日本海盆の海洋プレート内部に見つかった予期せぬ不連続面

艾 三喜1,2, 悪原 岳2, 森重 学2, 吉澤 和範3, 篠原 雅尚2, 中東 和夫4

1.中国地質大学(武漢) 2. 東京大学地震研究 3. 北海道大学 4. 東京海洋大学

Layered Evolution of the Oceanic Lithosphere Beneath the Japan Basin, the Sea of Japan
Journal of Geophysical Research: Solid Earth 
https://doi.org/10.1029/2023EO230057

 日本海の北部に位置する日本海盆は、およそ2000万年前に日本列島がユーラシア大陸から分かれる過程で誕生しました。その詳細な形成史を明らかにするために、浅部の地殻構造や地磁気など、様々なデータに基づいた研究が行われています。本研究では、2017年から2019年にかけて日本海盆に設置された広帯域海底地震計のデータを用いて、日本海盆下の地震波速度構造を、現代的な統計解析(ベイズ解析)によって求めました。

 推定された速度構造は、海底に積もった堆積層、地殻・硬いマントルからできている海洋プレート、柔らかく流動するマントルといった、よく知られている特徴でおおむね説明がつくものでした(図1)。一方で、海洋プレート内部に予期せぬ不連続面も見つかりました。詳細に調べると、不連続面より浅い部分では、地震波が伝わる速度が方向によって異なる(強い異方性をもつ)こと、反対に深い部分では異方性が弱くなっていることが明らかとなりました。


 海洋プレートは、海嶺で生み出されたマグマが柔らかいマントルの上を流されながら、浅い部分から順番に冷えて固まることで誕生します(図2の左側)。このとき、プレートの動く向きに沿った異方性が海洋プレート内部に作られます。日本海盆では、およそ2000万年前に海洋プレートの形成が始まりましたが、約1500万年前にその活動が急に止まったことが知られています。この急激な変動によってマントル内の流れが乱され、その後に冷え固まった海洋プレートの深部では、異方性が失われたと考えられます(図2の中央~右側)。

 本研究はJournal of Geophysical Research: Solid Earth誌のエディターハイライト論文として選出されました(https://doi.org/10.1029/2023EO230057)。

大正関東地震の波形記録

地震研究所には大正関東地震の記録が多く保管されており、そのうち代表的なものを先に2点紹介します。それぞれ違う地震計で録れた記録ですが、いずれも東京都の本郷に設置されていたものです。

今村式2倍強震計で録れた記録

 この記録は,1923年9月1日に発生した関東地震の際に,東京帝国大学地震学教室(東京,本郷)に置かれていた今村式2倍強震計によって得られたものです.今村明恒博士の報告(震災予防調査会報告第百号甲)には,P波の初動は11時58分44秒に観測したと記されています.ついでS波が来るとすぐに南北動成分(一番上の波形.記録紙の上側が南方向)と上下動成分(一番下の波形.記録紙の上側が下方向)の描針は外れ,東西動成分(真ん中の波形.記録紙の上側が東方向)だけが記録を続けました.それも揺れが大きかったために,振り子が南北動成分のフレームに当たってしまったようで,正確な最大振幅はとらえていません.上下動成分には,1分間ごとにマークが入っており(タイムマーク),このときは1分間4cmの速さで記録紙を巻いたドラムが回転していました.
 おそらく記録紙に書かれている赤字は今村ら当時の人たちが解析や研究のために記載したもので,白字はマグニチュードの記載があることから後世の研究者が記載したものと思われます(注:マグニチュードという指標ができたのは関東地震より後で,関東地震のマグニチュードが7.9と言われるようになったのは1951年以降です).
 国立科学博物館(東京,上野)に展示されている今村式2倍強震計が,この記録を取ったと言われています.

     (地震火山情報センター 外来研究員 室谷 智子)
今村式2倍強震計
今村式2倍強震計

ユーイングの円盤型記録式地震計で録れた記録

 円盤が回転し,煤をつけた記録紙に地震動が記録される.
 Beginningが記録開始で,SW-NW, SE-NWおよびU-Dの3成分が記録されている. 1回転は約2分,最大振幅はSW-NE成分で15cm,SE-NW成分で40cm程度と推定されている.

