金曜日セミナー(2024年7月26日)岩森 光(日本列島モニタリング研究センター)、飯高 隆(地震予知研究センター)、臼井 嘉哉(地震予知研究センター)

題目:東北地方南部といわき地域の地下構造とダイナミクス:地震、電磁気、熱-マントル対流、流体循環の統合研究に向けて

 

要旨:
4月と5月の金曜セミナーにおいて、いわき地域の地震活動、地下構造と流体の分布・移動が議論された。いわき地域を含む東北地方南部では、沈み込んだフィリピン海プレートと太平洋プレートが折り重なり、複雑なマントルの流れや温度構造を生み出していると考えられている。これらがどのように関連するかを、地震-電磁気の構造、熱-マントル対流シミュレーション、推定される流体分布・循環といったさまざまな観点から統合的に議論を試みる。

【2024年8月6日(火) 一般公開・公開講義・オープンキャンパス】オンライン開催


【プログラム】

  • 学生実験 10:00-11:00
  • 研究最前線・技術部紹介 11:00-12:00
  • 公開講義 13:30-15:45
    「地震観測網の発達とスロー地震の発見」 小原 一成 教授
    「比抵抗構造研究から明らかになった内陸地震発生と地下流体との関係」 上嶋 誠 教授

詳細情報は確定次第、随時一般公開ホームページ(https://www.eri.u-tokyo.ac.jp/panko/)にてご案内しております。
ライブ配信以外にも期間中いつでもご覧いただけるオンデマンドコンテンツも公開予定です。
皆さまのご参加をお待ちしております。

第1038回地震研究所談話会開催のお知らせ

下記のとおり地震研究所談話会を開催いたします。

9月より対面での開催を再開しておりますので、地震研究所へお越しいただければ幸いです。

ご登録いただいたアドレスへ、開催当日にZoom URLとパスワードをお送りいたします。
なお、お知らせするZoom URLの二次配布はご遠慮ください。また、著作権の問題が
ありますので、配信される映像・音声の録画、録音を固く禁じます。

日  時: 令和6年7月19日(金) 午後1時30分~

場  所: 地震研究所1号館2階 セミナー室 
 Zoom Webinarにて同時配信

1. 13:30-13:45

演題:三陸沖ICT海底ケーブル観測システムによる地震津波長期モニタリング【所長裁量経費成果報告】

著者:○篠原雅尚・酒井慎一・山田知朗・塩原 肇

2. 13:45-14:00

演題:北関東地域の3次元電気比抵抗構造【所長裁量経費成果報告】

著者:○臼井嘉哉・上嶋 誠、坂中伸也(秋田大)、市來雅啓(東北大)、山谷祐介(産総研)、小川康雄(東工大・東北大)

3. 14:00-14:15

演題:A cuvilinear formulation and a NURBS based non-orthogonal coordinate system for improving accuracy of shell analysis

著者:○MADDEGEDARA Lalith・DHARMASIRI Kasun

○発表者
※時間は質問時間を含みます。
※既に継続参加をお申し出いただいている方は、当日zoom URLを自動送信いたします。
※談話会のお知らせが不要な方は下記までご連絡ください。

〒113-0032 東京都文京区弥生1-1-1 
東京大学地震研究所 共同利用担当
E-mail:k-kyodoriyo@eri.u-tokyo.ac.jp

※次回の談話会は令和6年9月20日(金) 午後1時30分~です。

アポロ短周期月震計データの解析によりもたらされた月の地震活動の新たな描像

小野寺圭祐 (東京大学地震研究所)

Keisuke Onodera (ERI, UTokyo)

Onodera (2024), New views of lunar seismicity brought by analysis of newly discovered moonquakes in Apollo short-period seismic data, Journal of Geophysical Research: Planets, 129, e2023JE008153, https://doi.org/10.1029/2023JE008153

 
 今から半世紀ほど前, アポロ計画で月面に地震計が設置されたことにより, 月でも地震(月震)が起こっていることが判明した。現在に至るまでに約13,000もの月震イベントが確認されており, 月の地震活動度や内部構造の理解に貢献してきた。

