共同利用・共同研究実施報告書より(その1)
2025年度の共同利用・共同研究課題のうち、論文発表や外部資金の獲得につながった主な成果を紹介します。その他の成果は、共同利用・共同研究実施報告書をご覧ください。
※件数等は各課題の実施報告書に基づきます。
2025-B-01 特定共同研究(B) 2025年度
科学的機械学習(SciML)による固体地球科学の加速
Accelerating Solid Earth Science through Scientific Machine Learning (SciML)
研究代表者:縣 亮一郎(海洋研究開発機構) / 地震研究所 担当教員:伊藤 伸一
研究組織:10機関・24名(大学・公的研究機関・大学院生を含む)
研究計画の概要
本課題は、科学的機械学習(SciML)の活用により固体地球科学研究を加速することを目的とする。機械学習を物理法則や数理モデルと統合することで、不均質性・不確実性を伴う物理計算や予測、不良設定問題に対する新たな解決策を探る。勉強会・研究集会の実施を通じ研究者ネットワークを形成する。このネットワークを基盤とし、参加者間での情報共有と議論を深め、共同研究へ発展させる。
主な活動・成果(キーワード:科学的機械学習、Physics-informed neural network(PINN)、作用素学習、固体地球科学)
・ キックオフミーティング(オンライン)、地震研究所での勉強会(ハイブリッド)を開催し、参加者間の連携基盤を形成
・ 2025年10月20日に、日本地震学会2025年度秋季大会において、ランチョンセミナー「物理深層学習PINNの基本プログラミング講習」を開催。コードと解説資料をGitHubで公開し、課題外の研究者にも普及
・ 2026年1月に、研究集会「固体地球科学におけるScientific machine learningとその周辺」を京都大学防災研究所とオンラインのハイブリッド形式で2日間にわたって開催(延べ29名・15件の発表)。集会後には約20名が参加するハンズオン講習も実施
・ 情報科学と地震学の融合をテーマとした国際ワークショップIWIRISS 2025(International Workshop on Interdisciplinary Research of Information Science and Seismology 2025)を共催
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主な実績 ・ 招待講演(国際学会・WS):6件 ・ 国際学会発表(招待講演を除く):2件 ・ 査読付き論文(謝辞あり):8件 ・ 開催した研究集会:1件(延べ29名参加・15件の発表) ・ 獲得した次年度の外部資金:1件 |
図:研究集会「固体地球科学におけるScientific machine learningとその周辺」の様子(2026年1月22日@京都大学防災研究所&オンライン) |
2025-B-03 特定共同研究(B) 2025年度
マルチスケール重力観測に基づく活動的火山内部の質量時空間変動の包括的理解
Comprehensive understanding of spatiotemporal mass variations in active volcanoes based on multiscale gravity observations
研究代表者:風間 卓仁(京都大学大学院理学研究科) / 地震研究所 担当教員:今西 祐一
研究組織:17機関・33名(大学・公的研究機関・大学院生を含む)
研究計画の概要
本研究は、活動的火山において多項目の重力観測を同時並行で実施し、広帯域の時空間スケールで火山内部の質量変動を理解することを目的とする。具体的には、本研究に参画する研究機関が複数のタイプの重力計(絶対重力計・超伝導重力計・バネ式相対重力計など)を持ち寄り、活動的火山において同時並行で重力観測を実施する。この際、絶対重力計による多点の絶対観測、超伝導重力計やバネ式相対重力計による連続観測、およびバネ式相対重力計による広域キャンペーン観測を組み合わせ、火山体周辺における時空間的にマルチスケールな重力変動を取得する。その後、得られた重力データに陸水擾乱補正やインバージョン解析を適用し、火山内部の質量時空間分布を得る。さらに、得られた質量時空間変動を他の火山学的観測データとも比較し、対象火山の活動を質量変動の観点から包括的に評価する。