        (地震火山情報センター 鶴岡 弘 准教授)
地震研究所所蔵のユーイングの円盤型記録式地震計(復元模型)
波形記録のトレース


今村式2倍強震計、ユーイング円盤記録式地震計の両方とも機械式地震計で、当時主流であった「煤書き記録方式」で録られているものです。

2号館の地下に残っている煤付け作業部屋で、今では見ることの少ない記録紙の煤付けの全工程を技術部総合観測室の渡邉技術職員が再現している動画ですす。

【煤書き式記録について】
 ドラムに巻き付けた「アート紙」に、石油ランプから出る「煤(すす)」をまんべんなく付着させることで記録紙を準備する。そのドラムを地震計に組み付けて回転させ、重りと繋がっている細い金属製の針先で記録紙を引っ掻くことで地面の揺れが記録される。記録終了後は紙を外し、「ニス」の中に通して煤を固定する。煤はやや薄目に一様に付けるのがよく、煤付けやニス掛けには熟練を要する。
 煤書き記録の特長は、記録線を数十ミクロンと非常に細くできることである。また煤は炭素であるから耐久性が良い。針先の固体摩擦も比較的小さく、振り子に対する反作用も小さいが、その影響を一層小さくする目的で、重りの非常に大きな(例えば 1 トン)地震計も作られた。
(東京大学地震研究所地震計博物館、2013年、p2「地震計発展の流れ」より)

地震研究所が所蔵するその他の大正関東地震波形記録

上記で紹介した代表的な2点に限らず、地震研究所で保管されている大正関東地震の波形記録は他にもあります。下記にそれらをご紹介します。

今村式1倍強震計

東京帝国大学地震学教室(東京,本郷)に置かれていた今村式1倍強震計(倍率1倍)によって得られたものです.白い矢印が,本震の各成分のP波を示しています.今村式2倍強震計で得られた波形は振り切れていましたが,1倍でも振り切れていたことが分かります.余震もいくつか記録されています.論文にこの地震計の特性は書かれていますが,写真や詳細は残っておりません.

普通地震計(強震計)

東京帝国大学地震学教室(東京,本郷)に置かれていた水平動2倍,上下動3倍の倍率の普通地震計による記録です.「a」とあるところから記録が始まっています.地震が起きてから地震計が起動するため,P波初動は記録されません.記象紙の一番下にタイムマークらしきものがありますが,地震の影響か間隔は均一ではありません.

普通地震計

東京帝国大学地震学教室(東京,本郷)に置かれていた水平動5倍,上下動30倍の倍率の普通地震計による記録です.記象紙の左に縦線があるところから記録が始まっています.地震が起きてから地震計が起動するため,P波初動は記録されません.記象紙の一番上にタイムマークがありますが,地震の影響か途中から間隔は均一ではありません.

大森式地動計(教室一号)

東京帝国大学地震学教室(東京,本郷)に置かれていた大森式地動計による東西成分(倍率30倍,周期約40秒)によって得られたものです.記象紙の下部に本震の波形が書かれています.小さい赤い矢印が示しているところが,P波の初動です.1分半ほどで波形は振り切れています.

大森式地動計(教室三号)

東京帝国大学地震学教室(東京,本郷)に置かれていた大森式地動計による南北成分(倍率10倍,周期約30秒)によって得られたものです.記象紙の上側が南,下側が北方向になります.左下部の赤と白の矢印がP波の初動ですが,北方向に波形が振れてすぐに振り切れています.

大森式地動計(教室二号A)

東京帝国大学地震学教室(東京,本郷)に置かれていた大森式地動計による東西成分(倍率1.5倍,周期30秒)によって得られたものです.記象紙の左下部から記録がスタートしており,赤枠部分が本震の記録です.地震動の衝撃のためか,P波の初動部分が突然立ち上がっていて,すぐに振り切れています.

大森式地動計(教室二号B)

東京帝国大学地震学教室(東京,本郷)に置かれていた大森式地動計による南北成分(倍率1.5倍,周期26.2秒)によって得られたものです.記象紙の上側が南,下側が北方向で,左下部から記録がスタートしています.P波の初動(白い矢印)は北方向に伝わり,すぐに振り切れてしまいました.また,地震動の影響か,まっすぐな線ではなく,うねりながら記録されていることが分かります.

簡単微動計

東京帝国大学地震学教室(東京,本郷)に置かれていた簡単微動計(水平動)によって得られたものです.記象紙の上側に南北成分,下側が東西成分が書かれており,白い矢印の部分がP波の初動です.この地震計の倍率は100倍のため,記録はずっと振り切れています.断続的ではありますが,南北成分は記録を続けていたようです.

上下動地震計

東京帝国大学耐震家屋(東京,本郷)に置かれていたグレイ・ユーイング型上下動地動計(倍率10倍)の記録です.地震の前から安定して動いていなかったようで,P波の初動は良く分かりません.

