アウトリーチ,国際共同研究,若手育成・教育推進,技術支援」カテゴリーアーカイブ

4.1.1 広報アウトリーチ活動の実績

(1) ウェッブサイト

地震研究所の公式なウェブサイトは,社会への情報提供のための重要なツールである.広報アウトリーチ室ではこれまで,ニューストピックス,地震・火山情報の発信などを整備し,運営・管理を行ってきた.2013年度以降は,所の最新の研究活動をより広く知って貰うため,最近の研究を紹介する欄を設け,研究成果として論文に公表された内容を一般の方にも判るような解説を付けてウエブサイトにアップするコーナーを立ち上げた.また,2014年11月にサイトを大幅にリニューアルして,よりシンプルなトップページと整理された階層構造を整えて,ウエブサイトによる情報発信の強化を図った.さらに2021年には,ウエブアクセシビリティ等に配慮した新たなウェブサイトへの移行を開始し,2022年に一応完成した.

地震研究所の最新の研究活動に関する情報を掲載するウエブサイトの維持管理と情報発信に務めるとともに,大規模な地震・火山活動時には,国内外を問わず,すみやかに地震・火山情報のページを設け,地震研究所の観測・研究情報や解説記事などを迅速に提供している.2022年には,1月15日に発生したフンガ・トンガ-フンガ・ハアパイ火山の噴火,および3月16日に発生した福島県沖地震に関する観測・研究速報の情報発信を行った.トップページには,所員が出版した最新の論文についての解説を「最近の研究から」として掲載し,順次入れ替えを行っている.また,「お知らせ」「シンポジウム」「受賞」等の情報の掲載を頻繁に行い,所内外への広報アウトリーチ活動を遅滞なく進めた.

(2)印刷物・グッズ

所内研究者の研究や所外研究者との共同研究の成果を公表・発信するために,広報誌・要覧などの印刷物を出版するとともに,ウエブサイトで公開している.

広報誌は「地震研究所広報」から電子媒体のみの「地震研究所ニュースレター」(2005 年より 30 回発行) を経て,2008 年より紙媒体の広報誌「ニュースレター Plus」を発行している.4ページのコンパクトな紙面に,特集記事とトピックスを一般の読者を意識して分かりやすく解説するよう努め,学内・行政・審議会・メディア等の関係者や地球科学関係の学科等がある大学や首都圏の高校,図書館等に送付するほか,全構成員,一般公開の参加者や公開講義等でも配布している.執筆・デザインには外部のライターやデザイナーの協力も得て,質の高い広報誌を目指している.2022年には「ニュースレター Plus」を3回(第37-39号)発行し,地震研究所の最新の研究成果を紹介した.

世界及び日本の震源地図のポスターは最新の地震活動データを加えた改訂版を作成しているが,2020―2022年は更新を行なわなかった.コロナ感染終息後の見学や出展再開に備え,鯰絵や要石等をデザインした絵葉書,世界・日本震源地図,地震研パンフレット(日本語),震源クリアファイル,地震研ロゴ入り布製バッグ(A4サイズ)を,また2021年に新規製作した地震波形入りの手ぬぐい,マスキングテープを追加で製作した.加えて,1923年関東地震の波形をあしらった配布物を2点,製作した(大森式地震研による波形を表面に印刷した防災グッズ(パンの缶詰),日本で初めて使用されたEwing型地震計による地震波形を印刷したハンカチ).さらに新たなデザインの鯰絵をデザインした絵葉書4点を製作した.

これらの配布物は,一般公開・ラボツアー・所内見学に訪れた来場者,学会での出展ブースで来訪者に配布し,地震活動の理解への啓発に向け活用した.波形手ぬぐいとマスキングテープを,東大ショップ(UTCC)にて販売を開始した.また2023年に関東地震発生から100年が経過することから,関連イベントにおいて配布するなど,活用する予定である.

(3)関連学会へのブース出展

学会に参加する研究者,学生・生徒への普及活動として,これまで日本地球惑星科学連合大会,日本地震学会,国際学会 (EGU,AGU,AOGS,IAVCEI・IASPEI等) に,地震研究所としての展示ブースを出展し,研究所の活動や成果,開発機器等の紹介を務めてきた.2022年は, 5月に開催されたJpGU大会に対面で出展し,地震研の研究活動と共同利用や国際室の各種募集情報を紹介した.2022 AGU Fall Meetingには,国際室との協働により対面で出展(米国シカゴ)し,地震研究所の教育研究活動の紹介に努めた.

