第1024回地震研究所談話会開催のお知らせ

下記のとおり地震研究所談話会を開催いたします。

ご登録いただいたアドレスへ、開催当日午前中にURL・PWDをお送りいたします。

なお、お知らせするzoomURLの二次配布はご遠慮ください。

ありますので、配信される映像・音声の録画、録音を固く禁じます。

                記

    日  時: 令和5年4月21日(金) 午後1時30分~ 

    開催方法: インターネット WEB会議

1. 13:30-13:45

演題:トルコ・シリア地震災害調査速報

著者:○楠 浩一・毎田悠承、真田靖士(大阪大学)、日比野 陽(名古屋大学)

要旨:2023年トルコ―シリア地震に対して派遣された科学研究費補助金、日本建築学会、土木学会の合同調査団の災害調査速報を行います。

2. 13:45-14:00

演題:地震背景ノイズレベルの増大によって検知される長期間の噴火前駆過程:霧島山新燃岳の例

著者:○市原美恵・大湊隆雄、Kostas I. KONSTANTINOU (台湾中央大)、山河和也(山梨県富士山研)、渡邉篤志・武尾 実

3. 14:00-14:15

演題:深層学習を用いた地震波自動処理

著者:○加藤 慎也、 飯尾 能久・片尾 浩・澤田 麻沙代・冨阪 和秀・水島 理恵(京都大学防災研究所)

要旨:開発した深層学習を用いた地震波解析(走時読み取りや極性決定など)の自動化パッケージの紹介をする。

○発表者

※時間は質問時間を含みます。

※既に継続参加をお申し出いただいている方は、当日zoomURLを自動送信いたします。

※談話会のお知らせが不要な方は下記までご連絡ください。

〒113-0032 東京都文京区弥生1-1-1 

東京大学地震研究所 共同利用担当

E-mail:k-kyodoriyo(at)eri.u-tokyo.ac.jp

※次回の談話会は令和5年5月19日(金) 午後1時30分~です。

大正関東地震関連論文

地震研究所の研究者による、大正関東地震に関連した論文を集めました。

太字が地震研究所所属の著者。

発表年著者タイトル掲載誌内容DOI情報
1925震災豫防調査會(今村幹事) 關東大地震ニ關スル本會ノ調査事業概要 ほか 震災豫防調査會報告1923年関東地震の調査報告書
https://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/records/15665
1930Chuji TsuboiA Note on the Analytical Treatments of the Horizontal Deformation of the Earth’s Crust東京帝國大學地震研究所彙報 三角点の移動が近傍の地殻変動を代表しているのか、検証するため、1923年関東地震時の三鷹村のデータから検証した。巻 8, 号 4, p. 384-392, 発行年 1930-12-16
https://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/records/34965
1989横田 治彦, 片岡 俊一, 田中 貞二, 吉沢 静代1923年関東地震のや長周期地震動 : 今村式2倍強震計記録による推定日本建築学会構造系論文報告集今村式2倍強震計の飽和部分を修復し、東京の長周期地震動の特性推定。401 巻 
https://doi.org/10.3130/aijsx.401.0_35
1992石井 紘これからの地殻変動観測研究と地震予知研究 : 将来の東海地震と関東地震に向けて地震研究所彙報別冊シンポジウム「地震研究所における地震予知研究 : 現状と将来展望」における論説。将来の関東地震を含め、今後の観測研究の方向を示唆。巻 8, p. 55-62, 発行日 1992-09-30
https://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/records/32331
1992Takeo, Minoru