大森式地動計(耐震家屋一号)

東京帝国大学耐震家屋(東京,本郷)に置かれていた大森式地動計による東西成分(倍率10倍,周期約30秒)の記録です.白い矢印が示しているところが,P波の初動です.他の記録とは,弧の書き方が逆になっています.これは,記象紙を巻いているドラムが,他の地震計とは逆回転をしているからです.

大森式地動計(耐震家屋甲号)

東京帝国大学耐震家屋(東京,本郷)に置かれていた大森式地動計による東西成分(倍率15倍,周期約60秒)の記録です.白い矢印が示しているところが,P波の初動です.初動は東方向に動いていることが,はっきりと分かりますが,すぐに振り切れてしまいました.

大森式地動計(耐震家屋乙号)

東京帝国大学耐震家屋(東京,本郷)に置かれていた大森式地動計による南北成分(倍率20倍,周期約50秒)の記録です.白と赤の矢印が示しているところが,P波の初動です.北方向に大きく動き,すぐに振り切れていますが,針もしくはドラムが移動してしまったのか,記録する位置が途中でかなり移動しています.その後はまっすぐな線しか書かれていません.余震がたくさんあったので,針がどこかに固定されたままになってしまったのかもしれません.

大森式微動計

東京帝国大学耐震家屋(東京,本郷)に置かれていた大森式微動計による東西成分(倍率120倍)の記録です.白い矢印が示しているところが,P波の初動です.記象紙の上下が東西どちらを表しているか分かりませんが,他の地震計の東西方向の記録(初動は東方向)から,記象紙の下側が東方向ということが分かります.また,初動の近くのタイムマークの部分に11:46と赤字で書いてあるのですが,地震の発生は11:58なので,当時の時計の精度は良くなかったことも分かります.

大森式微動計

東京帝国大学耐震家屋(東京,本郷)に置かれていた大森式微動計による南北成分(倍率120倍)の記録です.白い矢印が示しているところが,P波の初動で,北方向に動いたことが分かります.倍率120倍のため,本震の前からずっと小さい揺れを観測しているのが分かります.風や何かしらによる地面の揺れがあったのでしょうか?

田中舘式地震計

東京帝国大学地震学教室(東京,本郷)に置かれていた田中舘式地震計による倍率1倍の記録です.3成分記録できる地震計ですが,真ん中の成分(水平動と思われますが成分不明)は記録できていないようです.記象紙の一番上は水平動,タイムマークの上の記録は上下動と思われます.詳細は不明ですが,本震がきちんと記録できている訳ではないようです.

Pantagraph

東京帝国大学耐震家屋(東京,本郷)に置かれていたPantagraphによる記録です.東西南北の地面の軌跡を20倍に拡大しています.大きく見て,北東方向に揺れていることが分かります.機器の詳細は不明です.

大森式微動計(筑波山)

東京帝国大学が筑波山に置いていた大森式微動計による南北成分(倍率120倍)の記録です.記象紙中央より左よりの白い矢印が示しているところが,P波の初動です.残念ながら,記録は薄くて良く読めません.

普通地震計(浅間山)

東京帝国大学が浅間山に置いていた水平動5倍,上下動10倍の倍率の普通地震計による記録です.揺れが起きてから動き始めるため,地震の初動の記録はされません.ゆったりとした長周期のゆれを記録しているように見えます.成分は書かれていませんが,余震の記録から,3段記録があるうちの一番上が上下動成分ということは分かりました.