(4)一般公開・公開講義・国際文化交流

地震研究所では,地震や火山の基礎研究,地震火山災害の軽減に関する研究などを直接的に社会に伝達することも重要な責務であり,学生や市民を対象に研究所の一般公開を実施している.2009年までは一般公開に合わせて公開講義を実施してきた.2010年から2013年までは,1月から3月に公開講義を開催したが,2014年からは,一般公開の時期に公開講義を実施している.2022年は,東京大学のオープンキャンパス(オンライン)の日程に合わせて,8月3日に研究活動のWeb展示と,学生実験及び公開講義をライブ配信した.

2022年8月27日~9月16日に国際室主導で開催された「JSTさくらサイエンスプログラム」では,アジアの大学から8名の学生を招聘した.その中で,9月7日に,日本の文化体験として生け花教室を開催した.

(5)所外からの問い合わせ・講演依頼等への一元的な対応

社会の関心が高い研究を進めている研究機関として,一般の方からの様々な問い合わせに対応するため,地震研究所ホームページに「問い合わせ」欄を設け,広報アウトリーチ室が窓口となる体制を整えている.また,所外(政府省庁,地方公共団体,防災関係機関,学会,教育委員会,中学・高校)からの講演依頼については,所内の教職員の協力のもと,本務である研究・教育活動に支障がない範囲でできるだけ対応する方針をとっている.2022年には197件の問い合わせがあった(うち取材依頼が58件,講演依頼が13件,見学問い合わせが26件).

(6)見学,ラボツアーの実績

中学生・高校生・大学生・研究者及び地方あるいは国の行政機関,学校教員,関連企業などからの地震研究所の訪問・見学の希望については,できるだけ受け入れる方針で対応している.訪問・見学者に対しては,希望により所内教員の協力を経て地震火山に関する講義を行い,また所内研究施設(海底地震計,首都圏地震観測網,地震計博物館など)の見学(ラボツアー)を実施している.また,国際室と協力して,海外の研究機関や行政機関からの来訪者にも対応している.例年,国内外から50件,人数にして1500名以上の見学・訪問者があるが,コロナ禍の下,講義や施設見学の訪問者の受け入れは停止していた.2021年の夏以降感染者が減少したことなどから,感染対策に配慮した見学受け入れを再開した.2022年には,合計で13団体から約660名の見学が行われた.

(7) 報道対応及び報道関係者・防災関係者向けの教育

地震研究所における取り組みを一般に伝えるために,ウエブサイトや印刷物の他に,2012年以降は,報道機関からの取材依頼や問い合わせについても,広報アウトリーチ室が窓口となって一元的に受けつける体制を整備し,対応が可能と思われる適切な教員に受けて貰う形で応えている.また,教員が行った取材対応や講演会等の活動は,所内ページの「アウトリーチ活動報告」フォームから随時報告を受けている.
また,地震・火山の観測計画によっては地元自治体,住民の協力・理解を求めることが必要であり,それらの実施予定や重要な研究成果などについては東京大学本部広報課と緊密な連絡を取りながら,必要に応じてプレスリリースや記者会見等の手段による報道対応を行っている.

地震研究所の研究活動,研究成果をより的確に社会に伝えるためには,仲介者となる報道や行政機関,教育関係者などとの十分なコミュニケーションが不可欠である.国内外の地震・火山災害の解説や,地震研究所が取組む研究など,話題提供と意見交換を行う場として「地震火山防災関係者との懇談の場」を設けている. 2012年からは,「ニュースレターPlus」で取り上げた話題を報道関係者に掘り下げて詳しく紹介する試みを始めている.2022年は,「ニュースレターPlus」第37-39号の特集記事に関する懇談の場を,オンラインにて3回開催した.また,報道関係者や自治体防災担当者を対象に,地震・火山情報の基礎となる研究と予測の現状について意見交換を図る「地震・火山噴火予測研究のサイエンスカフェ」の第13~17回目を地震火山噴火予知研究協議会に協力してオンライン開催した.

