3.12.6 巨大地震・津波の研究

津波データや測地データ,地震データを用いて,世界の巨大地震の断層運動の詳細や津波の発生過程について調査している.2005年インドネシア・二アス地震(Mw 8.6),2018年アラスカ沖地震(Mw 7.9)などについて,主に津波データから断層面上のすべり分布の推定を行った.

北海道・東北地方を中心とする日本海東縁部で津波の発生が予測される断層モデルを抽出し,様々なパラメータに基づいたシナリオ型津波シミュレーションを行った.また,日本海における大規模地震に関する調査検討会による60断層に基づき,北海道~九州沿岸における確率論的な津波高の予測を行った.想定される津波の高さは東北地方~北陸地方で高く西南日本では低いこと,今後100年間,500年間,1000年間に想定される最大津波高さは3.7m, 7.7 m, 11.5 mであること,西南日本における津波高には遠方の活断層による寄与が大きいことがわかった.

沖合で記録された津波観測波形のデータ同化による津波予測手法について研究を行っている.2009年にニュージーランド沖で発生した地震,2015年鳥島近海地震や2016年福島県沖で発生した地震について海底水圧計を用いたデータ同化の実証を行った.また,経験的なモード分解法を適用して,沖合における水位観測データから津波を自動的に検出できる手法を開発している.

チリ沿岸や地中海における津波観測点の最適配置の推定をおこなった.また,予め計算した結果のデータベースと深層学習を用いて,津波の浸水予測を効率的に行う手法を考案し,東北地方太平洋岸(陸前高田と大槌)に適用した.

京都大学防災研究所との拠点間連携研究「不均質な断層すべり分布を考慮した津波の確率論的予測と不確実性の評価」を実施した.2020年度は 9月24日にオンラインで両グループの合同セミナーを行った.東大関係者,京大防災研関係者それぞれ4名ずつ,合計8名が研究内容を発表し,情報交換を行った.