Kanamori, Hiroo
Simulation of Long-Period Ground Motions for the 1923 Kanto Earthquake (M=8)地震研究所彙報1923年関東地震の東京での長周期地震動シミュレーション。今村式・Ewing式強震計データを再解釈して使用した。https://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/records/32724
1994武村 雅之, 池浦 友則, 工藤 一嘉
, 大沼 啓人
岐阜測候所で観測された1923年関東地震の本震・余震の記録地震 第2輯岐阜測候所の今村式2倍地震計記録の報告。ほぼ完全な3成分の波形。https://doi.org/10.4294/zisin1948.47.2_193
1995武村 雅之, 工藤 一嘉
, 野澤 貴, 佐藤 俊明, 片岡 俊一
東北帝国大学向山観象所 (仙台) で観測された1923年関東地震の本震・余震の記録地震 第2輯同観測所の今村式2倍地震計記録の検討、報告。https://doi.org/10.4294/zisin1948.48.2_297
1997Minoru Takeo and Hiroo KanamoriSimulation of Long-Period Ground Motion near a Large EarthquakeBulletin of the Seismological Society of America1923年関東地震の東京における長周期地震動シミュレーション。https://doi.org/10.1785/BSSA0870010140
2004岩田 孝行, 野口 和子東京大学におけるユーイング式地震計の歴史地震記象東京大学地震研究所技術研究報告1891年濃尾地震の記録を含む。https://doi.org/10.4294/zisin1948.48.2_297
2005Reiji Kobayashi and Kazuki KoketsuSource process of the 1923 Kanto earthquake inferred from historical geodetic,
teleseismic, and strong motion data
EPS1923年関東地震の震源モデルを、当時の測地・遠地波形・近地波形のジョイントインバージョンにより求めた。https://doi.org/10.1186/BF03352562
2005Hiroshi Sato, N. Hirata, K. Koketsu
, D. Okaya, S. Abe, R. Kobayashi, M. Matsubara,
T. Iwasaki
, T. Ito, T. Ikawa, T. Kawanaka, K. Kasahara, S. Harder
Earthquake Source Fault Beneath TokyoScience反射法地震探査データから東京下の断層を描出した。1923年関東地震の震源がこれまでの予測より浅い可能性を指摘した。https://doi.org/10.1126/science.1110489
2006Hitoshi Kawakatsu,
Craig R. Bina
The Great Kanto earthquake and F. Scott FitzgeraldEOS1925年出版の小説「華麗なるギャッツビー」が1923年関東地震の影響を受けたかも、というコメント。 https://doi.org/10.1029/01EO00338
2006Hiroe Miyake, Kazuki Koketsu
, Reiji Kobayashi, Yasuhisa Tanaka and Yasushi
Ikegami
Ground Motion Validation of the +3,- Kanto Earthquake Using the New Geometry of the Philippine Sea Slab and Integrated -D Velocity-Structure Model地震研究所彙報1923年関東地震の震源域である、沈み込むフィリピン海プレートの形状と、首都圏直下の3次元構造モデルを用いて、関東地震の地震動シミュレーションを実施、盆地内での長周期振動が確認された。 https://doi.org/10.15083/0000032501
2011K. Shimazaki,
H. Y. Kim, T. Chiba, and
K. Satake
Geological evidence of recurrent great Kanto earthquakes at the Miura Peninsula, JapanJOURNAL OF GEOPHYSICAL RESEARCH三浦半島小網代の津波堆積物調査から、1923年関東地震以前にも、1703年、および1293年に津波が起きたことを示唆した。https://doi.org/10.1029/2011JB008639
2016Sunhe Yun, Kazuki Koketsu
and Reiji Kobayashi
Source Process of the 1923 Kanto Earthquake Considering Subduction Interface Geometry and Amplification Effects Caused by the Large‐Scale and 3D Complex Sedimentary BasinBulletin of the Seismological Society of America曲面の断層面と3次元速度構造モデルを用いて、1923年関東地震の震源モデルのためのジョイントインバージョンを再び行った。https://doi.org/10.1785/0120150371

金曜日セミナー(2023年4月14日)小寺哲夫(東工大)

題目:半導体量子コンピュータの研究動向と展望

要旨:

量子コンピュータは、量子力学の原理に基づく超高速次世代コンピュータとして期待されている。通常のコンピュータが「0」もしくは「1」のいずれか(ビット)を情報処理に用いるのに対し、量子コンピュータでは、「0と1の重ね合わせ状態」である量子ビットを計算に使用する。大規模に集積した量子ビットを操作することで、超並列的な高速計算が可能となることが知られており、その応用探索も進んでいる。