主な活動・成果(キーワード:重力変化・地殻変動・火山・マグマ・密度変化)
・ 浅間山で超伝導重力計iGrav-003による連続観測のメンテナンスを定期的に実施。2025年11月には器械ドリフト検定のため浅間火山観測所で絶対重力測定を実施
・ 浅間山で陸水変動を把握するため、2025年7月に湯川・千ヶ滝の上流部2か所に浅井戸を設置し、水圧計による地下水位の連続観測を開始
・ 桜島で2025年10月と2026年3月に相対重力キャンペーン測定を実施し、1998年以降のデータと統合解析。中央部で最大5.4 microGal/yrの経年的な重力増加を検出し、地殻変動だけでは説明できない約1.4×10¹⁰ kg/yrの質量増加が必要であることを示した
・ 1975〜1992年の相対重力観測と水準測量のデータを用いて、桜島火山内部のマグマ質量収支を定量化した。観測された重力増加は地殻変動だけでは説明できず、浅部マグマだまりでマグマ密度が増大していることが分かった。また、1975〜1992年の期間には約5×10¹⁰ kg/yrのマグマが地下深部から供給されていたことが分かった[Oyanagi et al., 2026]
・ 据え置き型のiGrav超伝導重力計を、超伝導球を浮上させたまま運搬して可搬型相対重力計として運用する実証実験を、蔵王・富士・浅間の3地点間で実施。絶対重力値との比較で誤差は約1 mGal(相対誤差1〜2%)に留まり、過去の試みより精度を大幅に改善した[今西ほか, 2025]
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主な実績 ・ 招待講演(国際学会・WS):1件 ・ 国際学会発表(招待講演を除く):1件 ・ 査読付き論文(謝辞あり):4件 ・ 開催した研究集会:1件(延べ22名参加・10件の発表) ・ 獲得した次年度の外部資金:1件 |
図:相対重力観測および水準測量のデータから明らかになった、1975〜1992年における桜島火山内部のマグマ質量収支。 |
2025-G-02 一般共同研究 2025年度
振動加速度一次標準にトレーサブルな広帯域地震計感度の校正手法の開発
Development of a calibration method for broadband seismometer traceable to a primary vibration standard
研究代表者:下田 智文(産業技術総合研究所) / 地震研究所 担当教員:新谷 昌人
研究組織:4名(産業技術総合研究所・東京大学地震研究所)
研究計画の概要
広帯域地震計は低周波地震動観測のために観測網で広く用いられている。近年では観測精度維持のため校正が求められつつあるが、観測点に設置済みの地震計感度を正確に校正する手法は確立されていない。そのため製造時の校正後、観測点に設置した後に感度特性が変化しても判別が難しい。そこで本研究では、観測点に設置された広帯域地震計を現地で校正する手法を開発する。校正は2段階からなり、まず①基準として用いる地震計(以下、参照地震計)の感度及び温度依存性を実験室で測定した後、②参照地震計を観測点に持ち込み、地面振動を用いた比較校正により既設地震計の感度を算出する。本年度は①および②の手順の実証実験を行う。
主な活動・成果(キーワード:広帯域地震計, STS-1, 比較校正, 温度補正)
・ 鋸山地殻変動観測所で1990年代から稼働するSTS-1地震計3台を対象に、16日間の比較校正の実証実験を実施
・ 2種類の参照地震計で求めた感度が約0.11%の差で一致。総合的な不確かさは約0.5%で、観測網で求められる精度(約1%)を満たす見通しを得た
・ 地震波形の解析から低周波帯の周波数特性の変化も検出でき、本手法の有効性を確認
・ 成果は Seismological Research Letters 誌に受理
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主な実績 ・ 国際学会発表(招待講演を除く):1件 ・ 査読付き論文(謝辞あり):1件 |
図:常時微動波形・地震波形の比較で得た鋸山地殻変動観測所STS-1地震計の周波数特性 |
過去の採択課題と実施報告書は、実施報告書一覧からご覧いただけます。