 
 アポロの観測では, 0.2〜1.5Hzの周波数帯に感度をもつ長周期計と1.5〜10Hz帯に感度をもつ短周期計の二種類の地震計が月面に設置されたものの, 短周期計は図1aに示すように多くの機器ノイズが含まれており, 現在に至るまでその大部分が未解析のままであった。本研究では, 1971〜1977年に取得されたアポロ14, 15, 16号の短周期計データのクリーニング処理を行い, イベントの自動検出を行った。その結果, 22,000を超える新たな月震を検出することに成功した。

 
 特に重要な発見として, 過去には28例しか見つかっていなかった浅発月震を新たに46例検出した点である(図1b-c)。浅発月震は, 断層由来の月震であることが過去の研究で指摘されており, 地球の地震に最も類似したイベントだと言われている。しかし, 検出数の少なさからその詳細は謎に包まれたままであった。  

 今回の発見により, 今まで考えられていたよりも断層由来の月震が多く発生していることがわかった。また, 図2に示すように浅発月震はアポロ15号(北半球側)の短周期計で多く観測されており, 浅発月震の発生には空間的な偏りがあることを初めて示した。これは月には地震が起こりやすい所とそうでない所があることを示唆しており, 過去50年の月の地震活動の描像を刷新する成果と言える。本研究ではさらに 浅発月震の時空間分布や他の観測データ(表面の地形や重力異常マップ等)との関連性について調査を進め, 約30億年前に月地殻内へのマグマ貫入に伴い発達した断層が浅発月震の発生に寄与している可能性を提案した。月は現在でも冷却過程にあり, 全球収縮により月地殻内に蓄積した歪みを解放するプロセスとして地殻内で断層ずれが生じ, 浅発月震が発生していると考えられる。今後, 更なる解析・地球の地震との比較を通じて, より詳細な発生プロセスを明らかにしていきたい。

図1. (a)ノイズ削減処理前後のアポロ短周期月震計データの比較。 (b) 既存の浅発月震の波形。(c) 新たに発見された浅発月震の波形. 水色と緑色の点線はP波とS波の到達時刻を示す。
図2. アポロ14号, 15号, 16号着陸地点の短周期月震計で検出された浅発月震の波形。横軸はP波到達からの経過時間を示し, 縦軸はS波とP波の到達時間の差を示す(値が大きいほど観測点から遠いイベントに対応している)。各月震計の位置を黄色三角印で月面マップに示す。これらの図からアポロ15号(月の北半球側)で多数の浅発月震が検出されていることが読み取れる。

金曜日セミナー(2024年7月12日)伊東 優治(地震予知研究センター)

題目:沈み込み帯の地震サイクルに伴う広帯域地殻変動

 

要旨:

沈み込み帯においては、沈み込むプレートと上盤プレートの境界で、大小様々な地震やスロー地震が多数発生している。これらに伴う断層すべりは数秒から数年と幅広い時間帯域に亘る。また、数十年から数百年に亘る大地震間にはプレート境界は固着しており、将来の地震発生に向けた歪みを蓄積する。これらのプレート間相互作用に伴う応力変化により、短期的には弾性変形が、長期的にはマントルで粘弾性を含む非弾性変形が生じる。このように、沈み込み帯のプレート境界断層では様々な時空間スケールでの変形プロセスが生じている。発表者は、測地データ等を基にこのような様々な時空間スケールでの地殻変動を解析し、変形の素である断層運動過程や、地殻やマントルの変形特性の理解を目指してきた。本発表では、それらの研究の中から、2014年Iquique地震後の数日間の余効変動に関する研究と、千島海溝南部における地震間固着の分布と地震間の媒質応答に関する研究を紹介する予定である。

【共同プレスリリース】地震のマグニチュードー頻度特性の断層強度依存性と応力状態臨界度ーー超多点観測から見えてきた 新たな地震活動の見方ーー


◆ポイント
① 1000点を超える地震観測で地震活動の特徴をみる
②地震の規模と断層の強さの関連性を発見
③地震活動の特徴をみる新たな尺度を調べることで、将来の活動評価につながる可能性


