3.5.8 地殻ダイナミクスプロジェクト:超稠密地震観測による内陸地震発生場の特徴

 2000年鳥取県西部地震の震源域における稠密地震観測網(約1000点)で取得した波形データを解析することで,高い精度で震源分布と地下の地震波(P波)速度構造の推定(空間分解能0.5km)に成功した(Kato et al., 2021).震源分布から推定された地下の断層形状はとても複雑で,北北西-南南東走向の断層面だけでなく西南西―東北東の共役関係にある断層面も複数分布することが,様々なスケールにおいて明らかになった.また,断層面の深部形状は,震源域北西部では北東側へ傾斜するのに対し,震源域南東部では南西側へ傾斜しており,ねじれていることも分かった.すなわち,大地震は平らな1つの断層面で起きるのではなく,共役断層も含めた複数の断層面がずれることで発生していることを意味する.

 P波の速度構造の特徴を見てみると,震源域北西部に顕著な低速度域が存在し,その境界は西南西―東北東走向の断層面に一致する.また,2000年鳥取県西部地震の発生時に大きくずれた領域は,全体的にP波速度が速い性質を示す.低速度域に存在する断層の長さ200 mの地震活動の集まり(クラスター)を調べてみると,厚さ10 m以下のとても狭い領域に集中しており,4つの板状構造(長さ~30 m)に分かれていた.さらに,この地震活動は,約30 m/日の速さで断層面に沿って深い側へと移動していたことも判明した.この移動速度から判断すると,地下で流体が移動することで地震活動が誘発された可能性が考えられる.このように,断層構造の複雑性と流体移動が地震活動のパターンに影響を与えていることが示された.