【観測所紹介】広島地震観測所

地震研究所は全国で13の観測所(2023年4月時点)を展開しております。


 広島地震観測所は、地震研究所が保有する観測所の中で唯一公共交通機関のみだけでもたどり着ける観測所です。
 広島市内に位置するこの観測所は、第4次地震予知計画に基づき、有線PCMテレメータ方式による南海観測網を整備し西部地域での地震活動を把握するために1983年3月に開設されました。また、ここから16kmほど離れた山間部にある白木微小地震観測所(1965年設置)の観測機能(微小地震観測網および国際標準地震観測業務(WWSSN))も同時に引き継いでいます。

 観測所の敷地および県道を挟んだ山林にある無線中継施設の跡地は、いずれも東京大学の所有地となっております。


 2階建ての建物の中はデータ処理室、記録保管庫、機材倉庫、宿直室等から成り、多数の波形記録が保管されています。白木微小地震観測所の倉庫に置かれていた過去記録も、施設の老朽化に伴い2013年度にこちらに移設され保管されています。
 2000年代に入り他機関との観測点配置の関係により観測点の整理縮小が始まり、2006年以降はこの地域では白木地震観測所と愛媛県にある観測点の2か所のみでの観測となりました。技術職員の常駐が終了した2012年度末以降は、地震研究所本所からの施設の維持管理がされています。

【沿革】

1983年  3月に新庁舎および無線局設備が、広島市安佐北区落合に建設。
前身である白木微小地震観測所より観測機能の移転がされる。
1990年5月に白木観測点(現在の白木微小地震観測所)においてSTS-1型地震計(3成分)が設置され広帯域地震観測が開始。
1995年地震研究所改組によって「広島地震観測所」と名称が改められる。
2012年技術職員の常駐が終了。
2013-2014年大規模な施設整備がされ、設備が老朽化した白木微小地震観測所からの過去記録の移設がされる。


【文献】

・三浦勝美「広島地震観測所の変遷と震源データ」『技術研究報告( 東京大学地震研究所) No. 1』, 50-58, 1996 年

・森 健彦, 藤田親亮, 渡邉篤志, 外西奈津美, 田中伸一, 西本太郎 「広島地震観測所及び白木地震観測所における施設整理」『東京大学地震研究所技術研究報告』,No. 21,25-31 頁,2015 年

Friday Seminar (9 September 2024) Yajing LIU (McGill)

Title: Coupling fault slip and pore pressure evolution in dynamic rupture and earthquake sequence models

 

Abstract:

Pore fluid pressure plays a crucial role in fluid-infiltrated fault strength evolution hence the source processes of earthquakes and episodic slow slip events. Pore pressure in the fault zone increases due to strong shear heating during rapid slip, leading to a thermal pressurization dynamic weakening effect which favors a larger extent of rupture propagation and higher amount of coseismic slip. On the other hand, accelerated slip rate within the fault zone of highly compacted granular materials can also lead to a dilatancy strengthening effect which temporally reduces pore pressure hence clamps the fault before pore pressure re-equilibrates with the ambient level. In this presentation, I will discuss numerical simulations that couple the pore fluid pressure and fault slip evolution in the framework of the laboratory-derived rate-state friction law, with applications to earthquake ruptures and slow slip sequences in subduction zones, oceanic transform faults, as well as the fluid-injection induced seismicity environments. In particular, strong dilatancy can effectively inhibit seismic slip in frictionally unstable (velocity-weakening) regions, resulting in aseismic slip transients which not only serve as a rupture barrier to magnitude 6 earthquakes but may also drive episodic seismic swarms as observed along the East Pacific Rise transform faults. Preliminary results from our dynamic rupture model, with application to the 2008 Wenchuan magnitude 7.9 earthquake, also indicate that 3D fault geometry has a first-order control of the general distribution of coseismic slip whereas thermal pressurization influences the quantitative comparison to the near-field peak ground motion and cumulative slip.