集積量子ビットを実現するための研究は、様々な物理系で精力的に行われている。超伝導体を用いる方式が進んでおり、超伝導体の国産量子コンピュータの稼働が話題となったばかりである。半導体中のスピンを用いる方式も、将来の高性能な量子コンピュータの有望な方式の1つとして期待されている。半導体技術による素子の集積化が可能であり、また情報の保持時間に相当するコヒーレンス時間が長いという利点がある。我々も、量子コンピュータの基盤独自のシリコン量子構造を開発し、スピンの閉じ込めなどを実現してきた [1, 2]。また、高精度なスピンの回転操作などを東大・理研グループと連携して実現してきた [3-5]。

本講演では、量子コンピュータに関する背景とシリコンスピン量子ビットの研究動向及び展望について述べる。可能であれば、地球科学分野に対しての応用可能性も議論したい。

 

[1] G. Yamahata, TK, et al. Phys. Rev. B 86, 115322 (2012).

[2] R. Mizokuchi, TK, et al., Appl. Phys. Lett. 114, 073104 (2019).

[3] K. Takeda, TK, et al., Sci. Adv. 2, 8, e1600694 (2016).

[4] J. Yoneda, TK, et al., Nat. Nanotechnol., 13, 102 (2018).

[5] M. Tadokoro, TK, et al., Sci. Rep. 11, 19406 (2021).

 

大正関東地震100年記念グッズ:解説

【1923関東地震波形ハンカチ】
ユーイングの円盤記録式地震計で録れた大正関東地震の波形を、東北コットンが使用されているハンカチにあしらったものです。

元の記録は普段保管庫に所蔵され保存のためめったにお見せ出来ないので、ハンカチにしお手に取っていただけるようにいたしました。

この地震計は、レコードのように回転する円盤に地面の揺れを画く仕組みです。詳しくは下記リンクをご覧ください。

ユーイングの円盤記録式地震計(復元模型)
大正関東地震波形のトレース原画

【1923関東地震波形缶パン】
今村式2倍強震計で録れた記録をあしらった備蓄用食パンの缶詰めです。

今村式2倍強震計は、ドラム缶にアート紙を巻きつけ、石油ランプから出る煤をまんべんなく付着させた記録媒体を使用している機械式地震計です。同じ形状の缶詰めをお手に取っていただきながら、ドラムが自転し、地震の揺れを刻みつける様をイメージしていただければと思います。
中身は3年間保存がきく缶パンなので、ぜひ防災バッグに加えていただき、備蓄食として備えてください。

今村式2倍強震計
大正関東地震の波形記録
UTCCは赤門の隣にあります。

大正関東地震関連行事のお知らせ

大正関東地震100年イベント:関東大震災を描く・書く【2024年3月2日(土)】

場所:東京大学地震研究所 セミナー室+オンライン
詳細・申し込み:https://kanto1923.peatix.com/view

大正関東地震100年イベント:東京大学と関東大震災【2023年7月23日(日)・30日(日)】《終了》

他機関による大正関東地震関連展示(地震研究所が資料等の貸し出しをしているもの)

◆千葉県立中央博物館:関東大震災から100年 —災害の記憶を未来に伝える—

http://www2.chiba-muse.or.jp/www/NATURAL/contents/1688600282989/index.html
・弊所所蔵の今村式2倍強震計で録れた記録の画像を提供。

【会 期】
    令和5年8月1日(火)~9月23日(土・祝)
    休館日:毎週月曜日(8月7日、14日、9月18日を除く)、9月19日(火)

日本海盆の海洋プレート内部に見つかった予期せぬ不連続面

艾 三喜1,2, 悪原 岳2, 森重 学2, 吉澤 和範3, 篠原 雅尚2, 中東 和夫4

1.中国地質大学(武漢) 2. 東京大学地震研究 3. 北海道大学 4. 東京海洋大学

Layered Evolution of the Oceanic Lithosphere Beneath the Japan Basin, the Sea of Japan
Journal of Geophysical Research: Solid Earth 
https://doi.org/10.1029/2023EO230057

