3.12.3 地震データ解析とその公開

本センターではWWWサーバを立ち上げ,地震・火山等の情報提供を行ってきた.アウトリーチ室(現広報アウトリーチ室)が設置されてからは,本センターはそれをサポートしている.

(1)地震カタログ解析システム等

研究者向け情報としては,日本や世界の地震カタログをデータベース化し,地震カタログ検索・解析システムTSEISを開発し,地震活動解析システムとして公開している.

利用可能な地震カタログは,国立大学観測網地震カタログ(JUNEC) ,防災科学技術研究所地震カタログ,気象庁一元化地震カタログ,グローバルCMT地震カタログ,ISC 地震カタログなどで,多くの研究者に活用されている.また,我が国の地震や世界の地震について気象庁やNEIC などが速報として提供したものを,国内の研究者にメール配信している.気象庁の一元化震源については,そのミラーを行う機器を更新して運用を継続し,大学等の研究者に提供している.

(2)長周期波動場のリアルタイムモニタリングGRiD MT

全国地震観測データ流通ネットワークJDXnet で提供されている広帯域地震波形データを利用して,震源速報等の地震情報を必要とせずに,地震の発生・発震機構(MT 解)・大きさ(モーメントマグニチュード) をリアルタイムに決定する新しい地震解析システムGRiD MTを開発して,その解析結果をWeb やメールでリアルタイムに情報発信している.現在までに得られた,解析結果についてはGRiD MTウェブサイトで公開している.巨大地震や津波ポテンシャルをW-phaseにより評価するイベント駆動型のシステムを開発し,解析結果を世界中の地震のサイトおよび日本の地震のサイトにて公開している.2020年においては,世界の地震については158個,日本の地震については98個のモーメントテンソル解(VRが80以上)を決定した.

(3)古い地震記象の利活用

地震研究所には各種地震計記録(煤書き) が推定で約30 万枚ある.この地震記録を整理し利用しやすい環境を作るため,本センターが中心となって所内に「古地震記象委員会」が設置され,1) マイクロフィルム化やPDF等の電子化,2) 検索データベースの作成,3) 原記録の保存管理などが行われている.煤書き記録については,約22 万枚のマイクロフィルム記録のリスト,WEB 検索システム(日本語・英語)を作成し,国内外のユーザーの利用に供している.津波波形記録については,マイクロフィルムと,スキャナーでスキャンしたデジタルデータが津波波形データベースシステムで公開されている.

このほかに,20 世紀の巨大地震の世界各地での地震記象を入手しており,それをスキャンし,画像データとして保存し公開すべく作業を進めている.今年度は,1923年関東地震や1946年南海地震を初めとする国内主要地震の世界各地の地震波形記録や,1940年代の地震研究所管轄の観測点のすす書き記録を電子化した.WWSSN フィルムの長期保存のためのファイリングや,劣化が始まっている筑波地震観測所HES記録の修復作業も行っている.また,濃尾地震や鳥取地震等の過去の大地震のアンケート調査や報告書などの資料のPDF化を行い,公開すべく準備を行っている.2020年においては,和歌山観測所飯南観測点および七川観測点の連続記録の画像化を進めた.