小野寺 圭祐 特任研究員 AGU Editor’s Highlightを受賞

小野寺 圭祐 特任研究員が、AGU Editor’s Highlightを受賞しました。


受賞名:Editor’s Highlight
授与機関:American Geophysical Union
受賞日:2024年8月5日
受賞論文:Onodera, K. (2024). New views of lunar seismicity brought by analysis of newly discovered moonquakes in Apollo short-period seismic data. Journal of Geophysical Research: Planets, 129, e2023JE008153. https://doi.org/10.1029/2023JE008153

東北地方背弧のひずみ集中域の地下電気比抵抗構造の推定

臼井嘉哉1、上嶋誠1、長谷英彰2、市原寛3、相澤広記4、小山崇夫1、ほか10名 Usui, Y.1, Uyeshima, M.1, Hase, H.2, Ichihara, H.3, Aizawa, K.4, Koyama, T.1, et al. (2024).
Three-dimensional electrical resistivity structure beneath a strain concentration area in the back-arc side of the northeastern Japan arc.
Journal of Geophysical Research: Solid Earth, 129, e2023JB028522. https://doi.org/10.1029/2023JB028522

1東京大学地震研究所、2地熱技術開発株式会社、3名古屋大学大学院環境学研究科附属地震火山研究センター、4九州大学大学院理学研究院附属地震火山観測研究センター

 
東日本の日本海側では、平成16年の新潟県中越地震、平成19年の能登半島地震、新潟県中越沖地震等、令和6年の能登半島地震など大きな被害地震が発生しており、その多くはひずみ集中帯と呼ばれる領域で発生しています。図1aに東日本の日本海東遠部周辺のひずみ集中帯を示します。マグニチュード7以上の被害地震の震央も併せて示しており、その多くはひずみ集中帯で発生していることがわかります。測地学的研究により、日本海東遠ひずみ集中帯の南端部は上部地殻が低剛性であるのに対し、奥羽脊梁山脈ひずみ集中帯は下部地殻が低粘性であり、ひずみ集中のメカニズムが異なる可能性が指摘されていました。しかし、ひずみ集中のメカニズムが何故異なるかについてはその後研究が進んでおりませんでした。

 本研究では、ひずみ集中帯の成因や大きな内陸地震の発生のメカニズムについて理解を深化させるため、図1bに示す、複数のひずみ集中帯が隣接する領域で地下の電気比抵抗構造を推定しました。電気比抵抗は流体(水や溶けた岩石)の存在に敏感であり、流体が多く含まれる岩石は一般的に力学的に弱くなるため、ひずみ集中に関係する構造を明らかにする上で最も有効な物理量の1つです。

 図1cに、推定した電気比抵抗構造のうち、図1bの測線ABに添う鉛直断面を示します。庄内平野、新庄盆地に相当する浅部領域と奥羽脊梁山脈下の20km以深が顕著に低い比抵抗を示します。このうち前者は測地学的研究により上部地殻が低剛性であると推定された領域に対応します。このことは日本海東遠ひずみ集中帯の南端部は浅部の堆積層が低剛性体として振る舞うことによりひずみが集中していることを示唆します。一方、奥羽脊梁山脈下深部の顕著な低比抵抗域は測地学的研究により低粘性であると推定された領域に対応します。この深部低比抵抗域は高温かつ流体を多く含むことにより、低粘性体として振る舞い、その結果としてひずみ集中が起きていると考えられます。

 日本海東遠ひずみ集中帯と奥羽脊梁山脈ひずみ集中帯の間に存在する地質学的なひずみ集中帯は堆積盆地にあたる浅部が低比抵抗域であり、かつ、20km以深も比較的低い比抵抗を示します。日本海東遠ひずみ集中帯には日本海拡大時にできた断層が多数存在します(図1b)。浅部・深部の低比抵抗域が力学的な弱体として振る舞うことで断層への応力集中が起こり、その結果として内陸地震が発生することにより、地質学的な時間スケールでひずみ集中が起きている可能性があります。

 また、本研究対象領域ではマグニチュード5以上の地震の震央が中部地殻~下部地殻の比抵抗が比較的低い領域の縁に位置する傾向が認められ、地下の流体が大きな内陸地震の発生に寄与している可能性を示しました。さらに、鳥海山、月山の東側に低比抵抗域が存在することを明らかにしました。火山活動に関係する、流体に富む領域を示している可能性があります。