◆概要

地震の規模別頻度分布の特徴は、時空間的に変動することが知られています。これらの変動は、大地震の前に現れることが報告されています。時空間的な変動を理解することは、大地震発生のモデルを考えるうえでの鍵となります。これまでの研究で、地殻応力状態によって大きめのサイズの地震が多く引き起こされるという変化が示されています。さらに、室内実験では、応力や破壊条件の臨界性の両者に依存することが実証されています。しかし、自然地震活動でこの2つの要因がどのように関連するのかは不明でした。
九州大学大学院理学研究院の松本聡教授と、東京大学地震研究所の加藤愛太郎教授らのグループは2000年鳥取県西部地震の震源周辺で1000点を超える地震観測を実施しました。この観測から得られるデータを詳しく解析して、断層の強さに焦点を当て、強い断層ほど大きな地震が発生しやすい傾向があることを見出しました。この影響で頻度分布が変化することを示しました。これは、従来にはない高精度のデータセットに基づいて小規模地震をつかって詳しく調べた結果初めてえられたものです。このことは、大地震前の頻度分布変化が臨界状態に近づいていることに対応すると説明できます。この研究結果は今後の断層破壊モデル解明につながり、将来の災害軽減へ貢献すると期待できます。


これにつきまして九州大学よりプレスリリースがされました。
詳細につきましてはこちらをご覧ください:https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/1101 (九州大学ホームページ)


第1037回地震研究所談話会開催のお知らせ

下記のとおり地震研究所談話会を開催いたします。

昨年9月より対面での開催を再開しておりますので、地震研究所へお越しいただければ幸いです。

ご登録いただいたアドレスへ、開催当日にZoom URLとパスワードをお送りいたします。

なお、お知らせするZoom URLの二次配布はご遠慮ください。また、著作権の問題が

ありますので、配信される映像・音声の録画、録音を固く禁じます。

            記

    
日  時: 令和6年6月21日(金) 午後1時30分~

場  所: 地震研究所1号館2階 セミナー室
Zoom Webinarにて同時配信

1. 13:30-13:45

演題:沈み込み帯巨大変動現象の予測科学:環太平洋ジオハザード予測研究コンソーシアム構築【R5所長裁量経費成果報告】

著者:○望月公廣・山田知朗・上嶋 誠・馬場聖至・市原美恵・木下正高・悪原 岳・篠原雅尚・前野 深・臼井嘉哉・佐竹健治

2. 13:45-14:00

演題:海底火山下のマグマ蓄積による重力変化の検出可能性

著者:○西山竜一

要旨:海底火山直下におけるマグマ蓄積がもたらす海洋上での重力変化を評価した最近の論文https://doi.org/10.1093/gji/ggae146について紹介する

3. 14:00-14:15

演題:日本海溝アウターライズにおける局所的な熱流量の変動と海洋地殻構造の不均質性 【所長裁量経費成果報告】

著者:○山野 誠(東京大学大気海洋研究所)、木下正高

要旨:日本海溝アウターライズ上での高密度測定で得られた、数kmスケールの熱流量変動について報告し、プレート屈曲に伴う海洋地殻の破砕過程との関係を考える。

4. 14:15-14:30

演題:日本海粟島海底ケーブルを用いた分散型音響センシング地震観測【所長裁量経費成果報告】

著者:○篠原雅尚・山田知朗・八木健夫・増田正孝・橋本 匡・阿部英二

○発表者

※時間は質問時間を含みます。

※既に継続参加をお申し出いただいている方は、当日zoom URLを自動送信いたします。

※談話会のお知らせが不要な方は下記までご連絡ください。

〒113-0032 東京都文京区弥生1-1-1 

東京大学地震研究所 共同利用担当

E-mail:k-kyodoriyo(at)eri.u-tokyo.ac.jp

※次回の談話会は令和6年7月19日(金) 午後1時30分~です。

Friday Seminar (5 July 2024) Mathilde VERGNOLL (Geoazur)