第1023回地震研究所談話会開催のお知らせ

下記のとおり地震研究所談話会を開催いたします。

ご登録いただいたアドレスへ、開催当日午前中にURL・PWDをお送りいたします。

なお、お知らせするzoomURLの二次配布はご遠慮ください。また、著作権の問題が

ありますので、配信される映像・音声の録画、録音を固く禁じます。

                記

    日  時: 令和5年3月17日(金) 午後1時30分~ 

    開催方法: インターネット WEB会議

1. 13:30-13:45

演題:情報科学-固体地球科学融合研究プロジェクト部 活動報告 【所長裁量経費成果報告】

著者:○長尾 大道、情報科学-固体地球科学融合研究プロジェクト部メンバー

2. 13:45-14:00

演題:地震波形の全体・局所領域に対する複数の深層学習モデルを統合した地震検出手法

著者:○徳田智磯・長尾大道

要旨:既存の検出手法(GPD)を発展させ、地震波形全体の情報に加え、波形の局所情報をモデルに取り入れることにより、より精度よく地震を検出できる手法を開発した。

3. 14:00-14:15

演題:多方向ミュオグラフィによる伊豆大室山火砕丘の三次元密度トモグラフィ

著者:○宮本成悟、長原翔伍(神戸大学)、森島邦博・中野敏行(名古屋大学)、

小山真人(静岡大学)、鈴木雄介(STORY)、市川雅一

要旨:火砕丘は火山の基本的な形態の一つであり、その詳細な内部構造や形成時のマグマの動きを明らかにすることは、噴火の性質を理解する上でも、火山災害の軽減のためにも重要である。我々は、大室山火砕丘の3次元密度構造を明らかにするために、多方向ミュオグラフィ調査を実施した。火山の周辺11ヶ所に多方向ミュオグラフィに最適化された原子核乾板検出器を設置しました。原子核乾板に記録されたミューオンの飛跡は、高速自動読み出し装置で読み取られた。得られた10方向のミュオグラフィ画像に線形インバージョンを用いることで3次元密度構造を推定した。この観測結果と先行研究による地形・地質学的な制約から、見つかった高密度領域はそれぞれ火砕丘の中央火道、そしてそこから伸びる3方向の放射状ダイクと推察されます。西方向に伸びるダイクは西麓の小さな溶岩流を作り、南方向に伸びるダイクは小さな側面噴火を起こし、小火口を形成したと推察した。Nagahara, Miyamoto, Morishima, Nakano, Koyama, Suzuki, “Three-dimensional density tomography determined from multi-directional muography of the Omuroyama scoria cone, Higashi–Izu monogenetic volcano field, Japan.” Bull Volcanol 84, 94 (2022). https://doi.org/10.1007/s00445-022-01596-y

○発表者

※時間は質問時間を含みます。

※既に継続参加をお申し出いただいている方は、当日zoomURLを自動送信いたします。

※談話会のお知らせが不要な方は下記までご連絡ください。

〒113-0032 東京都文京区弥生1-1-1 

東京大学地震研究所 共同利用担当

E-mail:k-kyodoriyo(at)eri.u-tokyo.ac.jp ※次回の談話会は令和5年4月21日(金) 午後1時30分~です。

Friday Seminar (10 March 2023) Chastity Aiken (IFREMER)

Title: Mayotte’s submarine volcano: seismicity, tomography, and the future seafloor observatory

 

Abstract:

Mayotte’s submarine volcano system was first identified in 2018 when several earthquakes and very-long-period earthquakes were seen on global seismic networks. The volcano’s presence was later confirmed in February 2019 in a sea campaign called MAYOBS, during which a new volcano edifice was discovered ~40 km offshore Mayotte. There was only 2 land stations on Mayotte at the time of the first MAYOBS campaign. We understood so little of Mayotte’s submarine volcano and the crisis that many more MAYOBS sea campaigns were conducted over a period of 4 years. In total, 23 sea campaigns were conducted to deploy/recover ocean-bottom seismometers – an unprecedented number of sea campaigns for an unprecedented submarine volcano eruption. In this talk, I will present a brief summary of seismological studies conducted by myself and the REVOSIMA (Mayotte Seismic and Volcanic Monitoring Network) seismology group: how we detected more 30k events and relocated more than 5,000 of them, the first tomographic image we have of the volcano system, and the future seafloor observatory that will be installed to monitor Mayotte’s submarine volcano in the future.

Friday Seminar (17 March 2023) Julien Chaput (Univ. Texas El Paso)

Title:  Volcano imaging from distributed passive sources.

Abstract
A large portion of the world’s active volcanoes are glaciated, and the significant topographic gradients result in a large amount of distributed gravity and temperature driven icequake activity. These small impulsive events typically excite high frequencies (1-20 Hz), and their pervasive nature makes them ideal for Green’s function reconstructions through seismic interferometry and for statistical analysis using diffusion and radiative transfer arguments. We showcase our progress in developing an eventual “ground up” workflow and code base particularly well-suited to temporary nodal deployments that encompasses detection and databasing of icequakes, Bayesian coda cross-correlation for Green’s function reconstruction, envelope modeling via radiative transfer with concurrent event localization, and array-based scattering imaging for conduit system mapping (with Institut Langevin and UJF Grenoble). We show applications and ongoing work at Erebus volcano, Antarctica.