図1. (a) 日本海東遠周辺のひずみ集中帯とマグニチュード7以上の被害地震の震央 (b)研究対象領域 (c) 測線ABの下の電気比抵抗構造 (d) 測線ABの下の電気比抵抗構造の解釈図

2024年能登半島地震は流体を豊富に含む断層でのゆっくりすべりから始まった

Slow rupture in a fluid-rich fault zone initiated the 2024 Mw 7.5 Noto earthquake
Ma, Z.1, Zeng, H.1, Luo, H.2,1, Liu, Z.3, Jiang, Y.1, Aoki, Y. (青木陽介)4, Wang, W.3, Itoh, Y. (伊東優治)4,5, Lyu, M.1, Cui, Y.6, Yun, S.-H.1, Hill, E. M. 1, Wei, S. 1,7 (2024). Slow rupture in a fluid-rich fault zone initiated the 2024 Mw 7.5 Noto earthquake, Science, doi:10.1126/science.ado5143
1南洋理工大学(シンガポール) 2南方科技大学(中国) 3中国国家地震局
4東京大学地震研究所 5グルノーブル・アルプ大学(フランス) 6河海大学(中国)
7中国科学院

 
 能登半島では2020年ごろから群発地震が継続していたが,2024年1月1日にマグニチュード7.5の能登半島地震が発生し,大きな被害をもたらした.この地震によって生じた地表変形及び地震波の観測データを用いて、地震の発生機構の解明を試みた.能登半島地震の震源は2020年から続いていた群発地震の発生域にあたり,地下には流体が多く含まれているとされる.断層すべりを模した室内実験の結果等に基づき,流体の存在が高速の破壊伝搬を妨げることが指摘されていることから,2024年能登半島地震に伴う断層破壊は,その開始直後は流体の存在により高速で伝搬することができなかったものの,20秒程度経って流体の多い領域を抜けたことにより高速に伝搬することができるようになったと解釈した.このような、断層破壊の高速伝搬が能登半島地震の被害を大きくしたと考えている.

 図1は地震前後に撮像された様々な合成開口レーダー画像を用いて求められた3次元の地震時変位である.変位は能登半島北部に集中していることがわかる.能登半島北西部では最大約2.2 mの水平変位と最大約5 mの隆起が観測された.図1に星印で示されている震央付近でも2 mを越える水平変位と約2 mの隆起が観測された.
 図2A, Bに,観測された地表変形を説明できる断層すべりの空間分布を示す.断層滑りは能登半島北西部で最大10 mに達し,震央付近でも約7—8 mのすべりが発生したと推測される.次に,能登半島地震によって発生した遠地(北米およびオーストラリア)で観測された地震波動場を逆伝搬解析することにより,断層運動の時間発展を明らかにした.図1A, Bに大きなエネルギーが発生した場所を正方形および菱形の図形で表し,その発生時刻を示す色とで表現した.図1Cは大きなエネルギーが発生した場所を地震発生からの時間を横軸に,断層沿いの距離を縦軸に表示したものである.これによると,最初の20秒ほどは断層破壊の進展が遅かったがその後北東方向(図1Cの上方向)および南西方向(図1Cの下方向)に3 km/sという,一般的な地震の破壊伝搬速度と同じくらいの速度で伝搬したことがわかる.図2Dは地震波形の逆解析によりこれを地震発生から10, 20, 30, 40秒後までの断層すべり量のスナップショットとして推定したものである.
 より詳細な破壊開始メカニズムの理解には,最初の20秒程度のゆっくりとした断層破壊の過程を本研究の結果よりも詳細かつ網羅的に理解することが必要である.そのような詳細な解析は,能登半島沖地震の発生要因を理解するだけでなく,地震発生メカニズム一般の理解を進めるにあたり重要なことである.

