共同利用・共同研究による成果2024

共同利用・共同研究による成果

2024年度の共同利用・共同研究拠点実施報告書から、地震研究所教員が参画した研究成果を中心に抜粋して紹介します。

Slow rupture in a fluid-rich fault zone initiated the 2024 Mw 7.5 Noto earthquake

Ma, Z. et al. Science 385, 866–871 (2024). https://doi.org/10.1126/science.ado5143

研究成果 2024年能登半島地震は流体を豊富に含む断層でのゆっくりすべりから始まった ▶

2024年、能登半島でモーメントマグニチュード7.5の地震が発生し、地域社会に甚大な被害をもたらしました。宇宙測地観測と地震観測から、この地震が半島を変形させ、西岸で最大5mの隆起が生じたこと、海域の断層では浅部すべりが10mを超え、最大の応力降下量が10MPaを上回ったことを示しました。破壊は震源近傍で15〜20秒続くゆっくりとしたすべりから始まり、その領域では下部地殻からの流体供給により2020年以降に群発地震活動が活発化していました。このゆっくりとした破壊では、短周期の強い地震波が出ていました。これらの観測は、流体に富む断層帯の中で断層の性質が大きく不均質であることを示しています。それが、これまで知られていなかった地震時のすべり方を生んだと考えられます。

2024年能登半島地震について、断層トレースに沿った距離の時間変化を示す図。

図1 断層トレースに沿った距離の時間変化[地震研青木准教授より提供]

Minna de Honkoku: Citizen-Participation Transcription Project for Japanese Historical Documents

Kano, Y. & Hashimoto, Y. Annu Rev Earth Planet Sci 53, 101–118 (2025). https://doi.org/10.1146/annurev-earth-040523-120834

受賞 みんなで翻刻がデジタルアーカイブジャパン・アワード2024を受賞 ▶

「みんなで翻刻」は、東京大学地震研究所図書室が所蔵する地震関係の歴史資料を翻刻するオンライン市民科学プロジェクトとして始まりました。日本の歴史資料のほとんどは、1900年頃まで使われていたくずし字で書かれています。現代の日本語とは書き方が異なるため、地震研究のデータとして使うには翻刻が欠かせません。作業画面には資料画像のビューアと縦書きのエディタが並び、翻刻した文字数のランキングが意欲を保ちます。2024年10月時点で9,700人以上が登録し、翻刻された文字数は約4,100万字に達しました。生成されたテキストは地震学をはじめ多様な研究分野で使われるほか、市民の防災意識を高めることにも役立ちます。くずし字と翻刻文が対になったデータは、くずし字認識AIの学習データとしても使われ始めています。

くずし字で書かれた歴史資料の画像。

図2 くずし字で書かれた歴史資料[Kano and Hashimoto (2025)]

Three-Dimensional Electrical Resistivity Structure Beneath a Strain Concentration Area in the Back-Arc Side of the Northeastern Japan Arc

Usui, Y. et al. J Geophys Res Solid Earth 129, e2023JB028522 (2024). https://doi.org/10.1029/2023JB028522

研究成果 東北地方背弧のひずみ集中域の地下電気比抵抗構造の推定 ▶

日本列島では内陸地震がしばしば大きな被害をもたらしており、大きな内陸地震の多くは地質・測地観測で見いだされたひずみ集中帯で起きています。地殻の弱い部分に敏感な電気比抵抗に着目し、東北日本弧の背弧側のひずみ集中域で広帯域の地磁気地電流(MT)観測を行い、3次元の比抵抗構造を明らかにしました。庄内平野・新庄盆地にあたる浅部の低比抵抗域は弾性率の低い領域、奥羽脊梁山脈の下の深さ20km以深にある低比抵抗域は粘性の低い領域として働き、性質の異なる2つのひずみ集中の仕組みが併存していることが示されました。これらは力学的に弱く、付近の断層に応力が加わり、大きな内陸地震が発生していると考えられます。大地震の震央が下部地殻の低比抵抗域の縁と対応することから、下部地殻の流体の関与も示唆されます。また、下部地殻から第四紀火山まで延びる鉛直の低比抵抗域も見いだされ、これらの火山の下に地殻を貫くマグマ供給系があることを示す可能性があります。