東京大学地震研究所技術職員採用説明会のご案内

東京大学地震研究所技術部では、技術開発室及び総合観測室においてそれぞれ1名ずつ、技術職員を新規採用予定です。 来年度末に学部または修士課程を卒業・修了予定の方や民間企業等に在職中の方で、地震研究所で技術職員として 勤務することに興味がある方を対象に、オンライン説明会及び現地説明会を実施いたしますので、是非、ご参加ください。

◆オンライン説明会開催日時:内容はいずれも同じ
2023年3月 4日(土)①10:00~10:30 ②10:40~11:10 ③12:50~13:20 ④13:30~14:00オンライン開催
2023年4月15日(土)①10:00~10:30 ②10:40~11:10 ③12:50~13:20 ④13:30~14:00オンライン開催

◆現地説明会開催日程:2023年5月 19日(金)10:00~12:00(9:45受付開始) 

◆参加人数:特になし
◆参加資格:就職・転職を検討している方で、東京大学地震研究所の技術職について興味がある方。学部生の参加も歓迎します。
◆申込締切:3月4日開催:3月3日(金)17:00まで 4月15日開催:4月14日(金)17:00まで 5月19日(金)開催:5月18日(木)17:00まで
◆開催概要:東京大学地震研究所技術部技術開発室・総合観測室紹介及び公募概要や業務内容の説明、先輩技術職員との対話など。

◆申込登録:次のいずれかにより事前にお申込ください。  
①関東甲信越地区国立大学法人等職員採用試験HP>説明会情報>関東甲信越地区国立大学法人等職員合同説明会  https://ssj.adm.u-tokyo.ac.jp/seminar/  
②マイナビ(東京大学地震研究所の採用情報掲載ページ)からの申し込みhttps://job.mynavi.jp/24/pc/search/corp270574/outline.html
③以下のFormsからの申し込み  https://forms.office.com/r/PbJX69kuth 

※現地説明会への参加申し込みは、②または③の方法によりお申込みください。
※説明会申込受付後、開催情報等をメールでお知らせします。


☆リクルート情報の詳細はこちらのページをご覧下さい。
東京大学地震研究所 https://www.eri.u-tokyo.ac.jp/recruitinfo/
マイナビ24(東京大学地震研究所)https://job.mynavi.jp/24/pc/search/corp270574/outline.html
東京大学職員採用情報 https://www.u-tokyo.ac.jp/recruit/info/index_j.html


お問合せ:
東京大学地震研究所庶務チーム(人事担当)
電子メール:jinji%eri.u-tokyo.ac.jp(%を@に置き換えてください。)
電話:03-5841-5668

Friday Seminar (24 February 2023) Danijel Schorlemmer (GFZ Potsdam)

Title: High-resolution exposure and sensor deployments: Chances for seismology and risk research

 

Abstract:

The substantial reduction of disaster risk and live losses, a major goal of the Sendai Framework by the United Nations Office for Disaster Risk Reduction (UNISDR) requires a clear understanding of the dynamics of the built environment and how it affects, in case of natural disasters, the life of communities, represented by local governments and individuals. Communities that participate in risk assessments increase their understanding of efficient risk mitigation measures. Our Global Dynamic Exposure model and its technical infrastructure build on the involvement of society in a crowd-sourced approach. Simultaneously, it helps educating communities in the risks they are facing and how they can prevent losses of lives.

 

We are in the process of creating super high-resolution data products for better assessment of seismic risk. Based on the plethora of open data and volunteer geographic information like OpenStreetMap, we have created a super high-resolution and dynamic exposure model that attempts to characterize probabilistically every building on Earth for better risk assessments. We are employing a crowd-sourced capturing of exposure indicators using OpenStreetMap (OSM), an ideal foundation with already more than 500 million building footprints (growing by ~150’000 per day), and information about school, hospital, and other critical facilities. With our OpenBuildingMap system, we are harvesting this dataset by processing every building in near-realtime. We are collecting exposure and vulnerability indicators from explicitly provided data (e.g. hospital locations), implicitly provided data (e.g. building shapes and positions), and semantically derived data, i.e. interpretation applying expert knowledge. The expert knowledge is needed to translate the simple building properties as captured by OpenStreetMap users into a probabilistic assessment of vulnerability and exposure indicators and subsequently into probabilistic building classifications as defined in the Building Taxonomy 2.0 developed by the Global Earthquake Model (GEM). With this approach, we increase the resolution of existing exposure models from aggregated exposure information to building-by-building vulnerability.