4.4.2 総合観測室

担当教員 小原一成(教授,併任),篠原雅尚(教授,併任),大湊隆雄(教授,併任),酒井慎一(教授,併任)
技術職員 阿部英二,秋山峻寬,安藤美和子,藤田親亮,橋本 匡,増田正孝,宮川幸治,西本太郎,佐伯綾香,芹澤正人,田中伸一,八木健夫,渡邉篤志,辻 浩(小諸地震火山観測所)

平成22年4月の地震研究所における改組により,これまで個々の研究室に配属されていた技術職員のうち,主としてフィールドで観測研究の支援にあたる技術職員を総合観測室に集め,技術者集団として組織的に様々な観測支援依頼に対応し,研究所全体の観測研究をより高度化することを目的として体制を変更した.総合観測室では,従来から行ってきた観測開発基盤センター所管の観測機材の維持・管理や,地震・地殻変動・火山・強震・電磁気の観測所及び観測網の保守,データの処理や管理に加え,所内の他センター・部門が実施する観測研究の支援を行うようになった.更に,地震研究所が「地震・火山科学の共同利用・共同研究拠点」として,地震・火山研究分野における全国の大学・研究機関の中核的役割を担っていることから,全国の大学・研究機関による地震・火山の合同観測における観測支援やそれに利用する観測機材の貸出・管理・維持を行っている.
観測網や観測所の維持・管理業務については,それに従事する多くの技術職員が平成23-24年度に退職を迎えたが,順調に現世代の技術職員への引き継ぎが行われ,現在に至っている.更に,これまで研究室ごとに観測機材を管理していた非効率なシステムの改善を目指して全所的に観測機材を管理できる「機材管理システム」の構築や,全国の大学で地震データを共有する仕組みを支援する「データ流通・収集・処理の高度化を目指した作業部会」を技術職員が立ち上げ,業務改善に向けて自主的に励んでいる.
今後は,新たな研究の方向を見据えて,既存の観測所や観測網の整理・再構築を行い,学術の進展に従い,より柔軟な技術支援を実現できる体制を目指す必要がある.一方,研究活動の発展に伴って,技術職員の業務量が年々増加の一途をたどり,支援業務は概ね順調に行われているものの,技術職員の業務過多が深刻化しつつある.また,2020年に始まった新型コロナウイルス感染拡大は,消長を繰り返しながら継続しており,感染対策にも留意しながら業務を進める必要がある状況は今後も長期間続くと考えられるため,研究所の将来計画とも連動して,研究支援業務の内容・量を大幅に見直す時期に来ている.

主要な活動:

(1)陸域における地震/地殻変動観測研究の支援

  • 各観測所の庁舎維持管理
  • 各観測所データシステムの保守・記録の整理・保管
  • 定常地震及び地殻変動観測点の保守
  • 各観測所の地震・地殻変動データの収集状況及び機器動作状況の確認
  • 定常地震観測点・地殻変動観測点におけるデータ品質管理・処理
  • データ流通/収集/監視に必要なサーバ等の構築や保守
  • 地殻変動データの一次処理と共同研究利用者への提供
  • 四国南西部,九州東部における広帯域地震観測支援・保守・データ監視
  • 四国・東海に展開された臨時広帯域地震観測網の現地保守・観測点撤去・機材管理支援
  • 茨城県及び福島県域のオフライン稠密臨時観測支援
  • 茨城県および福島県域の準定常地震観測点の保守・データ監視
  • ひたちなか柏崎側線の臨時観測支援
  • 谷根千臨時地震観測点の設置・保守
  • 弥彦観測所の観測坑の閉鎖と地震観測点の移設準備
  • 内浦観測坑の閉鎖にむけた準備
  • 油壷地殻変動観測所の観測機器の移転の準備
  • 筑波地震観測所観測室の解体にむけた準備
  • 民間企業施設内の臨時地震観測点の撤収
  • 石川県珠洲市における臨時地震観測支援
  • 大井川上流部における臨時観測点の設置