東北日本弧の背弧側で推定された電気比抵抗構造の鉛直断面図。

図3 推定された電気比抵抗構造の鉛直断面図[Usui et al. (2024)]

Successive Tsunamigenic Events Near Sofu Seamount Inferred From High-Frequency Teleseismic P and Regional T Waves

Takemura, S., Kubota, T. & Sandanbata, O. J Geophys Res Solid Earth 129, e2024JB029746 (2024). https://doi.org/10.1029/2024JB029746

受賞 武村俊介助教・三反畑修助教らの論文がAGU Editor’s Highlightを受賞 ▶

2023年10月9日早朝(日本時間)、日本の沿岸から約600km離れた孀婦海山の近くで、予期しない大きな津波が観測されました。震央までの距離が遠く地震が連続したため、従来の解析では一連の地震活動を捉えられません。そこで遠地P波と近地T波の短周期成分を調べたところ、両者の包絡波形がよく似ており、T波の包絡も震源の性質を反映していることが分かりました。近地の記録は実体波が弱く、継続時間39〜68秒の大振幅のT波が特徴でした。実際の地形を取り入れた数値シミュレーションによると、T波の特徴は震源の深さに強く依存し、継続時間60秒未満の強いT波は海底下0.5km以浅(深さ3km以浅)に震源がある場合にのみ現れます。短周期の地震波は海底直下の浅い場所から出ていた可能性があり、地震の波源と津波の波源が一致するなら、浅い震源が津波を起こす隆起をもたらしたとみられます。さらに、海底の最大隆起量とT波の振幅をスケーリングすることにより、海底火山からのT波の振幅にもとづく津波予測の可能性を示しました。

シミュレーションによるT波の深さ変化を示す図。

図4 シミュレーションによるT波の深さ変化。観測波形と整合するのは3km(海底下0.5km)の震源。[Takemura et al. (2024)]

A Seismic Precursor 15 min Before the Giant Eruption of Hunga Tonga-Hunga Ha’apai Volcano on 15 January 2022

Horiuchi, T., Ichihara, M., Nishida, K. & Kaneko, T. Geophys Res Lett 51, e2024GL111144 (2024). https://doi.org/10.1029/2024GL111144

プレスリリース American Geophysical Union「New trigger proposed for record-smashing 2022 Tonga eruption」 ▶

2022年1月15日のUTC 4時すぎに始まったフンガ・トンガ-フンガ・ハアパイ火山の噴火については、未確認ながら前兆とみられる現象が指摘されていました。噴火中に稼働していた最寄りの観測点であるフィジーとフツナ(いずれも750km以上離れています)の地震計記録を解析し、レイリー波を抽出して、その強さと到来方向を推定しました。この結果、噴火開始の約15分前に、この火山の方向から到来するレイリー波が見つかりました。2観測点での到達時刻の差は、噴火中に火山の直下で起きたM5.8の地震のものと整合します。他の地震波形や衛星画像とあわせ、このレイリー波は、地表に明らかな活動を伴わないものの、噴火の前兆としてもっとも重要なものであると結論づけました。これらと既往研究の結果をもとに、今回のカルデラ形成噴火の始まりについて、シナリオを提案しています。

0.04〜0.08Hzにおける上下動速度成分のRMSと、上下動と水平動の相互相関係数を示す図。

図5 0.04〜0.08Hzにおける上下動速度成分のRMSと、上下動と水平動の相互相関係数[Horiuchi et al. (2024)]

※ 掲載しているのは成果の一部です。共同利用・共同研究による研究発表論文の集計は、拠点としての実績をご覧ください。

※ 図の出典は各キャプションに記載しています。利用条件は各論文のライセンスに従います。

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