 

Simultaneously, we have started with dense acceleration-sensor deployments in the wider Tokyo area. We have explored the utility of the smartphone-type sensors built into small devices directly plugged to power outlets in the wall for the use by volunteers and companies. We deployed 10 devices to private people in the Zama region in 2021 and 50 devices in the larger Tokyo region in 2022 for about a half year each. Additionally, we have equipped the 48-story Tokyo Metropolitan government building in Shinjuku, Tokyo, with many devices on floors ranging from 1st to 44th, and one 6-story building of the Tokyo Narita International Airport with many devices on four floors. All devices have provided us with both three-component acceleration records and seismic intensities in the Japan Meteorological Agency (JMA) scale, which is familiar to non-professional Japanese people. The measured seismic intensities on different floors and within the same floor show a variety of values different to the reported JMA intensity for the wider area. Also, we have obtained human assessments of experienced seismic intensity.

 

We want to present our future plans for massive sensor deployments and their goals. We are planning to expand the experiment to more than 1000 households in the Tokyo area for better defining the needs of homeowners, tenants, or facility managers. Further plans include equipping neighboring buildings with sensors in order to estimate the ground-motion variability on small spatial scales to better understand the necessary measuring bandwidth for ground motions and intensities. A collaboration with ISC will show how the sensor data can be used for improving overall seismic networks in terms of location uncertainty and initial localization speed.

 

 

 

第1022回地震研究所談話会開催のお知らせ

下記のとおり地震研究所談話会を開催いたします。

ご登録いただいたアドレスへ、開催当日午前中にURL・PWDをお送りいたします。
なお、お知らせするzoomURLの二次配布はご遠慮ください。また、著作権の問題が
ありますので、配信される映像・音声の録画、録音を固く禁じます。

                   記

    日  時: 令和5年2月17日(金) 午後1時30分~ 

    開催方法: インターネット WEB会議

1. 13:30-13:45

演題:数値モデルとレーダー観測による噴煙柱の3次元再構築 【短期招聘研究員成果報告】

著者:○Magfira SYARIFUDDIN (State Agriculture Polytechnic of Kupang) 、鈴木雄治郎

要旨:We incorporate the velocity estimates from a weather radar observation into a three-dimensional (3D) numerical model to reconstruct the volcanic ash column of a VEI-2 eruption in Sinabung, Indonesia, on 19 February 2018.

2. 13:45-14:00

演題:小型磁気センサーを用いた磁場観測装置の開発状況の報告【所長裁量経費成果報告】

著者:○臼井嘉哉

要旨:小型磁気センサーであるMIセンサーを用いた地磁気観測装置の開発を行っている。本発表では開発の現在の進捗状況を報告する。

3. 14:00-14:15

演題:Detection and analysis of seismoacoustic wavefield of Popocatepetl volcano, Mexico

著者:○Gerardo MENDO-PEREZ、 Alejandra ARCINIEGA-CEBALLOS(UNAM, Mexico)、Robin MATOZA(UCSB, United States) 、Alejandro ROSADO-FUENTES (UNAM, Mexico)

要旨:We present the infrasound and seismic signals associated to the explosive activity of Popocatepetl volcano.

4.14:15-14:30

演題:ブロードバンド・バイブレーター震源を用いた超高分解能反射法地震探査による活断層の構造イメージングの可能性【所長裁量経費成果報告】

著者:○石山達也、中西利典(ふじのくにミュージアム)、加藤直子(日本大学)

要旨:「大規模伏在活断層の構造・活動性解明プロジェクト室」の一環で、駿河トラフ陸上延長部の伏在断層の構造的な特徴と完新世後期〜歴史時代の活動について、ボーリング調査・高分解能反射法地震探査などに基づき検討した結果を報告する。

5.14:30-14:45

演題:「地震記象が少ない時代の『やや大きい地震』総覧充実」プロジェクト室

【所長裁量経費成果報告】

著者:○石瀬素子・酒井慎一・中川茂樹、石辺岳男(地震予知総合研究振興会)、

室谷智子(国立科学博物館)

6.14:45-15:00

演題:2023年トルコ南部の地震:強震動

著者:〇三宅弘恵、山中浩明(東京工業大学)、近藤久雄(産業技術総合研究所)、Ozgur Tuna OZMEN(トルコ災害緊急事態対策庁)、Aysegul ASKAN(中東工科大学)、

Gulum TANIRCAN(ボアジチ大学カンデリ地震観測研究所)

○発表者

※時間は質問時間を含みます。

※既に継続参加をお申し出いただいている方は、当日zoomURLを自動送信いたします。

※談話会のお知らせが不要な方は下記までご連絡ください。

〒113-0032 東京都文京区弥生1-1-1 

東京大学地震研究所 共同利用担当

E-mail:k-kyodoriyo(at)eri.u-tokyo.ac.jp

※次回の談話会は令和5年3月17日(金) 午後1時30分~です。

Friday Seminar (17 February 2023) Bernd Schurr (GFZ Potsdam)