Title: Understanding the co-to-post-seismic transition through geodetic observations and slip imagery

 

Abstract:
Earthquake occurrence is mainly controlled by the spatio-temporal evolution of stresses in the Earth’s crust, primarily caused by the large-scale movement of tectonic plates. However, postseismic transient processes strongly contribute to stress redistribution after an earthquake and to the generation of catastrophic seismic sequences. It is thus critical to better understand them. Our project tackled this critical question by combining geodetic and seismological observations of the phenomena with numerical modelling. The novelty of the project, I will present, lay in the period over which the problem was addressed: the very early postseismic phase (minutes to days) for which few studies had been conducted. Indeed, the existence of suitable data for documenting this transition period between fast and slow slip was limited, and the methodologies to analyze these data and to provide accurate and robust slip imagery also needed to be improved or developed.
I will present a summary of the results we obtained based on our ability to accurately resolve deformation over a wide range of frequencies, amplitudes and spatial scales as well as to analyze and interpret the observations with a new approach to optimize the information contained in the surface observations or kinematic slip inversion from noisy surface ones. Our results on very early postseismic deformation allow for a better understanding of the complex spatial and temporal evolution of the deformation and hopefully by continuing to study this phase, a better assessment of fault slip over a seismic cycle, physical parameters controlling fault slip and ruptures and seismic hazard.

金曜日セミナー(2024年6月28日)石山 達也(地震予知研究センター)

題目:東北日本の地質構造・地殻構造・活構造

 

要旨:
東北日本では、沈み込み帯巨大地震である2011年3月11日東北太平洋沖地震(M 9.0)の前後の期間に、2011年4月11日福島県浜通りの地震(M 7.0)に代表されるM6-7級の上部地殻内の地震等の活発な地殻活動が上盤側プレートで発生してきた。このような地殻活動については、地殻内流体の寄与を重視するモデルや観測が提示されている。本発表では、現在の地殻活動・テクトニクスを理解する観点から、東北日本の主に中新世以降の構造発達・テクトニクス・地殻構造・活構造についてレビューを行う。これを踏まえて、東北日本の地形・地質構造発達の理解に重要な数万年から100万年スケールの長期間地殻変動および地殻構造について、現状の理解と課題について議論する。

Friday Seminar (21 June 2024) Mike COFFIN (University of Tasmania)

Title: Subduction Initiation along the Macquarie Ridge Complex, Southwest Pacific Ocean

 

Abstract:

How tectonic plate subduction starts is a first-order question in Earth science. The Macquarie Ridge Complex (MRC), extending 1600 km between New Zealand’s South Island and the Australia-Pacific-Antarctic triple junction, arguably constitutes the global type example for initiating plate subduction. The MRC marks the boundary between oceanic portions of the great Australian and Pacific plates, is situated proximal to the pole of rotation between these two plates, and consists of four ridge and trench/trough segments, of enigmatic alternating polarity, along its strike. The largest intraoceanic earthquake of the 20th Century, a Mw 8.2 event, occurred along the MRC in 1989, and a Mw 8.1 event occurred in 2004. Evidence is accumulating that subduction is initiating along the southern (Hjort) and northern (Puysegur) portions of the MRC, with strain partitioned between transform motion and compression along its entire length. The intervening McDougall and Macquarie segments are ambiguous with respect to subduction initiation. The MRC has the steepest sustained topography of any mountain range on Earth, with vertical relief of ~6,000 m over a horizontal distance of <25 km. Along the Macquarie segment, which includes Macquarie Island, the only subaerial expression of the MRC aside from some nearby islets and rocks, are prominent mass wasting deposits likely associated with the MRC’s high seismicity and steep topography. Such mass wasting is potentially tsunamigenic. Interpretations of marine geophysical data from the Macquarie Ridge segment of the MRC that were acquired on research voyages in 1994, 1996, 2020, and 2021 are the focus of this presentation.