図1:合成開口レーダーにより計測された能登半島地震にともなう3次元変位.水平変位はベクトルで,鉛直変位は色で示している.大きな変位は能登半島北部に集中し,最大約2.2 mの水平変位と約5 mの隆起が観測された.
図2:A. 合成開口レーダーにより観測された地表変形を説明する断層すべりの空間分布および地震波動場の逆伝搬解析により求められた大きなエネルギーが発生した場所(菱形および正方形).菱形や正方形の色は大きなエネルギーが発生した時刻を示している.B. A.を能登半島北端部について拡大したもの.C. 大きなエネルギーが発生した場所を断層沿いの距離(縦軸)に投影したもの.横軸は地震発生からの時間を示す.D. 地震波の逆解析により推定した地震発生から10, 20, 30, 40秒後までの断層すべり量の時間発展.

金曜日セミナー(2024年7月26日)岩森 光(日本列島モニタリング研究センター)、飯高 隆(地震予知研究センター)、臼井 嘉哉(地震予知研究センター)

題目:東北地方南部といわき地域の地下構造とダイナミクス:地震、電磁気、熱-マントル対流、流体循環の統合研究に向けて

 

要旨:
4月と5月の金曜セミナーにおいて、いわき地域の地震活動、地下構造と流体の分布・移動が議論された。いわき地域を含む東北地方南部では、沈み込んだフィリピン海プレートと太平洋プレートが折り重なり、複雑なマントルの流れや温度構造を生み出していると考えられている。これらがどのように関連するかを、地震-電磁気の構造、熱-マントル対流シミュレーション、推定される流体分布・循環といったさまざまな観点から統合的に議論を試みる。

【2024年8月6日(火) 一般公開・公開講義・オープンキャンパス】オンライン開催


【プログラム】

  • 学生実験 10:00-11:00
  • 研究最前線・技術部紹介 11:00-12:00
  • 公開講義 13:30-15:45
    「地震観測網の発達とスロー地震の発見」 小原 一成 教授
    「比抵抗構造研究から明らかになった内陸地震発生と地下流体との関係」 上嶋 誠 教授

詳細情報は確定次第、随時一般公開ホームページ(https://www.eri.u-tokyo.ac.jp/panko/)にてご案内しております。
ライブ配信以外にも期間中いつでもご覧いただけるオンデマンドコンテンツも公開予定です。
皆さまのご参加をお待ちしております。

第1038回地震研究所談話会開催のお知らせ

下記のとおり地震研究所談話会を開催いたします。

9月より対面での開催を再開しておりますので、地震研究所へお越しいただければ幸いです。

ご登録いただいたアドレスへ、開催当日にZoom URLとパスワードをお送りいたします。
なお、お知らせするZoom URLの二次配布はご遠慮ください。また、著作権の問題が
ありますので、配信される映像・音声の録画、録音を固く禁じます。

日  時: 令和6年7月19日(金) 午後1時30分~

場  所: 地震研究所1号館2階 セミナー室 
 Zoom Webinarにて同時配信

1. 13:30-13:45

演題:三陸沖ICT海底ケーブル観測システムによる地震津波長期モニタリング【所長裁量経費成果報告】

著者:○篠原雅尚・酒井慎一・山田知朗・塩原 肇

2. 13:45-14:00

演題:北関東地域の3次元電気比抵抗構造【所長裁量経費成果報告】

著者:○臼井嘉哉・上嶋 誠、坂中伸也(秋田大)、市來雅啓(東北大)、山谷祐介(産総研)、小川康雄(東工大・東北大)

3. 14:00-14:15

演題:A cuvilinear formulation and a NURBS based non-orthogonal coordinate system for improving accuracy of shell analysis

著者:○MADDEGEDARA Lalith・DHARMASIRI Kasun

○発表者
※時間は質問時間を含みます。
※既に継続参加をお申し出いただいている方は、当日zoom URLを自動送信いたします。
※談話会のお知らせが不要な方は下記までご連絡ください。

〒113-0032 東京都文京区弥生1-1-1 
東京大学地震研究所 共同利用担当
E-mail:k-kyodoriyo@eri.u-tokyo.ac.jp

※次回の談話会は令和6年9月20日(金) 午後1時30分~です。

アポロ短周期月震計データの解析によりもたらされた月の地震活動の新たな描像

小野寺圭祐 (東京大学地震研究所)

Keisuke Onodera (ERI, UTokyo)