(2)海域観測研究の支援

  • 自己浮上式海底地震計・圧力計の組立・解体
  • 自己浮上式海底地震計・圧力計の機材整備
  • 釜石海底地震計・津波計観測施設の維持・管理
  • 日本海海底地震観測所の維持・管理
  • 東北・千島沖および日向灘における地殻熱流量観測支援
  • 青森東方沖での自己浮上式海底地震計を用いた海底地震観測支援
  • 宮城沖での自己浮上式海底地震計を用いた海底地震観測支援
  • 紀伊半島沖での自己浮上式海底地震計を用いた海底地震観測支援
  • 南西諸島沖での自己浮上式海底地震計を用いた海底地震観測支援
  • 房総沖での自己浮上式海底圧力計を用いた海底地震観測支援
  • 日向灘での自己浮上式海底地震計を用いた海底地震観測支援
  • 日本海での自己浮上式海底地震計を用いた海底地震観測支援
  • 日本海でのエアガンとハイドロフォンストリーマを用いた反射法屈折法地震探査支援
  • 三陸沖光ケーブル式海底地震観測システムの未使用光ファイバを用いたDistributed Acoustic Sensing計測支援
  • 三宅島に流れ着いたガラス球OBSの回収

(3) 火山観測研究の支援

  • 浅間山,伊豆大島,霧島山の火山観測所の維持・管理
  • 火山定常観測網(浅間山,伊豆大島,富士山,霧島山)の維持・管理及びデータ処理
  • メタル回線を使用している各観測点の光回線への切り替え
  • 浅間山および霧島山における空中電界変動観測支援
  • 伊豆大島における臨時観測点の新設支援
  • 伊豆大島における地磁気絶対観測
  • 伊豆大島における海陸合同比抵抗構造探査支援
  • 富士山における臨時地震・空振観測支援
  • 三宅島における臨時観測点の保守支援
  • 父島における空振観測支援
  • 西之島における火山観測の準備
  • 無人航空機による火山観測支援およびマルチコプタの管理

(4) 電磁気観測支援

  • 八ヶ岳地球電磁気観測所の維持・管理
  • 八ヶ岳地球電磁気観測所における機器保守ならびに基準観測支援
  • 伊豆・東海地磁気観測点の観測点維持・管理・廃止
  • 北関東におけるMT観測支援
  • 南鳥島における地磁気絶対観測支援

(5)強震観測支援

  • 定常強震観測網及び観測設備の維持・管理・廃止・リアルタイム化
  • 油壷地殻変動観測所解体にともなう強震油壷観測点の移設にむけた準備
  • 共同強震観測網の観測支援
  • 強震観測データの回収、整理及びWebサーバでの公開
  • 強震観測データベースWebサーバのミドルウェアアップデート
  • 強震観測事業推進連絡会議への強震年報ならびに強震速報への掲載データの提出

(6)その他の国内観測・実験支援

  • 桜島と伊豆大島における絶対重力測定支援
  • 松代地震観測所の重力計保守の支援
  • 箱根・南足柄アレイ観測機材貸出および観測支援
  • 四国東部緻密地震観測の観測機材準備とデータ処理支援
  • 石川県珠洲市における稠密アレイ地震観測
  • 地震研究所及び東大赤門に設置されたIT強震計の保守支援
  • ミューオンによる跡津川断層透視のための観測準備作業
  • レーザー伸縮計を用いた歪観測
  • 石垣島におけるサンゴマイクロアトールの試料採取
  • 先島諸島で採取したサンゴマイクロアトールの試料整理と喜界島サンゴ礁科学研究所への輸送支援
  • 南海トラフ海底地震津波観測網(N-net)開発のための鋸山観測坑内試験支援

(7)国外における観測研究支援及びその関連業務

  • ニュージーランドでの自己浮上式海底地震計を用いた海底地震観測支援
  • メキシコでの自己浮上式海底地震計を用いた海底地震観測支援
  • チリでの自己浮上式海底地震計を用いた海底地震観測支援
  • ネパールに構築したオンライン地震観測網の技術移転支援
  • ペルーに供与する地震観測装置の試験・輸送及び技術移転支援
  • マリアナ東方沖海域でのBBOBS・OBEMを用いた観測アレイ構築支援

(8)観測機材の維持・管理業務

  • 共同利用・共同研究拠点機能としての観測機材貸与(観測機器の点検・準備・発送)
  • オンライン地震計及び地震観測システムの維持・管理,貸出
  • オフライン地震計及び地震観測システムの維持・管理,貸出
  • 電磁気機材及び観測システムの維持・管理,貸出
  • 機動強震観測システムの整備,維持・管理,貸出
  • 本所及び観測所の公用車の維持・管理
  • 機材管理システムの維持・管理・運用