 日本海の北部に位置する日本海盆は、およそ2000万年前に日本列島がユーラシア大陸から分かれる過程で誕生しました。その詳細な形成史を明らかにするために、浅部の地殻構造や地磁気など、様々なデータに基づいた研究が行われています。本研究では、2017年から2019年にかけて日本海盆に設置された広帯域海底地震計のデータを用いて、日本海盆下の地震波速度構造を、現代的な統計解析(ベイズ解析)によって求めました。

 推定された速度構造は、海底に積もった堆積層、地殻・硬いマントルからできている海洋プレート、柔らかく流動するマントルといった、よく知られている特徴でおおむね説明がつくものでした(図1)。一方で、海洋プレート内部に予期せぬ不連続面も見つかりました。詳細に調べると、不連続面より浅い部分では、地震波が伝わる速度が方向によって異なる(強い異方性をもつ)こと、反対に深い部分では異方性が弱くなっていることが明らかとなりました。


 海洋プレートは、海嶺で生み出されたマグマが柔らかいマントルの上を流されながら、浅い部分から順番に冷えて固まることで誕生します(図2の左側)。このとき、プレートの動く向きに沿った異方性が海洋プレート内部に作られます。日本海盆では、およそ2000万年前に海洋プレートの形成が始まりましたが、約1500万年前にその活動が急に止まったことが知られています。この急激な変動によってマントル内の流れが乱され、その後に冷え固まった海洋プレートの深部では、異方性が失われたと考えられます(図2の中央~右側)。

 本研究はJournal of Geophysical Research: Solid Earth誌のエディターハイライト論文として選出されました(https://doi.org/10.1029/2023EO230057)。

大正関東地震の波形記録

地震研究所には大正関東地震の記録が多く保管されており、そのうち代表的なものを先に2点紹介します。それぞれ違う地震計で録れた記録ですが、いずれも東京都の本郷に設置されていたものです。

今村式2倍強震計で録れた記録

 この記録は,1923年9月1日に発生した関東地震の際に,東京帝国大学地震学教室(東京,本郷)に置かれていた今村式2倍強震計によって得られたものです.今村明恒博士の報告(震災予防調査会報告第百号甲)には,P波の初動は11時58分44秒に観測したと記されています.ついでS波が来るとすぐに南北動成分(一番上の波形.記録紙の上側が南方向)と上下動成分(一番下の波形.記録紙の上側が下方向)の描針は外れ,東西動成分(真ん中の波形.記録紙の上側が東方向)だけが記録を続けました.それも揺れが大きかったために,振り子が南北動成分のフレームに当たってしまったようで,正確な最大振幅はとらえていません.上下動成分には,1分間ごとにマークが入っており(タイムマーク),このときは1分間4cmの速さで記録紙を巻いたドラムが回転していました.
 おそらく記録紙に書かれている赤字は今村ら当時の人たちが解析や研究のために記載したもので,白字はマグニチュードの記載があることから後世の研究者が記載したものと思われます(注:マグニチュードという指標ができたのは関東地震より後で,関東地震のマグニチュードが7.9と言われるようになったのは1951年以降です).
 国立科学博物館(東京,上野)に展示されている今村式2倍強震計が,この記録を取ったと言われています.

     (地震火山情報センター 外来研究員 室谷 智子)
今村式2倍強震計
今村式2倍強震計

ユーイングの円盤型記録式地震計で録れた記録

 円盤が回転し,煤をつけた記録紙に地震動が記録される.
 Beginningが記録開始で,SW-NW, SE-NWおよびU-Dの3成分が記録されている. 1回転は約2分,最大振幅はSW-NE成分で15cm,SE-NW成分で40cm程度と推定されている.