Onodera (2024), New views of lunar seismicity brought by analysis of newly discovered moonquakes in Apollo short-period seismic data, Journal of Geophysical Research: Planets, 129, e2023JE008153, https://doi.org/10.1029/2023JE008153

 
 今から半世紀ほど前, アポロ計画で月面に地震計が設置されたことにより, 月でも地震(月震)が起こっていることが判明した。現在に至るまでに約13,000もの月震イベントが確認されており, 月の地震活動度や内部構造の理解に貢献してきた。

 
 アポロの観測では, 0.2〜1.5Hzの周波数帯に感度をもつ長周期計と1.5〜10Hz帯に感度をもつ短周期計の二種類の地震計が月面に設置されたものの, 短周期計は図1aに示すように多くの機器ノイズが含まれており, 現在に至るまでその大部分が未解析のままであった。本研究では, 1971〜1977年に取得されたアポロ14, 15, 16号の短周期計データのクリーニング処理を行い, イベントの自動検出を行った。その結果, 22,000を超える新たな月震を検出することに成功した。

 
 特に重要な発見として, 過去には28例しか見つかっていなかった浅発月震を新たに46例検出した点である(図1b-c)。浅発月震は, 断層由来の月震であることが過去の研究で指摘されており, 地球の地震に最も類似したイベントだと言われている。しかし, 検出数の少なさからその詳細は謎に包まれたままであった。  

 今回の発見により, 今まで考えられていたよりも断層由来の月震が多く発生していることがわかった。また, 図2に示すように浅発月震はアポロ15号(北半球側)の短周期計で多く観測されており, 浅発月震の発生には空間的な偏りがあることを初めて示した。これは月には地震が起こりやすい所とそうでない所があることを示唆しており, 過去50年の月の地震活動の描像を刷新する成果と言える。本研究ではさらに 浅発月震の時空間分布や他の観測データ(表面の地形や重力異常マップ等)との関連性について調査を進め, 約30億年前に月地殻内へのマグマ貫入に伴い発達した断層が浅発月震の発生に寄与している可能性を提案した。月は現在でも冷却過程にあり, 全球収縮により月地殻内に蓄積した歪みを解放するプロセスとして地殻内で断層ずれが生じ, 浅発月震が発生していると考えられる。今後, 更なる解析・地球の地震との比較を通じて, より詳細な発生プロセスを明らかにしていきたい。

図1. (a)ノイズ削減処理前後のアポロ短周期月震計データの比較。 (b) 既存の浅発月震の波形。(c) 新たに発見された浅発月震の波形. 水色と緑色の点線はP波とS波の到達時刻を示す。
図2. アポロ14号, 15号, 16号着陸地点の短周期月震計で検出された浅発月震の波形。横軸はP波到達からの経過時間を示し, 縦軸はS波とP波の到達時間の差を示す(値が大きいほど観測点から遠いイベントに対応している)。各月震計の位置を黄色三角印で月面マップに示す。これらの図からアポロ15号(月の北半球側)で多数の浅発月震が検出されていることが読み取れる。

金曜日セミナー(2024年7月12日)伊東 優治(地震予知研究センター)

題目:沈み込み帯の地震サイクルに伴う広帯域地殻変動

 

要旨:

沈み込み帯においては、沈み込むプレートと上盤プレートの境界で、大小様々な地震やスロー地震が多数発生している。これらに伴う断層すべりは数秒から数年と幅広い時間帯域に亘る。また、数十年から数百年に亘る大地震間にはプレート境界は固着しており、将来の地震発生に向けた歪みを蓄積する。これらのプレート間相互作用に伴う応力変化により、短期的には弾性変形が、長期的にはマントルで粘弾性を含む非弾性変形が生じる。このように、沈み込み帯のプレート境界断層では様々な時空間スケールでの変形プロセスが生じている。発表者は、測地データ等を基にこのような様々な時空間スケールでの地殻変動を解析し、変形の素である断層運動過程や、地殻やマントルの変形特性の理解を目指してきた。本発表では、それらの研究の中から、2014年Iquique地震後の数日間の余効変動に関する研究と、千島海溝南部における地震間固着の分布と地震間の媒質応答に関する研究を紹介する予定である。