Squeezing and lifting – modes of long-term forearc deformation in the Northern Chile subduction zone

Bernd Schurr, GFZ German Research Centre for Geosciences

Subduction zone forearcs deform transiently and permanently due to the frictional coupling with the converging lower plate. Transient stresses are mostly the elastic response to the seismic cycle. Permanent deformation is evidenced by forearc topography, upper plate faulting and earthquakes; its relation to the megathrust seismic cycle is debated. Here we study upper plate seismicity in the northern Chile subduction zone as a proxy for forearc brittle deformation. We find that seismicity is distributed unevenly and a dramatic increase correlates both with a break in the morphology and tectonics of the Coastal Cordillera and the onset of a change in subduction obliqueness. Earthquakes in the South American crust under the sea and under the Coastal Cordillera show a remarkably homogenous north-south, i.e., trench-parallel, compressional stress field. Earthquake fault mechanisms are dominated by trench-perpendicular thrusts. Further inland, where the lower plate becomes uncoupled, the stress field is more varied with direction east-west to southeast-northwest (approx. convergence parallel) dominating. The stress-regime above the plate-coupling-zone, almost perpendicular to plate convergence direction, may be explained by a trench-parallel strain component from a change in subduction obliqueness due to the concave shape of the plate margin, which we demonstrate by investigating inter-plate earthquake slip vectors. From these, we derive a strain rate estimate and compare it to one derived from upper plate earthquakes. In the southern part of our study area, where convergence obliqueness is constant, upper plate seismicity is sparse, but Coastal Cordillera elevation and the uplift rate are higher than in the north. A new relocation of two megathrust earthquake aftershock sequences reveals a flat-ramp-flat structure that we interpret as underplating of a 3 km thick slice of eroded material and/or oceanic crust. This structure is also visible in the residual gravity field and in a tomographic model of the region. Our study demonstrates thus two very different mechanisms of forearc thickening active on two neighboring segments of a subduction zone.

 

2023年2月6日トルコ南部の地震

ウェブサイト立ち上げ:2023年2月8日

最終更新日:2023年2月10日16:00


その他のQ&Aをこのページの最後に掲載してあります。お問合せは orhp@eri.u-tokyo.ac.jp までおよせください。


2023年トルコ南部の地震 強震動

2023年2月8日版
災害科学系研究部門 三宅 弘恵 准教授

2023年2月6日現地時間4:17(日本時間10:17)にトルコ南部の東アナトリア断層沿いでM7.8の地震が発生した。その後、M6.7を含む活発な余震活動が続いた後、約9時間後の2月6日現地時間13:24(日本時間19:24)、M7.8の地震からやや離れた北側の別の断層付近でM7.5の地震が発生した。

Fig. 1. M7.8(下の赤丸)とM7.5(上の赤丸)の地震の震央(AFADの図面に加筆)

地震の規模と深さは、研究機関によって値が異なっている。
M7.8の地震
USGS →Mw7.8 深さ17.9 km
Global CMT→ Mw7.8 深さ14.9 km(非ダブルカップル成分が多い)
AFAD →Mw7.7 深さ 8.6 km
M7.5の地震
USGS→ Mw7.5 深さ10.0 km(非ダブルカップル成分が多い)
Global CMT→ Mw7.7 深さ12.0 km(非ダブルカップル成分が多い)
AFAD→ Mw7.6 深さ7.0 km

近年に内陸で発生したM7.8程度の地震は、2008年の中国・四川地震(Mw7.9)や、2002年の米国・アラスカのデナリ地震(Mw7.9)、2001年中国・崑崙地震(Mw7.8)などがある。しかし、今回のように、ほぼ同程度の地震規模の続発地震は発生していない。

今回のトルコのM7.8の地震は、東アナトリア断層沿いにおいてかねてから1513年の大地震以降に指摘されていた地震の空白域(Fig. 2の水色部分)に沿って、震源から主に北東に向かって破壊した。東アナトリア断層はアナトリアマイクロプレートとアラビアプレートを境界とする左横ずれ断層である。USGSの震央位置と既往の活断層図(トルコMTA発行,Emre et al., 2013)から判断して、破壊の開始は北西傾斜の正断層(ナルリ断層)から始まり、東アナトリア断層に乗り換わった後、北東方向への主破壊が生じたとみられる。一方、M7.5の地震は、東アナトリア断層から派生した、東西方向の左横ずれ断層であるチャルダック断層(旧称:エルビスタン断層)が主に破壊したと考えられる。震央位置は同断層の中央付近に位置するため、双方向に破壊が伝播したとみられる。付近では、歴史地震(例えばAmbraseys, 2009)が確認されている。