        (地震火山情報センター 鶴岡 弘 准教授)
地震研究所所蔵のユーイングの円盤型記録式地震計(復元模型)
波形記録のトレース


今村式2倍強震計、ユーイング円盤記録式地震計の両方とも機械式地震計で、当時主流であった「煤書き記録方式」で録られているものです。

2号館の地下に残っている煤付け作業部屋で、今では見ることの少ない記録紙の煤付けの全工程を技術部総合観測室の渡邉技術職員が再現している動画ですす。

【煤書き式記録について】
 ドラムに巻き付けた「アート紙」に、石油ランプから出る「煤(すす)」をまんべんなく付着させることで記録紙を準備する。そのドラムを地震計に組み付けて回転させ、重りと繋がっている細い金属製の針先で記録紙を引っ掻くことで地面の揺れが記録される。記録終了後は紙を外し、「ニス」の中に通して煤を固定する。煤はやや薄目に一様に付けるのがよく、煤付けやニス掛けには熟練を要する。
 煤書き記録の特長は、記録線を数十ミクロンと非常に細くできることである。また煤は炭素であるから耐久性が良い。針先の固体摩擦も比較的小さく、振り子に対する反作用も小さいが、その影響を一層小さくする目的で、重りの非常に大きな(例えば 1 トン)地震計も作られた。
(東京大学地震研究所地震計博物館、2013年、p2「地震計発展の流れ」より)

地震研究所が所蔵するその他の大正関東地震波形記録

上記で紹介した代表的な2点に限らず、地震研究所で保管されている大正関東地震の波形記録は他にもあります。下記にそれらをご紹介します。

今村式1倍強震計

東京帝国大学地震学教室(東京,本郷)に置かれていた今村式1倍強震計(倍率1倍)によって得られたものです.白い矢印が,本震の各成分のP波を示しています.今村式2倍強震計で得られた波形は振り切れていましたが,1倍でも振り切れていたことが分かります.余震もいくつか記録されています.論文にこの地震計の特性は書かれていますが,写真や詳細は残っておりません.

普通地震計(強震計)

東京帝国大学地震学教室(東京,本郷)に置かれていた水平動2倍,上下動3倍の倍率の普通地震計による記録です.「a」とあるところから記録が始まっています.地震が起きてから地震計が起動するため,P波初動は記録されません.記象紙の一番下にタイムマークらしきものがありますが,地震の影響か間隔は均一ではありません.

普通地震計

東京帝国大学地震学教室(東京,本郷)に置かれていた水平動5倍,上下動30倍の倍率の普通地震計による記録です.記象紙の左に縦線があるところから記録が始まっています.地震が起きてから地震計が起動するため,P波初動は記録されません.記象紙の一番上にタイムマークがありますが,地震の影響か途中から間隔は均一ではありません.

大森式地動計(教室一号)

東京帝国大学地震学教室(東京,本郷)に置かれていた大森式地動計による東西成分(倍率30倍,周期約40秒)によって得られたものです.記象紙の下部に本震の波形が書かれています.小さい赤い矢印が示しているところが,P波の初動です.1分半ほどで波形は振り切れています.

大森式地動計(教室三号)

東京帝国大学地震学教室(東京,本郷)に置かれていた大森式地動計による南北成分(倍率10倍,周期約30秒)によって得られたものです.記象紙の上側が南,下側が北方向になります.左下部の赤と白の矢印がP波の初動ですが,北方向に波形が振れてすぐに振り切れています.

大森式地動計(教室二号A)

東京帝国大学地震学教室(東京,本郷)に置かれていた大森式地動計による東西成分(倍率1.5倍,周期30秒)によって得られたものです.記象紙の左下部から記録がスタートしており,赤枠部分が本震の記録です.地震動の衝撃のためか,P波の初動部分が突然立ち上がっていて,すぐに振り切れています.

大森式地動計(教室二号B)

東京帝国大学地震学教室(東京,本郷)に置かれていた大森式地動計による南北成分(倍率1.5倍,周期26.2秒)によって得られたものです.記象紙の上側が南,下側が北方向で,左下部から記録がスタートしています.P波の初動(白い矢印)は北方向に伝わり,すぐに振り切れてしまいました.また,地震動の影響か,まっすぐな線ではなく,うねりながら記録されていることが分かります.

簡単微動計

東京帝国大学地震学教室(東京,本郷)に置かれていた簡単微動計(水平動)によって得られたものです.記象紙の上側に南北成分,下側が東西成分が書かれており,白い矢印の部分がP波の初動です.この地震計の倍率は100倍のため,記録はずっと振り切れています.断続的ではありますが,南北成分は記録を続けていたようです.