(9)その他

  • 地震計博物館・一般公開・ラボツアーに対する支援
  • 研修運営委員会業務
  • 技術研究報告編集委員会業務
  • 一般公開WG業務
  • CERT委員会業務
  • 部屋割検討委員会業務
  • 地震火山災害予防賞選考委員会業務
  • 百周年記念誌編纂準備WG業務
  • 報道取材(NHK・読売新聞など)対応
  • 広報アウトリーチ向け動画撮影への協力

4.1.2 委員等派遣による国・自治体等の防災対策への貢献

地震及び火山現象の解明とその防災・減災に関連する研究が目的のひとつとなっている地震研究所にとって,国や自治体における地震・火山防災に関連する委員会等への貢献は,研究成果を社会へ還元する取り組みである「アウトリーチ活動」の一環として,重要な意味を持っている.2022年も,延べ100名を越える委員等の派遣をしており,国や地方自治体の防災対策に大きな貢献を果たしている.

4.1.1 広報アウトリーチ活動の実績

(1)ウェブサイト

所の公式なウェブサイトは,社会への情報提供のための重要なツールである.広報アウトリーチ室ではこれまで,ニューストピックス,地震・火山情報の発信などを整備し,運営・管理を行ってきた.2013年度以降は,所の最新の研究活動をより広く知って貰うため,最近の研究を紹介する欄を設け,研究成果として論文に公表された内容を一般の方にも判るような解説を付けてウェブサイトにアップするコーナーを立ち上げた.また,2014年11月にサイトを大幅にリニューアルして,よりシンプルなトップページと整理された階層構造を整えて,ウェブサイトによる情報発信の強化を図った.さらに2021年には,ウェブアクセシビリティ等に配慮した新たなウェブサイトへの移行を開始し,2022年に一応完成した.

地震研究所の最新の研究活動に関する情報を掲載するウエブサイトの維持管理と情報発信に務めるとともに,大規模な地震・火山活動時には,国内外を問わず,すみやかに地震・火山情報のページを設け,地震研究所の観測・研究情報や解説記事などを迅速に提供している.2022年には,1月15日に発生したフンガ・トンガ-フンガ・ハアパイ火山の噴火,および3月16日に発生した福島県沖地震に関する観測・研究速報の情報発信を行った.トップページには,所員が出版した最新の論文についての解説を「最近の研究から」として掲載し,順次入れ替えを行っている.また,「お知らせ」「シンポジウム」「受賞」等の情報の掲載を頻繁に行い,所内外への広報アウトリーチ活動を遅滞なく進めた.

(2)印刷物・グッズ

所内研究者の研究や所外研究者との共同研究の成果を公表・発信するために,広報誌・要覧などの印刷物を出版するとともに,ウェブサイトで公開している.

広報誌は「地震研究所広報」から電子媒体のみの「地震研究所ニュースレター」(2005 年より 30 回発行) を経て,2008 年より紙媒体の広報誌「ニュースレター Plus」を発行している.4ページのコンパクトな紙面に,特集記事とトピックスを一般の読者を意識して分かりやすく解説するよう努め,学内・行政・審議会・メディア等の関係者や地球科学関係の学科等がある大学や首都圏の高校,図書館等に送付するほか,全構成員,一般公開の参加者や公開講義等でも配布している.執筆・デザインには外部のライターやデザイナーの協力も得て,質の高い広報誌を目指している.2022年には「ニュースレター Plus」を3回(第37-39号)発行し,地震研究所の最新の研究成果を紹介した.

世界及び日本の震源地図のポスターは最新の地震活動データを加えた改訂版を作成しているが,2020―2022年は更新を行なわなかった.コロナ感染終息後の見学や出展再開に備え,鯰絵や要石等をデザインした絵葉書,世界・日本震源地図,地震研パンフレット(日本語),震源クリアファイル,地震研ロゴ入り布製バッグ(A4サイズ)を,また2021年に新規製作した地震波形入りの手ぬぐい,マスキングテープを追加で製作した.加えて,1923年関東地震の波形をあしらった配布物を2点,製作した(大森式地震研による波形を表面に印刷した防災グッズ(パンの缶詰),日本で初めて使用されたEwing型地震計による地震波形を印刷したハンカチ).さらに新たなデザインの鯰絵をデザインした絵葉書4点を製作した.

