図1.海底地震観測網(黄色の四角:数字は観測点番号)によって捉えられた浅部低周波微動の震央分布(丸印:色は発生日時を示す).オレンジの丸は小繰り返し地震(プレート境界で繰り返し発生するM2~4程度の地震:Yamashita et al., 2012),緑の太線は大陸プレート下に沈み込んでいる九州パラオ海嶺の外縁(Yamamoto et al., 2013),赤い矢印はフィリピン海プレートが大陸プレート下に沈み込む方向(Miyazaki and Heki,, 2001)を示している.グレーの領域は,それぞれ1968年日向灘地震,1996年10月・12月日向灘の地震で地震時に大きくすべった領域を示す(八木・他, 1998; Yagi et al., 1999).
成果 約3ヶ月の観測期間中,通常の地震とは異なるシグナルが2013年5月下旬から約1ヶ月間に渡り海底地震計で記録されました.波形の特徴や震源決定の結果(図2)から,このシグナルはプレート境界浅部で発生する低周波微動(浅部低周波微動)であり,日向灘では今回の海底地震観測によって初めて検出されました.浅部低周波微動は,これまでに紀伊半島沖で観測されたことがありますが(Obana and Kodaira, 2009),本共同研究グループは,浅部低周波微動活動の詳細や,他のスロー地震との関係など,いくつかの重要な特徴が明らかにし,プレート境界浅部すべりについての新たな知見を得ました.
海底地震計により詳細に求められた浅部低周波微動の移動経路と,通常の地震が発生する深さ10~30kmにおけるプレート境界の固着の程度を比較したところ,浅部低周波微動の活動域はプレート境界の固着が弱い領域の浅部側に限定されており,固着が強い領域を避けて移動していることが分かりました.すなわち,浅部低周波微動はプレート境界の固着の程度をよく反映した現象であると考えられ,固着が弱い領域の浅部側ではスロー地震活動が広範囲にわたり活発で,移動現象も明瞭に見られると考えられます(図5).また,本共同研究グループは,本研究領域に南東から沈み込んできている九州パラオ海嶺についても新たな知見を得ました.九州パラオ海嶺はフィリピン海プレート上の海底山脈で,その東西で地殻構造が大きく異なっていることから,地震時の高速滑りを止める「セグメント境界」の役割を果たすと考えられています(Yamamoto et al., 2013).しかし,本研究で検出された浅部低周波微動は,九州パラオ海嶺を乗り越えて移動していることが明らかになりました.このことは,スロー地震のようなゆっくりとしたすべりに対しては,九州パラオ海嶺がセグメント境界の役割を果たさないことを示しています.
図2.海底地震観測網(黄色の四角:数字は観測点番号)によって捉えられた浅部低周波微動の震央分布(丸印:色は発生日時を示す).オレンジの丸は小繰り返し地震(プレート境界で繰り返し発生するM2~4程度の地震:Yamashita et al., 2012),緑の太線は大陸プレート下に沈み込んでいる九州パラオ海嶺の外縁(Yamamoto et al., 2013),赤い矢印はフィリピン海プレートが大陸プレート下に沈み込む方向(Miyazaki and Heki,, 2001)を示している.グレーの領域は,それぞれ1968年日向灘地震,1996年10月・12月日向灘の地震で地震時に大きくすべった領域を示す(八木・他, 1998; Yagi et al., 1999).
今回の地震の震央(破壊開始点)と6時間以内の余震を図2にプロットし,それらに基づいて165 x 105 kmの震源断層を推定した. これまで,ネパール地域の巨大地震は,浅い衝突部を中心に発生すると考えられていたが(たとえば図3),今回の地震の震源断層はその北側のやや深い部分(図1の沈み込み部分)にあり,従来の想定や研究結果(Sapkota et al., 2013など)とは異なっている.
遠地実体波をデータとしてKikuchi and Kanamoriの方法により震源インバージョンを行った.その結果,Mw(モーメントマグニチュード)7.9の震源過程モデルが得られた.このモデルによるすべり分布(最大すべり4.3 m)を,余震分布等に重ね描いたものが図4である.大きなすべりの領域が余震の発生が少ない領域と重なるのは,過去の地震の経験則と調和的である.また,カトマンズが大すべり域にかかってしまっていることは当地の大きな被害に関連があると考えられる.
Araya, A.; Takamori, A.; Morii, W.; Hayakawa, H.; Uchiyama, T.; Ohashi, M.; Telada, S.; Takemoto, S. Analyses of far-field coseismic crustal deformation observed by a new laser distance measurement system. Geophys. J. Int.2010, 181, 127–140.
今年も技術研修会が1月に開催され、全国から技術職員が集った。今年の所外研修はJAMSTECを訪問。
Technical personnel in universities all over Japan gathered in ERI for the annual training session. This year’s study tour was visit to JAMSTEC.