Fig. 2. トルコMTAとKürçer et al. (2020) による東アナトリア断層の主要セグメントと歴史地震 (Sayın et al., 2021)。M7.8の地震は、主に水色の部分を破壊したと考えられる。

トルコでは、このような事態に備えて強震観測を全土で整備しており (Fig. 3)、アンカラのAFADから強震記録が公開されている。M7.8の地震もM7.5の地震も、加速度・速度・変位のいずれも大きな強震動が、断層に沿って広範囲で観測されており、断層のすべりが原因と思われる周期1~2秒程度のパルス的な波形も確認されている。現時点では最大加速度が880 cm/s2程度、最大速度が187cm/s程度(AFADのフィルターに拠る)、最大速度応答が400 cm/s程度である。M7.8とM7.5の地震のうち、最大速度がそれぞれ大きな観測点をFig. 4とFig. 5に示す。

今回の地震は、内陸で発生するM7.8やM7.5の大地震として、加速度としては概ね想定されるレベルであるが、被害に関係する速度が大きい特徴がある。地震規模が大きいため、相当広い範囲が強い揺れに見舞われたと考えられる。

なお、強震記録は収録が途中で断絶している観測点もあり、AFADが精査中であるため、情報の更新が待たれる。断層周辺のHatay県やKahramanmaras県の強震観測点における地盤調査(Özmen, Yamanaka et al., 2017)も参考になる。

Fig. 3. トルコの強震観測点分布(AFAD提供)
Fig. 4. M7.8の地震の強震動の例(Hatay県の3123観測点;建築研究所ViewWaveを使用)
Fig. 5. M7.5の地震の強震動の例(Kahramanmaras県の4612観測点;建築研究所ViewWaveを使用)

Q (Elif Karaca, NASIL BİR EKONOMİ) and A (三宅 弘恵 准教授/楠 浩一 教授)

Q:なぜこれほどの被害が出たのか? Mや震度が大きかったのか,建造物の強度不足だったのか?

(三宅)自然現象の原因としては,地震規模が大きく,そのため揺れが広範囲で大きくなった.しかも内陸の地震なので,揺れた場所のほとんどが海ではなく陸である.自然現象以外の原因として,それなりに人口がある地域で,かつ構造物がそれほど頑丈ではなかったため,これらの要素が複合的に組み合わさって,これほどの被害が生じたと考えられる.

(楠)地表面加速度が大きかったこと、つまり、いくつかの地点で兵庫県南部地震の際のJR鷹取、熊本地震の特の益城の記録にも匹敵していた可能性があります。そのため、中層に至るまでの建物に被害が広がっています。なお,建造物が強度不足かどうかは、設計図書等を精査しないとわかりません。ちなみに最新のトルコの耐震規定は、ユーロコードも参考にしており、最先端です。

Q:日本もまた地震国であるのに,最近の被害ははるかに少ないように思われる.日本では地震への対処をどうしているのか?

(三宅)戦後の日本は,これほどの地震規模の地震を人口密集地で経験していない.来たるべき地震災害に備えて,構造物,鉄道,高速道路,水道・電力・ガスなどのインフラの整備を継続的に行い,見直しを続けている.

(楠) 我が国の耐震規定は、大きな地震被害を被る度に適切に改正されてきました.従って,今日の設計基準は地震被害を抑えることにある程度貢献しています。問題は、既存建物です。改正建築基準法は既存建物には遡及されません。そのため、改正してもその効果が表れるのに結構時間がかかってしまいます。その教訓から、兵庫県南部地震以降、耐震改修促進法を制定し、既存建物の耐震診断・耐震補強を推進してきたことも大きな理由です。なお、トルコにも耐震診断・補強の手順はあります。

Q:トルコにおける地震被害軽減のため,何をすべきと考えるか?

(三宅)構造物を地震に対して強くすることが必要と考えられる.近年被害地震が起きていない場所を優先して,構造物を点検することも有用であろう.今回は,東アナトリア断層帯で地震が発生したが,北アナトリア断層帯では,次にイスタンブール周辺が地震の空白域と言われており,すでにトルコでは行われている啓発活動等の活性化も有効であろう
(例えば,下記の図面を参照,前回のSATPRESトルコの図面)
https://www.jst.go.jp/global/kadai/image/h2408_turkey/photo0_l.jpg

(楠)まずは建物の年代・設計法・地盤状況と被害の関係を調査し、同時に古い基準で設計された建物の耐震診断・補強を進めることだと思います.