これらの配布物は,一般公開・ラボツアー・所内見学に訪れた来場者,学会での出展ブースで来訪者に配布し,地震活動の理解への啓発に向け活用した.波形手ぬぐいとマスキングテープを,東大ショップ(UTCC)にて販売を開始した.また2023年に関東地震発生から100年が経過することから,関連イベントにおいて配布するなど,活用する予定である.

(3)関連学会へのブース出展

学会に参加する研究者,学生・生徒への普及活動として,これまで日本地球惑星科学連合大会,日本地震学会,国際学会 (EGU,AGU,AOGS,IAVCEI・IASPEI等) に,地震研究所としての展示ブースを出展し,研究所の活動や成果,開発機器等の紹介を務めてきた.2022年は, 5月に開催されたJpGU大会に対面で出展し,地震研の研究活動と共同利用や国際室の各種募集情報を紹介した.2022 AGU Fall Meetingには,国際室との協働により対面で出展(米国シカゴ)し,地震研究所の教育研究活動の紹介に努めた.

(4)一般公開・公開講義・国際文化交流

地震研究所では,地震や火山の基礎研究,地震火山災害の軽減に関する研究などを直接的に社会に伝達することも重要な責務であり,学生や市民を対象に研究所の一般公開を実施している.2009年までは一般公開に合わせて公開講義を実施してきた.2010年から2013年までは,1月から3月に公開講義を開催したが,2014年からは,一般公開の時期に公開講義を実施している.2022年は,東京大学のオープンキャンパス(オンライン)の日程に合わせて,8月3日に研究活動のWeb展示と,学生実験及び公開講義をライブ配信した.

2022年8月27日~9月16日に国際室主導で開催された「JSTさくらサイエンスプログラム」では,アジアの大学から8名の学生を招聘した.その中で,9月7日に,日本の文化体験として生け花教室を開催した.

(5)所外からの問い合わせ・講演依頼等への一元的な対応

社会の関心が高い研究を進めている研究機関として,一般の方からの様々な問い合わせに対応するため,地震研究所ホームページに「問い合わせ」欄を設け,広報アウトリーチ室が窓口となる体制を整えている.また,所外(政府省庁,地方公共団体,防災関係機関,学会,教育委員会,中学・高校)からの講演依頼については,所内の教職員の協力のもと,本務である研究・教育活動に支障がない範囲でできるだけ対応する方針をとっている.2022年には197件の問い合わせがあった(うち取材依頼が58件,講演依頼が13件,見学問い合わせが26件).

(6)見学,ラボツアーの実績

中学生・高校生・大学生・研究者及び地方あるいは国の行政機関,学校教員,関連企業などからの地震研究所の訪問・見学の希望については,できるだけ受け入れる方針で対応している.訪問・見学者に対しては,希望により所内教員の協力を経て地震火山に関する講義を行い,また所内研究施設(海底地震計,首都圏地震観測網,地震計博物館など)の見学(ラボツアー)を実施している.また,国際室と協力して,海外の研究機関や行政機関からの来訪者にも対応している.例年,国内外から50件,人数にして1500名以上の見学・訪問者があるが,コロナ禍の下,講義や施設見学の訪問者の受け入れは停止していた.2021年の夏以降感染者が減少したことなどから,感染対策に配慮した見学受け入れを再開した.2022年には,合計で13団体から約660名の見学が行われた.

 (7) 報道対応及び報道関係者,防災関係者向けの教育

地震研究所における取り組みを一般に伝えるために,ウエブサイトや印刷物の他に,2012年以降は,報道機関からの取材依頼や問い合わせについても,広報アウトリーチ室が窓口となって一元的に受けつける体制を整備し,対応が可能と思われる適切な教員に受けて貰う形で応えている.また,教員が行った取材対応や講演会等の活動は,所内ページの「アウトリーチ活動報告」フォームから随時報告を受けている.

また,地震・火山の観測計画によっては地元自治体,住民の協力・理解を求めることが必要であり,それらの実施予定や重要な研究成果などについては東京大学本部広報課と緊密な連絡を取りながら,必要に応じてプレスリリースや記者会見等の手段による報道対応を行っている.

