共同利用・共同研究による成果
2025年度の共同利用・共同研究拠点実施報告書から、地震研究所教員が参画した研究成果を中心に抜粋して紹介します。
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Evidence of megathrust earthquakes and seismic supercycles in subtropical Japan from millennia-old coral microatolls Debaecker, S. et al. Nat Commun 17, 1398 (2026). https://doi.org/10.1038/s41467-025-67724-2 プレスリリース 琉球沈み込み帯における地震スーパーサイクルを解明 ▶ 南西日本の琉球沈み込み帯では、隣接する南海トラフと異なり、巨大地震の履歴も将来の可能性もよくわかっていません。島での測地観測はプレート間の固着が弱いことを示す一方、スロー地震や海底での測地観測は固着域の存在を示唆し、歴史・地質の研究からは大津波の痕跡が見つかっています。そこで石垣島の化石サンゴ(マイクロアトール)を用いて、完新世の相対的な海水準を復元しました。サンゴの記録には、5〜4千年前と3〜2千年前に集中する複数の離水痕跡が残っていました。弾性体モデルによる計算から、これらが巨大地震に伴う地震時隆起に対応しうることが示されました。地震が集中する期間の存在は、2千年を超える再来間隔をもつスーパーサイクルを示唆します。今後数世紀にわたって地震災害の危険性が高いことを意味し、1771年の明和の大地震と津波が、最も新しいスーパーサイクルの始まりにあたる可能性があります。 |
図1 南琉球における完新世の地震スーパーサイクル[Debaecker et al. (2026)] |
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Precise aftershock activity in the marine source region of the 2024 Noto-Hanto earthquake by rapid response observation using ocean bottom seismometers Shinohara, M. et al. Earth Planets Space 77, 43 (2025). https://doi.org/10.1186/s40623-025-02171-3 受賞 Earth, Planets and Space「Highlighted Papers 2025」 ▶ 2024年1月1日、能登半島でM7.6の地震が発生しました。本震は北西-南東方向に圧縮軸をもつ逆断層型で、2020年12月から続く群発地震とは異なり、震源域が海域まで広がっていました。そこで震源域とその周辺で緊急の海底地震観測を行い、海底地震計34台を設置して1か月後に26台を回収しました。二重差分法などにより余震の震源を精密に決め直したところ、深さは0.2〜17kmで、多くは上部地殻に収まる一方、震源域の東端では比較的深い地震も起きていました。余震は複数の傾斜した面を形づくり、その位置は、本震の前に作られていた海域活断層モデルの断層位置と一致します。本震の破壊が形状の異なる複数の断層へ伝わったことを示しています。また逆断層型70個に対し横ずれ型を87個特定し、いずれもP軸が断層の走向に直交することから、余震活動が北西-南東方向の圧縮応力の影響を受けていたことがわかりました。 |
図2 海底地震計を用いた緊急観測による、2024年能登半島地震の海域震源域における精密な余震活動[Shinohara et al. (2025)] |
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Structural barriers control the spatial extent of slow earthquake slip Akuhara, T. et al. Nat Commun 17, 1431 (2026). https://doi.org/10.1038/s41467-025-68179-1 沈み込み帯のプレート境界断層の浅い部分でスロー地震が起きていることが、近年の観測でわかってきました。その広がりを決める要因をつかめれば、将来の巨大地震の破壊が浅部側のどこまで及びうるかを絞り込めます。南海トラフ熊野灘で2020〜2021年に起きたスロー地震について、不確かさを評価した微動の位置、詳細な海底地形、マルチチャンネル反射法地震探査のデータを統合して調べました。その結果、微動活動域の浅部側・深部側・側方の端が、デコルマの屈曲や分岐、深部に延びる横ずれ断層、付加体の内側ウェッジと外側ウェッジの境界と一致することがわかりました。これらは幾何学的あるいは力学的な障壁として働き、さらに間隙流体圧の違いや、沈み込んだ古銭洲海嶺の影響を受けているとみられます。プレート境界の形状、上盤の付加体の物性、流体の分布、海嶺の沈み込みが合わさってスロー地震の広がりを決めており、将来の巨大地震の破壊が浅部側のどこまで及びうるかを評価するうえで、これらを考慮する必要があることが示されました。 |
図3 反射法地震探査断面と微動分布の比較[Akuhara et al. (2026)] |
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Geofluid mapping reveals the connection between magmas, fluids, and earthquakes Iwamori, H. et al. Commun Earth Environ 6, 373 (2025). https://doi.org/10.1038/s43247-025-02351-9 プレスリリース 地球内部の水・マグマをとらえ、地震や火山の仕組みに迫る ▶ 地下の流体は、地震の発生・火山活動・プレート運動を通じて地球の進化を駆動していますが、手法によって流体分布の推定はばらついていました。東北日本の火山地域を対象に、高分解能の地震波トモグラフィーによる地震波速度と、地磁気地電流法による電気伝導度を同時に逆解析する新しい手法を用い、水溶液と玄武岩質・安山岩質マグマの量と形状を定量的にマッピングしました。深さ10〜20kmにはわずかに漏れのある大きな流体リザーバーがあり、そのすぐ上の過剰流体圧が最も高い領域が地震発生域に対応します。リザーバーの底部、モホ面付近では、玄武岩質マグマが火山フロントの西側に、安山岩質マグマが東側に分布し、フロント直下にはマグマの乏しい領域もありました。モホ面に沿うマグマが水溶液を放出して間隙流体圧を高め、上部地殻で地震を起こしたと考えられます。一部のマグマは上昇して活火山を形づくり、あとにマグマの乏しい領域を残しました。火山フロントの形成に地殻内の過程が重要であることが示されました。 |
図4 マグマ・水・地震・火山のつながりを示す地殻流体マップ[Iwamori et al. (2025)] |
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Numerical simulations reveal the dynamics of the most intense eruption of Hunga Tonga in January 2022 Suzuki, Y.J., Martínez Montesinos, B. & Costa, A. Bull Volcanol 87, 119 (2025). https://doi.org/10.1007/s00445-025-01919-9 2022年1月15日、フンガ・トンガ-フンガ・ハアパイ火山で激しい海底の爆発的噴火が起き、これまで観測されたどの噴煙よりも激しい噴煙が生じました。3次元の流体力学モデルと、アンサンブルにもとづく降下火砕物拡散の逆解析モデルを用いて噴火の最盛期を再現しました。噴火最盛期には、毎秒320〜630万トンのマグマ物質が噴出し、1991年のピナツボ噴火の数倍の噴火強度に達したことを明らかにしました。また、噴煙は火山灰約100万トンと海水10万トンを中間圏まで運んだと推定しました。二酸化硛黄を30〜110万トンが大気へ放出された計算になります。これらの結果は、これまでにない大量のマグマ物質・水蒸気・二酸化硛黄が成層圏と中間圏へ注入されたことを示しており、噴火から数年にわたって地球の気候に大きな影響を与えうると考えられます。海底噴火の噴煙がもつ複雑な動きを捉えるには高分解能の数値計算が重要であり、それが噴火の影響をより正確に予測することにつながります。 |
図5 数値シミュレーションで明らかにした2022年1月のフンガ・トンガ火山の最も激しい噴火のダイナミクス[Suzuki et al. (2025)] |
※ 掲載しているのは成果の一部です。共同利用・共同研究による研究発表論文の集計は、拠点としての実績をご覧ください。
※ 図の出典は各キャプションに記載しています。利用条件は各論文のライセンスに従います。





