海地方の7観測点(河津,富士宮,奥山,俵峰,相良,舟ヶ久保,相良)における地球電磁気連続観測,伊豆地方の7観測点(大崎,新井,玖須美元和田,手石島,与望島,川奈,池)における全磁力観測を継続するとともに,機器の保守を実施した.

(3) 地殻活動に伴う地球電磁気変化の理論的予測の試み

地殻内部流体の移動に伴う流動電位によって生じる地球電磁気変化を定量的に予測する従来のモデルを,流体移動を矩形面上に仮定するモデルから直方体内に仮定するモデルへと拡張した解析解を導出した.解析解を用いたモデル計算の一例として,マグマの移動が水平方向から鉛直方向へと推移する過程において,地表に現れうる地磁気三成分変化及び電位分布の推移を見積もった.