上下動地震計

東京帝国大学耐震家屋(東京,本郷)に置かれていたグレイ・ユーイング型上下動地動計(倍率10倍)の記録です.地震の前から安定して動いていなかったようで,P波の初動は良く分かりません.

大森式地動計(耐震家屋一号)

東京帝国大学耐震家屋(東京,本郷)に置かれていた大森式地動計による東西成分(倍率10倍,周期約30秒)の記録です.白い矢印が示しているところが,P波の初動です.他の記録とは,弧の書き方が逆になっています.これは,記象紙を巻いているドラムが,他の地震計とは逆回転をしているからです.

大森式地動計(耐震家屋甲号)

東京帝国大学耐震家屋(東京,本郷)に置かれていた大森式地動計による東西成分(倍率15倍,周期約60秒)の記録です.白い矢印が示しているところが,P波の初動です.初動は東方向に動いていることが,はっきりと分かりますが,すぐに振り切れてしまいました.

大森式地動計(耐震家屋乙号)

東京帝国大学耐震家屋(東京,本郷)に置かれていた大森式地動計による南北成分(倍率20倍,周期約50秒)の記録です.白と赤の矢印が示しているところが,P波の初動です.北方向に大きく動き,すぐに振り切れていますが,針もしくはドラムが移動してしまったのか,記録する位置が途中でかなり移動しています.その後はまっすぐな線しか書かれていません.余震がたくさんあったので,針がどこかに固定されたままになってしまったのかもしれません.

大森式微動計

東京帝国大学耐震家屋(東京,本郷)に置かれていた大森式微動計による東西成分(倍率120倍)の記録です.白い矢印が示しているところが,P波の初動です.記象紙の上下が東西どちらを表しているか分かりませんが,他の地震計の東西方向の記録(初動は東方向)から,記象紙の下側が東方向ということが分かります.また,初動の近くのタイムマークの部分に11:46と赤字で書いてあるのですが,地震の発生は11:58なので,当時の時計の精度は良くなかったことも分かります.

大森式微動計

東京帝国大学耐震家屋(東京,本郷)に置かれていた大森式微動計による南北成分(倍率120倍)の記録です.白い矢印が示しているところが,P波の初動で,北方向に動いたことが分かります.倍率120倍のため,本震の前からずっと小さい揺れを観測しているのが分かります.風や何かしらによる地面の揺れがあったのでしょうか?

田中舘式地震計

東京帝国大学地震学教室(東京,本郷)に置かれていた田中舘式地震計による倍率1倍の記録です.3成分記録できる地震計ですが,真ん中の成分(水平動と思われますが成分不明)は記録できていないようです.記象紙の一番上は水平動,タイムマークの上の記録は上下動と思われます.詳細は不明ですが,本震がきちんと記録できている訳ではないようです.

Pantagraph

東京帝国大学耐震家屋(東京,本郷)に置かれていたPantagraphによる記録です.東西南北の地面の軌跡を20倍に拡大しています.大きく見て,北東方向に揺れていることが分かります.機器の詳細は不明です.

大森式微動計(筑波山)

東京帝国大学が筑波山に置いていた大森式微動計による南北成分(倍率120倍)の記録です.記象紙中央より左よりの白い矢印が示しているところが,P波の初動です.残念ながら,記録は薄くて良く読めません.

普通地震計(浅間山)

東京帝国大学が浅間山に置いていた水平動5倍,上下動10倍の倍率の普通地震計による記録です.揺れが起きてから動き始めるため,地震の初動の記録はされません.ゆったりとした長周期のゆれを記録しているように見えます.成分は書かれていませんが,余震の記録から,3段記録があるうちの一番上が上下動成分ということは分かりました.

