共同利用・共同研究実施報告書より(その2)
2025年度の共同利用・共同研究課題のうち、論文発表や外部資金の獲得につながった主な成果を紹介します。その他の成果は、共同利用・共同研究実施報告書をご覧ください。
※件数等は各課題の実施報告書に基づきます。
2025-H-03 高エネルギー素粒子地球物理学 2025年度
室内実験スケールでのミュオンと弾性波の融合測定:孔隙性媒体におけるガス飽和率と弾性定数の推定
Combined measurement of muons and elastic waves on a laboratory scale
研究代表者:松島 潤(東京大学大学院新領域創成科学研究科) / 地震研究所 担当教員:田中 宏幸
研究組織:3名(うち外国籍1名)
研究計画の概要
本研究は、ミュオグラフィと弾性波探査の融合による地下物性評価手法を、非孔隙性媒体から孔隙性媒体へ拡張し、ガス飽和率および2種類の弾性定数(体積弾性率・せん断弾性率)の同時推定可能性を室内実験スケールで検証することを目的とする。これまでにアクリルやアルミニウムなどの非孔隙性媒体を対象として本手法の有効性は実証されており、本研究ではより実フィールドに近い孔隙性媒体へ適用することで、地下貯留層評価への展開を目指す。
主な活動・成果(キーワード:ミュオグラフィ、弾性波探査、ガス飽和率、孔隙性媒体、密度推定)
・ 砂試料の飽和率を0%から100%まで段階的に変えてミュオンフラックスを測定し、飽和率に応じた密度の変化を明瞭に捉えた
・ モンテカルロシミュレーションとの比較により、約0.1 g/cm³の微小な密度変化にも感度があることを確認
・ 2026年3月に国際ワークショップを開催(約60名参加、日本・カナダ・フィンランド・ドイツ・ベルギーから講演者7名)
・ 成果は Communications Earth & Environment 誌などに掲載
|
主な実績 ・ 査読付き論文(謝辞あり):2件 ・ 開催した研究集会:1件 ・ 獲得した次年度の外部資金:1件 |
図:ミュオグラフィによる孔隙性媒体の水飽和率測定実験。ミュオン検出器の配置と、異なる水飽和率の砂試料を用いた実験構成を示す。 |
2025-S-B102 大型計算機共同利用 2025年度
大規模地震動シミュレーションを活かした地震像の解明
Understanding nature of earthquakes using large-scale seismic ground motion simulations
研究代表者:江本 賢太郎(九州大学大学院理学研究院) / 地震研究所 担当教員:武村 俊介
研究組織:16名(うち大学院生3名)
研究計画の概要
本課題では、課題メンバーが開発してきた地震波大規模並列シミュレーションコードであるOpenSWPCを主に用い大規模シミュレーションを実施するとともに、コードの開発も引き続き進める。本課題では、3次元地下不均質構造中の地震波伝播特性、それらを考慮した震源過程解析という共通点から、(1)沈み込み帯の地震解析とモニタリング、(2)火山周辺の地震活動解析の2つのグループは協力して研究を実施し、特に地震現象と地震発生帯の構造不均質や流体と地震の関係の理解を深めることを目的としている。前述の通り、(3)シミュレーションコード自体の拡張的開発も目的の一つである。
主な活動・成果(キーワード:地震波伝播シミュレーション、3次元不均質構造、コード開発)
・ (1)沈み込み帯の地震解析とモニタリング:3次元構造を考慮したGreen関数により浅部超低周波地震の震源特性を評価し、沈み込む海山の寄与の可能性を見出した。また、海洋性レイリー波を用いることで、海域の浅い地震の深さや断層傾斜角に感度を持つモーメントテンソル成分を制約できることを示した
・ (2)火山周辺の地震活動解析:浅間山の火山性地震を自動分類するTransformer encoderベースの深層学習モデルを構築し、CNNベースの手法を上回る性能(BACC 0.968)を達成。海底火山などで発生するT波の励起・伝播特性をシミュレーションで評価し、島嶼部の津波予測への貢献が期待される成果を得た
・ (3)地震波伝播シミュレーションコードの継続的開発:OpenSWPCをOpenACCによりGPUに対応させ、1つのコードでCPU・GPUの双方で動作するVersion 25.05.2をGitHubで公開。2CPUで1379秒かかる計算が256GPUで2.3秒で完了するなど、大幅な高速化を実現
・ (4)沈み込み帯や火山周辺をつなぐ地震波伝播シミュレーションの活用:長岡平野西縁断層帯周辺の長周期地震動の生成要因、東北地方日本海側の浅発地震に見られるS波エンベロープ拡大、火星のインパクトイベントS1034aの波形を数値モデリングにより検討
|
主な実績 ・ 国際学会発表(招待講演を除く):2件 ・ 査読付き論文(謝辞あり):3件 ・ 獲得した次年度の外部資金:1件 |
図:GPUに対応したOpenSWPCの計算時間ベンチマーク結果 |
2025-W-02 研究集会 2025年度
Slow-to-Fast地震学 国際合同研究集会2025
International Joint Workshop on Slow-to-Fast Earthquakes 2025
研究代表者:利根川 貴志(海洋研究開発機構) / 地震研究所 担当教員:武村 俊介
開催:2025年9月24日〜26日/高知市文化プラザかるぽーと(高知県高知市)
研究集会の概要
学術変革領域研究(A)「Slow-to-Fast地震学」と連携して、スローからファストにいたる全地震現象の包括的理解を目的とした、国内外の研究者による3日間の合同研究集会を開催した。2025年度は、高知県高知市高知文化プラザ「かるぽーと」にておいて、「Slow-to-Fast地震学」の3大柱の研究テーマをフォーカスとして掲げ、26件の口頭発表(うち6件は基調講演)、171件のポスター発表があった。本申請の目的である地震発生メカニズム・発生場についても理解を深めることができた。199名の現地参加者により活発な議論がなされ、31名のオンライン聴講者があった。
|
開催規模 ・ 延べ参加者:230名(うち外国籍51名) ・ 現地参加:199名 ・ 口頭発表:26件 ・ ポスター発表:171件 |
図:研究集会の集合写真 |
過去の採択課題と実施報告書は、実施報告書一覧からご覧いただけます。