地震研究所の研究活動,研究成果をより的確に社会に伝えるためには,仲介者となる報道や行政機関,教育関係者などとの十分なコミュニケーションが不可欠である.国内外の地震・火山災害の解説や,地震研究所が取組む研究など,話題提供と意見交換を行う場として「地震火山防災関係者との懇談の場」を設けている.2012年からは,「ニュースレターPlus」で取り上げた話題を報道関係者に掘り下げて詳しく紹介する試みを始めている.2022年は,「ニュースレターPlus」第37-39号の特集記事に関する懇談の場を,オンラインにて3回開催した.また,報道関係者や自治体防災担当者を対象に,地震・火山情報の基礎となる研究と予測の現状について意見交換を図る「地震・火山噴火予測研究のサイエンスカフェ」の第13~17回目を地震火山噴火予知研究協議会に協力してオンライン開催した.

4.4 技術部

下記の2室は,全国共同利用研究所(H22年度より地震・火山科学の共同利用・共同研究拠点)としてより有機的な研究支援体制の確立を目的として,平成13年4月1日付けで設置された技術職員とそれを統括する担当教員で構成された組織(所内措置) である.

4.3 若手育成・教育推進室

教授 新谷昌人(室長),市村強,加藤愛太郎,望月公廣,清水久芳,竹内希
准教授 市原美恵,石山達也,前野深,三宅弘恵,西田究,綿田辰吾

次世代をになう大学院生・若手研究者の育成に全所的に取り組むことを目的とし,平成22年4月に行われた改組に伴い「若手育成・教育推進室」(以下『育成室』と呼ぶ)が設置された.育成室では,(1) 大学院理学系研究科地球惑星科学専攻の教務,(2) 大学院教育プログラムの企画・立案および調整,(3) 若手育成・教育に関する方針,(4) 学生に対する経済支援,(5) 本学におけるさまざまな教育活動,(6) その他研究所の若手育成・教育に関する重要事項,について地震研究所としての対応を検討・実施している.

令和4年度も,引き続き毎月1 回の定例の育成室会議(原則として教授会の一週間前の木曜日)を開催し,活動した.所外の教育関連の委員会には,理学系研究科教育会議(清水),地球惑星科学専攻教務委員会(西田,望月,綿田),地球惑星科学専攻幹事会(新谷,竹内),GSGCファカルティ―委員会(望月)のように,室員から委員を派遣した.また,理学部地球惑星物理学科の講義・演習の担当者の選定などにも組織的に対応している.

具体的な活動としては,修士論文の中間発表と大学院生およびポスドク研究員の研究発表を全所的に行う「学生week」の開催(11月14日–18日),博士課程学生を対象とした地震研リサーチアシスタント制度の実施,国内外の大学院生・学部生を一定期間受け入れるインターンシップ研修生制度の実施,大学院進学ガイダンスの実施(6月4日),固体地球科学関連官庁(国土地理院,海上保安庁,気象庁)による合同進路説明会の開催(2022年3月7日:理工連携キャリア支援室と共催、オンライン開催)などを行った.また,理学部地球惑星物理学科の学生を対象とした観測実習や実験演習には地震研究所から教員が非常勤講師として参加し,教育・指導を行った.さらに,教養課程の学生を対象とした初年次ゼミナールとして「地球の鼓動を聴いてみよう」(担当:西田准教授,馬場准教授)を開講した.COVID-19の影響により2020-2021年度に開講を見合わせていた初年次ゼミナールに関連した全学体験ゼミナールについては,2022年度は「火山との共生: 箱根火山を知ろう」(担当:前野准教授,行竹准教授)を開講し学部生22名が参加した.また,COVID-19の影響によりオンラインで授業やセミナー,学会が開催されていることに対応し,大学院生や研究員,助教が使用できるオンライン会議室の設置を継続した.

大学院教育の国際化に関連して,理学系研究科が開校したGSGC(国際卓越大学院,Global Science Graduate Course)に参加している.地震研に所属する大学院生に対し,海外の大学・研究機関に1~2ヶ月滞在し研究をおこなう活動を支援する「地震研究所学生海外派遣プログラム」に加え,地震研学生の研究発表を伴う海外渡航(滞在期間1~2週間程度)に関する航空運賃および滞在費の不足分を補助する「学生の海外渡航(短期)経費支援」を開始した。

4. アウトリーチ・国際共同研究・若手育成・教育推進・技術支援