第1023回地震研究所談話会開催のお知らせ

下記のとおり地震研究所談話会を開催いたします。

ご登録いただいたアドレスへ、開催当日午前中にURL・PWDをお送りいたします。

なお、お知らせするzoomURLの二次配布はご遠慮ください。また、著作権の問題が

ありますので、配信される映像・音声の録画、録音を固く禁じます。

                記

    日  時: 令和5年3月17日(金) 午後1時30分~ 

    開催方法: インターネット WEB会議

1. 13:30-13:45

演題:情報科学-固体地球科学融合研究プロジェクト部 活動報告 【所長裁量経費成果報告】

著者:○長尾 大道、情報科学-固体地球科学融合研究プロジェクト部メンバー

2. 13:45-14:00

演題:地震波形の全体・局所領域に対する複数の深層学習モデルを統合した地震検出手法

著者:○徳田智磯・長尾大道

要旨:既存の検出手法(GPD)を発展させ、地震波形全体の情報に加え、波形の局所情報をモデルに取り入れることにより、より精度よく地震を検出できる手法を開発した。

3. 14:00-14:15

演題:多方向ミュオグラフィによる伊豆大室山火砕丘の三次元密度トモグラフィ

著者:○宮本成悟、長原翔伍(神戸大学)、森島邦博・中野敏行(名古屋大学)、

小山真人(静岡大学)、鈴木雄介(STORY)、市川雅一

要旨:火砕丘は火山の基本的な形態の一つであり、その詳細な内部構造や形成時のマグマの動きを明らかにすることは、噴火の性質を理解する上でも、火山災害の軽減のためにも重要である。我々は、大室山火砕丘の3次元密度構造を明らかにするために、多方向ミュオグラフィ調査を実施した。火山の周辺11ヶ所に多方向ミュオグラフィに最適化された原子核乾板検出器を設置しました。原子核乾板に記録されたミューオンの飛跡は、高速自動読み出し装置で読み取られた。得られた10方向のミュオグラフィ画像に線形インバージョンを用いることで3次元密度構造を推定した。この観測結果と先行研究による地形・地質学的な制約から、見つかった高密度領域はそれぞれ火砕丘の中央火道、そしてそこから伸びる3方向の放射状ダイクと推察されます。西方向に伸びるダイクは西麓の小さな溶岩流を作り、南方向に伸びるダイクは小さな側面噴火を起こし、小火口を形成したと推察した。Nagahara, Miyamoto, Morishima, Nakano, Koyama, Suzuki, “Three-dimensional density tomography determined from multi-directional muography of the Omuroyama scoria cone, Higashi–Izu monogenetic volcano field, Japan.” Bull Volcanol 84, 94 (2022). https://doi.org/10.1007/s00445-022-01596-y

○発表者

※時間は質問時間を含みます。

※既に継続参加をお申し出いただいている方は、当日zoomURLを自動送信いたします。

※談話会のお知らせが不要な方は下記までご連絡ください。

〒113-0032 東京都文京区弥生1-1-1 

東京大学地震研究所 共同利用担当

E-mail:k-kyodoriyo(at)eri.u-tokyo.ac.jp ※次回の談話会は令和5年4月21日(金) 午後1時30分~です。

Friday Seminar (10 March 2023) Chastity Aiken (IFREMER)

Title: Mayotte’s submarine volcano: seismicity, tomography, and the future seafloor observatory

 

Abstract:

Mayotte’s submarine volcano system was first identified in 2018 when several earthquakes and very-long-period earthquakes were seen on global seismic networks. The volcano’s presence was later confirmed in February 2019 in a sea campaign called MAYOBS, during which a new volcano edifice was discovered ~40 km offshore Mayotte. There was only 2 land stations on Mayotte at the time of the first MAYOBS campaign. We understood so little of Mayotte’s submarine volcano and the crisis that many more MAYOBS sea campaigns were conducted over a period of 4 years. In total, 23 sea campaigns were conducted to deploy/recover ocean-bottom seismometers – an unprecedented number of sea campaigns for an unprecedented submarine volcano eruption. In this talk, I will present a brief summary of seismological studies conducted by myself and the REVOSIMA (Mayotte Seismic and Volcanic Monitoring Network) seismology group: how we detected more 30k events and relocated more than 5,000 of them, the first tomographic image we have of the volcano system, and the future seafloor observatory that will be installed to monitor Mayotte’s submarine volcano in the future.